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R-1グランプリ2024 感想。

去る3月9日に「R-1グランプリ2024」が開催されました。
決勝進出者の「ピン芸」を観た感想を、1人ずつ書いていきたいなと思います。

ファーストステージ

①真輝志【コント】僕の物語/458点

学園もののアニメでよくありがちな、『これは、野球部に入った僕が、~~~する物語である!』みたいな語りの内容がしょぼくて、「ほなええわ!」と主人公が次々キレ散らかしていくネタ。
学園ものという設定も馴染みがあって分かりやすく、『聞こえるはずのない語りが聞こえる』こともすんなりと受け入れられました。
少し展開が単調になりそうなところで、地味だけど可愛い女子生徒の華やかな物語が始まったり、語りの内容がバグるギミックもあったりして、ネタ時間の使い方も流石でした。個人的に一番好きだった語りは、軽音部の「7万のギターを買って2万で売る」です。

②ルシファー吉岡【コント】婚活パーティー/475点

婚活パーティーの自己紹介タイム。毎回、女性にルールを聞かれて説明するだけで持ち時間が終わることにやきもきする男性。
ルシファーさんの役がすごくハマっていました。ザコシさんが講評で述べていた、『キャラクター通りの役を演じているから笑いやすい』に大いに共感しました。
途中で、自分の名前の説明を端折りだしたり、隣の席の人にも説明し出したり、おかしくなっていくさまも面白い。あとは、時間切れのチャイムもアクセントになっていて、ネタの中にリズム感を生み出していたのも印象的でした。

③街裏ぴんく【漫談】石川啄木/471点

今回の決勝進出者の中で、唯一の漫談勢。
ただし、喋っている内容に登場するのが石川啄木や正岡子規といった歴史上の人物ばかりで、明らかに嘘だとわかる「嘘漫談」。
初めてネタを見たのですが、漫談ってしゃべくり漫才と同じく、実際に見聞きして思ったことを話しているんだなという前提で観るものと思っていたので、明らかに嘘とわかる話を聞くのがすごく新鮮で革新的でした。『立ち話をしている男』のコントだと思える瞬間もあり、不思議な感覚でした。
一番印象的だったのは、「キュリー夫人がビート板の聞き役をしていた」というくだり。ビート板との会話で聞き役なんて、実在する人の行動に当てはめても面白いですよね。しっかりとネタの基礎を固めたうえで、歴史上の人物を味付け的に登場させているように感じました。

④kento fukaya【フリップコント】マッチングアプリ/452点

マッチングアプリで見つける、ことごとく変わった男性に翻弄されていく女性のネタ。今風の設定で新しいなと感じました。
絶妙に気持ち悪い設定が次々と出てくるのが面白かったですね。「置き配を選択するが出迎える」とか、「人人(ひとんちゅ)」って人名とか、「Facebooker」って謎の造語とか。もっとたくさん観たくなりました。
そうしたバリエーションで魅せていくネタですが、功を奏していたなと感じたのが、最初からいきなり変な人ではなく「実際にいそうな男性」を出し、「嫌だよね~」とバッサリ斬っていたこと。あそこで共感して引き込まれた人、結構多かったのではないでしょうか。
あと…女装めっちゃ似合っていました。

⑤寺田寛明【フリップ漫談】/国語辞典コメント欄/455点

国語辞典に載っている言葉とその意味に対して、YouTubeと同じようにコメント欄があったらどうなるかを紹介していくフリップネタ。
寺田さんらしい、日本語の奥深さとネットカルチャーを融合したネタでした。「あんたんたるおもい」みたいに、ちょっと脱線するくだりもあって良かったです。
4月には絵本も出るとのことでしたが、本で読んでみても面白そうだなと思いました。「さまぁ~ずの悲しい俳句」みたいなネタ本、最近あまり読んでないけど懐かしいですね。

⑥サツマカワRPG【コント】ぼく、どうしたの?/457点

昨年の、ギャグをストーリー仕立てで繋いでいくネタとは打って変わって、今回はひとつのストーリーとして完成されているネタを披露。小藪さんも講評で述べていた通り、色んな引き出しのある方だと感じました。
『カツラをとる』というある種の禁じ手が目立ちますが、ネタの中身も凝っていたように思いました。序盤、怪しいおじさんの話かと思いきや、実はどこかの児童施設での防犯教室で…という裏切りがあり、ラストにももうひと展開あったりして。かつて2chであった「なぜか怖かったネタ」のスレッドを思い出しました。
あと…でか美ちゃんとのご結婚、おめでとうございます。

