「ポストモーテム」 アプリゲーム『ブルーアーカイブ』:創作のためのボキャブラ講義23

本日のテーマ

題材

「……そうでしたか。」
「立て続けに色々なことがありましたし、少し整理しておきましょうか。」
「退屈なお話になるでしょう。少なくとも面白くはないことだと思いますが……整理することで、進むことができることもあります。『ポストモーテム』と呼ばれるものです。」
「……では、本題に入りましょう。」

(エデン条約編3章1「ポストモーテム(1)」)

意味

ポストモーテム postmortem
 事後検証。あるインシデントに対しそれが起きた経緯や行った対応をまとめたもの。


解説

作品解説

 既に何度かボキャブラ講義で登場しているアプリゲーム『ブルーアーカイブ』。開発元が国外ということもあって、今まで触れてこなかった単語を目にする機会が多い。今回もその中のひとつ。

 物語はトリニティとゲヘナ、ふたつのマンモス校の平和条約「エデン条約」調印を中心とする『エデン条約編』にて。トリニティにおける生徒会、ティーパーティのホストである桐藤ナギサに呼ばれ先生が赴くと、そこで落第寸前の生徒を集めた補習授業部の顧問を務めるよう依頼される。補習授業部には序盤の「アビドス編」で知り合った生徒、阿慈谷ヒフミも含まれており……。

 トリニティ一の才媛だったはずが破廉恥な奇行を繰り返すようになった浦和ハナコ、治安維持部隊の一員ながら落第寸前の下江コハル、そして外部からの転校生という軍隊上がりらしい行動が目立つ白洲アズサ。ヒフミを加えた四人で三回行われるテストの内、どれかで全員が60点以上を出せばいいようだが……。

 補習授業部結成の裏には、トリニティの裏切り者を探し出すというナギサの目的があった。裏切り者は四人のうち誰なのか。あるいはナギサに先生を推薦したティーパーティの一員、聖園ミカが言うようにナギサ自身こそが裏切り者なのか。

 題材の会話は全四章ある『エデン条約編』のうち三章冒頭。裏切り者の発覚と事態の収拾が終わり、ひとまずエデン条約の調印に向けてトリニティ内部の問題が落ち着いた場面。事態の解決に力を貸したシスターフッドの長、歌住サクラコの口から今回の事態のまとめが語られる場面である。

語彙選択

 韓国企業開発の本作はその影響か、様々な用語が韓国の文化から出ていると言える。そもそも『エデン条約編』全体を通底するキリスト教的モチーフは日本よりもキリスト教が根強いだろう韓国らしい雰囲気だと言える。

 その中で飛び出す「ポストモーテム」はどちらかと言えばIT系エンジニア周りの用語らしい。トリニティの中でも特に宗教的要素の強いシスターフッドのトップ、サクラコが口にする用語としては少し奇異だ。とはいえ、おそらくシナリオライターもこの手のアプリゲームあたりの開発文化に馴染んでいるだろうし、その辺から拾われたワードだと考えると実にアプリゲームのシナリオらしい選択と言える。

補足

 『エデン条約編』は本作においても特に込み入ったワードの登場するエピソードだ。トリニティの分派はそれぞれ実在したキリスト教の分派がモチーフのようだし、アズサやセイアが口にする言葉にも元ネタがあるようだが調べるのも追っつかない。

 エジプト神話モチーフのため個人的には知らな過ぎて引っかかりが少なかった『対策委員会編』よりもなまじ聞き馴染みがあるようなないような単語なので引っかかるのが余計厄介かもしれない。まあこのあたりは適度に雰囲気を楽しみながら読み飛ばす精神も必要だろう。全部の単語の意味を調べていたら埒が明かない。こんな記事書いといて今更だが。

作品情報


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