【試訳】Chatting with Tim Follin, Creator of Contradiction (2015)

Original Text: CHATTING WITH TIM FOLLIN, CREATOR OF CONTRADICTION
by Amanda French (Cliqist)


Contradictionは、[2014年]1月17日にKickstarterで£4,010の資金調達に成功した、実写を用いたミステリーもののインタラクティヴ・アドヴェンチャー・ゲームである。このゲームは実写映像をフルに使っており、「自由に動き回って諸々の場所を捜査し、証拠をあつめ、メモを取っていく自由度の高いユニークなゲーム・デザイン」を売りにしている。本作では、登場人物への聞き込みを行い、彼らが話すどんな嘘も見破ることが核心に置かれている。Kickstarterで調達された£3,400と追加資金(その一部は作者の自己投資)とを合わせて合計£6,000を用いて、このゲームの制作は全体的に見ても低予算で行われた。現在、iTunesで好評発売中である。

Contradictionは、英国の片田舎の閉鎖的なビジネス研修セミナー(course)がスキャンダルに巻き込まれることで話が始まる。父と息子の二代で開設しているセミナーが研修に虐待的な手法を用いていることで告発されると、当局は中折れ帽を被った警部補Jenksを派遣する。プレイヤーはこのミステリーを深く捜査するにつれて、オカルト・心理操作・身体的虐待を含む、奇怪な秘密をごまんと発見する、という次第。

Contradictionのクリエイター、Tim Follinは主にTVコマーシャルの制作に携わっている。映画・TV業界に移る以前は、(Ecco The DolphinやGhouls n’ Ghosts等)ビデオゲーム・ミュージックで幅広く仕事を果たしてきた。ContradictionはTim Follinが情熱を賭けたプロジェクトであり、彼によって長年にわたって取り組まれてきたものである。AdventureLantern.comのインタヴューで述べられているところでは、Follinと彼の兄弟[Geoff](コンセプトの開発に協力)は、当初Contradictionを音声のみのゲームにするつもりだったのだが、構想が発展すると、映像を利用した方がこのプロジェクトがよりうまくいくと気づいたのだという[1]。iPadがリリースされるやすぐに、Follinはこのテクノロジーが、自分がまさに求めていたものを作り出すためにそこにあるのだと分かった。

90年代の古臭いFMVゲームについては、私たちはみな知っての通りである。多くは快適にゲームできたものでなく、辟易させるくらいセックスとヴァイオレンスまみれで、寒気のする役者の演技をおおむねお決まりとしていた。Tim FollinはかようなゲームからContradictionを切り離したいと考えていた。トレイラーを見ると、本作に投入されたスキルを確認できよう。役者の演技は上々で、BBCを視聴しているかのような気持ちにさせられる。一方で、人が伝統的な「ゲ―ムオーバー」感覚に欠けてしまうほどにFollinはこのゲームを難しいものにするつもりはなかったという。一部のプレイヤーが難所を乗り越えることを手助けするために、彼はプレイヤー用のヒント・ページを設けた。Follinの根本的な願いは、このゲームで犯罪ドラマやミステリー、アドヴェンチャー・ゲームのファンをワクワクさせることにこそあった。

先ごろ私は、Contradictionの制作体験と、さらには今後リリースされる本作のその他のヴァージョンがどうなっているかについて、いくらか明らかにしたいというFollin氏と接触する機会を得た。彼は心を尽くして私と連絡を取り合ってくれた。彼の返事を以下に掲載する。

Cliqist:[先行発売されたiPad版以外の]Contradictionのその他のヴァージョンの進捗はどうですか? 特にAmazon Fire TV版やPC版はどんな具合でしょう?

Tim Follin:Amazon Fire TV版をリリースできるんじゃないかという考えがひらめいた後で、僕は自分が打開できる、あるいはできないだろういくつかの技術的な問題とすぐにぶち当たることになった。どういうことかというと、Contradictionはハードウェア上の問題と切っても切り離せないんだ。(iPadを含む)ほとんどのデバイスが実行できるように整っているとは言えないふつうではなりやり方で、本作は映像再生をおこなっている、というのがその主な理由。だから今のところの予定として、そのことに関する情報をもっと得られるまでは、Amazon Fire TV版を先送りにするつもりだ。けれどもPC/デスクトップ版はほぼ出来上がっている。iPad版を開発していた時にあった問題の数に比べれば、どうということはなかった。デスクトップ・アプリケーションを制作するよりよっぽど簡単だよ! そういうわけで、3月末までには用意したいところだ。また、いろいろ作業するための増設メモリがあれば、作品を進行する時、さらにかかる日数[プレイ時間]やその他の要素だとかを追加するとか、自分が本作に対してやれることも違ってくる。全部HD映像で作業するからね。

Cliqist:本作のレビューは好意的なものが多いように見受けられます。この先Contradictionの続編を制作する心積もりはありますか? あるいは本作のような、インタラクティヴ・アドヴェンチャーを新たにリリースするお考えはあるでしょうか?

