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16年越しの邂逅。(前編)

「P.T.A.検定試験」
昨年のいつ頃だったか、このワードを目にしたときに俄に気が張り詰めたことを今でも覚えている。
決して、学校教師と保護者の団体に関する知識を競う試験ではなく、Perfumeのファンクラブ会員「P.T.A.」のメンバーだけが受験できる、Perfumeを題材にした問題が出る検定試験。
上位成績者にはプレミアムライブへとご招待という、なんとも嬉しすぎる特典つきだ。

実は、こうした試みは初めてではなく、遡ること9年ほど前の2015年にも一度あった。
当時は結成15周年、メジャーデビュー10周年を記念したライブイベント「PPPPPPPPPP(通称:P10)」があり、その一環で「P.T.A検定試験」も実施。成績上位者が参加できるライブ「P.T.A.サミット」が開催された。
会場となったTSUTAYA O-WESTには、Perfumeのことを知り尽くした猛者たちが詰めかけ、文字通りすし詰めの様相を見せつつも熱気に包まれたのだという。

当時の自分はというと、『どうせ受からないだろう』と諦めの気持ちがあり、受験を見送っていた。
ただ、検定に合格して「P.T.A.サミット」に参加した知人の話もその当時聞いており、濃いファンにターゲットを絞ったセットリストや、観客の盛り上がり方を羨ましく感じた。

不合格でもいいから一度受けてみよう。
そう思い、9年越しに「P.T.A.検定試験」へとエントリーした。

結果は…なんとか合格!!
晴れて、プレミアムライブへの切符を掴むことができた(ここ素直に「チケットを掴んだ」って書けば良かったな)。
試験期間の詳細な話は割愛するが、久しぶりに読んだ「Fan Service [TV Bros.]」が面白かったことには触れておきたい。Perfumeの3人がTV Bros.で連載している「たちまち、語リンピックせん?」を1冊の本にまとめたもの。自分がPerfumeのファンになった2008~2009年頃、大学進学に伴い上京して、3人の活動をより追いやすくなった2011年頃の連載は、当時の3人だけでなく、自分の生活や空気感をも思い出させた。
2010年頃が空白なのは、大学受験の真っ只中でPerfumeの活動を追う余裕が無かったから。ただ、「Fan Service [TV Bros.]」のサイズ感が当時よく解いていた赤本に近く、そのことが当時を思い起こさせた。

プレミアムライブには、ちゃんとタイトルがついていた。

「Perfume P.T.A.発足 16周年へのカウントダウン 猛者だけのLIVE 〜リキッドルーム あの夜をもう一度 2024 〜」

…らしい。
会場は、タイトルにもあるように恵比寿LIQUIDROOM。高倍率の中、検定試験を勝ち上がった人たちを「猛者」と呼んでいるのもなんだか愛らしさを感じさせ、チームPerfumeならではの遊び心がうかがえた。
「あの夜」とは、2008年2月13日に同じくLIQUIDROOMで開催したライブ「P.T.A.発足前夜祭『パッと楽しく遊ぼうの会』」のことだという。

