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テイラー・スウィフトと英米文学 ④CATS/T.S.エリオット

テイラー・スウィフトと関連の深い文学作品を勝手に紹介します。
第4弾です。

今回はF.スコット・フィッツジェラルドについて書くつもりだったのですが、
ちょうど先日、映画版CATSの予告編が公開されて完全にテンションが上がってしまったため、
CATSの原作者であるT.S.エリオットについて少しだけ書こうと思います。

CATSは特殊なミュージカル

日本でも劇団四季がロングラン上演を続けていることで有名なミュージカル『キャッツ』。
楽曲は『オペラ座の怪人』や『エビータ』なども手がけたミュージカル界のレジェンド、アンドリュー・ロイド・ウェバーが作っています。

私はミュージカルが大好きなのですが、『キャッツ』は初めて見た時はかなり混乱しました。

ストーリーが、ない...?
プロットが、ない...?

猫がたくさん出てきて、歌やパフォーマンスはどれも楽しくて、でも気がついたら主役の猫が天に召されていて....????????という感想でした(グリザベラは正確には転生したようです)

一般的なミュージカルと違ってストーリーの起承転結が追いにくいのは、その原作が詩集だからです。

T.S.エリオット著『ポッサムおじさんの猫とつきあう法』

T.S.エリオットは1888年にアメリカに生まれ、39歳にしてイギリスに帰化したイギリス人作家です。
『キャッツ』に出てくる登場人物や歌詞のほとんどが、エリオットの詩集『ポッサムおじさんの猫と上手くつきあう法』からそのまま引用されています。(ポッサムおじさんは知人の子供たちに向けたエリオットのあだ名でした)

この詩集の中では、個性豊かな猫たちの様子が一編ずつ綴られています。

個人的に一番好きなのは、テイラーの演じるBombalurinaの名が登場する詩「猫の名付け方」。
冒頭文だけ引用します。

The Naming of Cats is a difficult matter,
It isn't just one of your holiday games;
You may think at first I'm as mad as a hatter
When I tell you, a cat must have THREE DIFFERENT NAMES.

猫に名を付けることは実に複雑な仕事だ
余暇にちょちょいと出来ることじゃない
おかしいと思うかもしれないが聞いてくれ
猫には「三つの名」が必要なんだ

この詩では、「どの猫にも三つの名前がある」ということが語られています。

一つ目は、人間の呼ぶ普通の名前。
二つ目は、その猫にふさわしい、華やかな美しい名前。
そして三つ目は、その猫しか知ることのできない、秘密の名前。

めちゃくちゃ浪漫の溢れる話じゃないですか。
猫ならではの掴み所のないミステリアスな雰囲気や、プライドの高さ、人間に媚びない態度、気品のある美しさから生まれた詩だなーと思います。猫派じゃないと書けません。
ちなみに、テイラー演じるBombalurinaは二つ目の「華やかな名前」の例として登場します。
Bombalurinaはセクシーな雌猫のキャラクターなので、名前の小悪魔的な響きが役柄にぴったりですよね。「ボンバルリーナ」…可愛い…!

猫派のエリオット

これは私の勝手な妄想なのですが、T.S.エリオットは絶対猫派だと思っています。
というのも、この詩集以外にも「猫のイメージ」が出てくる詩があるのですが、それも傑作なんです。

『J.アルフレッド・プルーフロックのラブソング(The Love Song of J. Alfred Prufrock)』という詩なのですが…『キャッツ』に出てくる詩に比べると少し長めなので引用はしませんが、そこでは「黄色のもや」が街を好きに徘徊し、窓際に背中をこすったり、夜の隅をひと舐めしてみたり、突然飛び上がったかと思えば10月の穏やかな空気にまどろんで丸くなったりします。
こんな「黄色のもや」に伴う猫っぽい描写が面白くて数年前に読んだのですが、今では大好きな詩の一つです。
エリオットの詩は、どれも教養に裏打ちされたなんとも言えない色っぽさがあって、とてもおすすめです!


テイラーの歌うMacavity the Mystery Cat

話が逸れてしまったので、最後にもう一つ。
噂ではテイラーの参加する楽曲は5曲ほど(!)あるようですが、中でもおそらく確実に参加するはずなのがMacavity the Mystery Catという曲です。
オリジナル版の動画がこちら。


セクシーすぎる。楽しみです。


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