Tim Follin:そうする余裕があるのなら、ぜひとももうひと作品作りたいね! TVドラマと比べると、これは低予算の作品なんだ――実をいえば、この四倍もの費用をかけて僕は30秒のTVコマーシャルを作ったことがある――ただ、低予算というのは、このゲームのなかの要素を多く犠牲にしなければならなかったということだ。どうしようもないプロット上の穴を塞いだり、後でいろいろ継ぎ接ぎするものがあったってことさ。こんなのは二度と繰り返したくないね! また完成させるために、自費で約£2-3,000ほど出した。もうひと作品作るとしたら、作中でもっと多くの「こと」が起こったり、もっと多くの場面・状況を用意したりといった点で、Contradiction 1から進歩している必要があるだろう。つまり、もっと撮影に時間をかけなければいけないし、もっと多くのお金が要るってことだ。まずこれについては、自分の投資を取り戻せるかどうかに全てがかかっている。

Cliqist:本作の制作途中に直面した最も大きな困難とは何でしたか?

Tim Follin:脚本を書くことが最初の大きな課題だった。アイデアを思いつくには一苦労あるものだが、僕の場合、ゲームあるいはストーリーとしてそれがうまくいくかどうかに関する手がかりがなかったんだ。だから良い方向に進むことを祈りながら、暗闇のなかでの作業だった。同じくして、プログラム方法も自分で身につけた方が良いだろうと思い立った。これまでいろいろなプログラマと仕事をしてきた都合上、報酬を支払うことなく誰かにそれをやってもらうことなんてできないと分かってたんでね。プログラミングはフルタイムのとても骨の折れる仕事だ――脚本を書くよりもはるかに大変なことは承知していたけど、間を置かずに正直にいって自分はプログラマにはまったく向いていないことが分かった! Kickstarterのキャンペーンに続いて、僕たちは実際の撮影に取り掛からなければならなかった。結局もの凄い作業量であることが判明した、それも比較的短期間のなかでのことだ。問題は、いろいろな役のためのきちんとした役者と、撮影するための適切なロケーションを確保することだった。幸いにも、ロケーションに関しては順調に行った。この点に関しても僕はすでに、友人のJohn Guilorに「Ryan Rand」という登場人物を演じてもらえるよう引き入れていていたんだけど、結局は彼が他のキャストを見つけるために欠くべからざる人物になったんだ。というのも、オーディションをする以外にきちんとした役者をどう見つけたらいいか、自分には大して考えがなかったし、そうする余裕もあまりなかったからね。撮影が終わった後ぶち当たった最も大きな課題は、まったく技術的なものだった。主には僕のわずかなJavascriptに関するプログラミング・スキルを、ちゃんとしたiPadアプリケーションに転じる、といったことだけど。幸いにも、自分でもそれができるアプリケーション(Appceleratorという会社の制作したTitanium)を見つけた。また、映像に関するいくつかの障害が僕にはあった。ロケで録った音声のひどい音質(賃金を支払う録音係がいなくてそうなってしまった)の修正や、それぞれのロケーションで自分たちに信じられないほど限れらたタイムスロットしかなかったことに起因する、照明上の問題を取り繕うといったことだ――撮影はほぼ日中に行われたから、後でそれが夜に見えるようにする必要があった。だから映像に関しては、iPadでスムースにゲームを実行させる問題に加えて、やらなければいけないポストプロダクションが山ほどあった。先にもいったように、このゲームはふつうではない方法で映像を用いていているから、僕はひとまずiPad版を完全に断念しなきゃいけないと思ったんだ。メーカーというのは、自分たちのデバイスで決まった種類のゲームを作るものと思っている。そして少し違ったアイデアを思いついた時には、彼らメーカーのやり方がいかに偏ったものかが見えて驚くものだ。そういうわけで僕は本作を完成させるために、終始偏向(bias)に立ち向かっていた。

Cliqist:Contradictionの開発にあたりインスピレーションを得た、映画、ビデオゲーム、あるいは別の何かはありましたか?

Tim Follin:僕はゲームからはまったくインスピレーションを得なかった。90年代中期のFMVゲームと初期のレーザーディスクのアーケード・ゲームなら少しは知っているよ。とはいっても、どれもどうしようもないくらい酷いことで伝説的なものだけど! Contradictionのアイデアは、実のところ、FMVゲームの大部分を支えてる、「次にどうするか選択せよ[選択肢を選べ]」的なありふれたアイデアに代わるものについて考えることから生まれたんだ――まず自分のなかにあったのは、ジグソーパズルのように組み合わせて見つける物事のピース[かけら]を当て嵌めていくというアイデア。それからそれは、ある特定の順序で対になる要素というアイデアに変わり、そして最後には、対になる矛盾した返答と嘘を話すたくさんの登場人物が出てくるというアイデアへと変わっていったように思う。自分の求めていたストーリーと雰囲気は、10代のころに観ていた70年代のホラー映画とミステリー映画から主にインスピレーションを得たといっていいだろう。『ローズマリーの赤ちゃん』や『ウィッカーマン』、『オーメン』のような、ぞっとする70年代の雰囲気を持っている作品だね。でも、僕が最もインスピレーションを得たのは、映画製作という観点からすれば、スタンリー・キューブリックだろう――『2001年宇宙の旅』、『時計じかけのオレンジ』、『シャイニング』から、『アイズワイドシャット』に至るまで。後者[キューブリック作品]は、Contradictionに最も大きな影響を与えている。とはいえ、当然だけど誰かが、それらの作品との比較をやるなんて想像だにしていないよ! そうだったらいいんだけどね……。

Trailer: https://vimeo.com/80916220

訳注

[1] http://www.adventurelantern.com/previews/Contradiction/Contradiction.htm

Translation: Takashi Kawano

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