かつてP.T.A.発足前夜祭を行った会場にて、P.T.A.の周年イベントを行う。
その事実に、何かひとつの物語が完結するような感覚を覚えた。

自分が当選したのは、2月14日の公演。
この日は、街中を歩いているだけで良い心地のする日だった。つい先日まで厳しかった寒さもだいぶ和らいでいたように感じる。
山手線内回りにて恵比寿のひと駅前の渋谷で降りて、歩いて会場まで向かうことにした。とりあえず恵比寿駅を目指していたが、その道中で「LIQUIDROOM」の文字が仰々しく輝く看板に遭遇した。
ここが、恵比寿LIQUIDROOM。場所を知らずに歩いていたので、思いがけぬタイミングでの出逢いだった。名前だけは知っており、一度は行ってみたいと思いながらも、なかなか訪れる機会が無かったライブハウス。まさか、こうして一番好きなアーティストの活動を追う中で来られるとは思っていなかった。
入口を通ると、早速2階のロビー行きの階段が。2階のロビーには溢れんばかりの人たちが押し寄せていた。これが、猛者。老若男女さまざまな人の姿があったが、一貫しているのは『格好を見るだけでPerfumeへの気持ちがわかる』こと。過去のライブやイベントで発売してきた、様々な種類のTシャツやリストバンド、タオルに身を包んでいる。そのバリエーションの豊富さからも、Perfumeがこれまで積み上げてきた歴史の一端がうかがえた。きっと、2008年のライブではTシャツのバリエーションも今より少なかったに違いない。そんな中、他アーティストのTシャツを着て来てしまった自分がどこまでも、果てしなく、浮いていた。
入場待機列の近くで、スタッフさんが「整理番号○○から△△の人はこちらに並んでください」と誘導している。だが、誘導先のスペースは既に人で埋まっており、入れる隙間が無い。大勢の人が集まっているように感じられるが、ドームクラスの会場での動員数には圧倒的に及ばない。過去にドームクラスのライブツアーを成功におさめてきたPerfumeが、これからこのライブハウスに登場する画が余計に想像できなくなる。
開場時間になると、整理番号1番の人から呼び出し。整理番号は「P.T.A.検定試験」の成績順に割り振られているため、整理番号1番=本日の成績第1位の人、である。整理番号1番と読み上げられた途端、その健闘ぶりを讃えるかのように、拍手が場内に響きわたった。何か示し合わせたわけでもなく、自然に沸いた温かな拍手だった。
しばらく待つと自分の整理番号が呼ばれた。電子チケットを見せた直後に、ドリンクチケット代を払うためのレジが。600円を払い、受け取った缶バッヂを持ってドリンクカウンターに向かった。お酒も売られていたので飲んでもいいかなと迷ったが、ライブ中に飲みかけのカップのやり場に困ると思い、無難にペットボトルのミネラルウォーターを選択。ライブハウス特有のカルチャーも、Perfumeのライブで経験するとなんだか新鮮に思える。
フロア内に入る。ステージに近い前方は既にある程度埋まっており、今から行っても前の人で視界が遮られてまともにステージが見られない、かつ圧縮がかかって苦しくなると判断。場内を見渡してみると、後方に一段高いスペースがあるのを見つけた。おおよそ5人程度しか入れなさそうな手狭なスペースだったが、まだ2人しか陣取っていなかったのでそこに入ることにした。自分が一番推している、のっちが普段立っている『のっちサイド』だったことも決め手だった。
開演時間まで、あと1時間近くある。場内に流れている楽曲に結構好みのものが多かったので、Shazamで楽曲名を調べながら待った。そうこうしているうちにも客入れは進み、フロアの様相は時々刻々と変わっていく。そんな中でも、これから3人が出てくるであろうステージはなにひとつ顔色を変えず、ただ自分の眼前に存在していた。

アーティストを応援する中で、「夢」を抱くことがある。
今よりも大きな会場でライブをやってほしい、海外でもライブをやってほしい、好きな楽曲があるので一度観てみたい、一度会話してみたい…。
そんな、個人的な願望を「夢」と言い換えて、ステージに立つアーティストに託していく。そして、その夢が叶うことで、自分の人生も何かひとつ前進したような感覚を覚えていく。
自分がPerfumeに対して抱いている夢のひとつに、「自分がファンになった、2008年頃のライブを見てみたい」があった。当時は地元暮らしで、都内で行われることがほとんどだったライブにはどうしても行けなかった。ライブDVD越しに観る自分の好きな楽曲や、現地の雰囲気をとても羨ましく思った。
こんな夢はタイムマシンでもできない限り叶わないと思っていた。ただ、今回のライブタイトル「あの夜をもう一度」から、今回は2008年当時のライブを再現してくれる可能性を感じる。

もしかすると、今日自分の夢が叶うのではないか。
これまで見てきたどの会場よりもこじんまりとしているステージを見ていると、そんな想いが沸々とわいてきた。
16年越しにPerfumeがこの会場に帰ってきてライブをするのと同時に、自分が16年越しに抱いてきた夢も叶ってしまう気がした。

いったんここで切ります。
楽曲の感想を書いていきたいけど、ここからどう繋いでいこうか見失いかけているので。

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