⑦吉住【コント】デモ活動/470点

今回の決勝進出者唯一の女性芸人。
結婚の挨拶で彼氏の家に来た彼女。ただ、片手にはメガホン、もう片手には「絶対に許さない」と書いた看板を持っており、ひと目で「普通じゃない人だ」と分かります。序盤でそう分からせておきつつも、会話の中で徐々に本性をあらわにしていく展開が流石でした。演技力も今大会の9組の中で抜きんでていたと思います。

⑧トンツカタンお抹茶【歌ネタ】かりんとう車/448点

ひたすら歌ネタ。かりんとうの会社が一発逆転を狙って造ったという「かりんとうの車」を運転しながら、ひたすら歌い続けるネタ。
冒頭のVTRでお抹茶さんが言っていた通り、まさに「白昼夢」と言うに相応しいネタ。ユーロビート調の曲がやけに耳に残りましたが…許可取ってなかったの、なかなか事情が難しいですね。

⑨どくさいスイッチ企画【コント】ツチノコ発見者の一生/458点

今回の決勝進出者唯一の、もとい、「R-1」史上初のアマチュアでの決勝進出。
コントですが特にセットも無く、その身ひとつでの勝負。ツチノコを発見した人の人生を、語りと動きだけで魅せるネタでした。
人生が思わぬ方向に飛んでいくさまを見て、この人発想力豊かなんだなぁと感心しました。自分ひとりの話で完結させずに、子供との繋がりも描いていたのも重厚でしたね。結果、アマチュアで4位まで食い込んだの凄すぎます!

ファーストステージを終え、ルシファー吉岡、街裏ぴんく、吉住の3人がファイナルステージに進出することに。

ファイナルステージ

①吉住【コント】鑑識の彼女/2票

鑑識として訪れた会社が実は彼氏の会社で…というコント。
「THE W」の最終決戦でも披露していた、銀行強盗のネタと近いノリを感じました。
事件現場という気の張りつめた場でイチャイチャし出す恋人同士の2人、というギャップが面白かったです。彼氏の浮気の証拠が出てきてから、一気に狂気溢れる演技に切り替わるのも吉住さんならでは。もっと長く観ていたいと思いました。

②街裏ぴんく【漫談】初期メンバー/3票

自分が実は「モーニング娘。」の初期メンバーだったという、これまたあり得ないだろと思える嘘設定。
それでも、序盤から繰り広げられるパワー溢れる喋りに思わず笑ってしまう箇所が多かったです。ファーストラウンドのネタと比べて『悦夫・越・嗚咽』先生といった、架空の人物や歌が多く登場していた点も見どころでした。

③ルシファー吉岡【コント】アパートの騒音/0票

隣の部屋の大学生の会話がうるさくて、クレームを言いにきたサラリーマン。友人を呼んで騒いでいる内容が再現できるほどに会話が聞こえているようだが、実は大学生たちが繰り広げるラブコメみたいな日々に興味を持っているようで…。という展開。
徐々に、クレームではなくて恋する大学生を励まし始めていたのも面白かったのですが、会話の再現パートで少しテンションが落ち着いてしまっていたのが勿体なかったかも…と思いました。

結果、審査員から3票を得た街裏ぴんくさんが優勝。
優勝が決まった直後の、男泣きからの「R-1に夢はあるんですよ!!」って叫びに痺れました。20年以上漫談を続けるという、ストロングな生き様の一端を見た気がしました。

今年は、全体的に見て例年よりかなりレベルが高かった気がします。
主に効いていたのは「芸歴10年以内制限」の撤廃や、「ネタ時間の変更(3分→4分)」ですかね。
また、「R-1」は2021年大会からルール改正や大会のムードづくりなど、かなり力を入れて改革を推し進めてきた印象がありますが、その成果がようやく出てきたように感じました。司会や審査員の方々もこの大会に馴染んできて、安定してきたイメージを受けました。
ここ数年あった、「進行がおしすぎて時間が足りなくなる(けどなぜか最後にゆりやんの1本目のネタを流す)」「リハのときに使っていた得点が一瞬表示されてしまう」といった目立ったトラブルも無く、安心して観ることができました。

今回決勝進出された、9名の方々の今後のご活躍を願ってやみません!
これから色んなところでお見掛けできることを楽しみにしています。

追伸
「R-1のむヨーグルト」を最近あまり飲めていなかったので、久々に手に取ってみようかな…

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