人生ってなんだろう(41)

ルドルフ  地域ネコに仕える

野良ネコ、いや今は地域ネコと呼ぶそうですね。大柄で白地にトラ柄のブチが入った雄ネコが、我が家のリビングの椅子の上で、いつも寝ています。こちらが音を立てると、当然の安眠の権利を邪魔されて“迷惑だなあ”とばかりに、こちらを見詰めてきます。特に汚れた毛並でもないので、まあ近隣でそれなりに愛されているようですね。
しばらく居つく猫は、このネコで3代目です。たまに顔を出すものをいれると、近隣に3〜4匹はいるのでしょうか。
おそらく、熾烈な縄張り争いの結果、この雄ネコが我が家を縄張りとして勝ち取ったことと思います。
だから彼にとって、この椅子を占拠することは、当然の権利なのでしょうね。

ある日YOUTUBEで、この雄ネコと良く似たネコを拝見しました。“ヨネ太郎”と呼ばれていましたね。野良の経歴もしぐさも似ているので、いつしか、この雄ネコを“ヨネ”と呼ぶようにしております。

しかし不思議なことに、この“ヨネ”を含めて、我が家を訪れる地域ネコは、“ニャー”とか“ミャア”などの“鳴き声を出しません。物音ひとつ立てずに、部屋に上がり、気が付くとこちらを見ています。彼らのルールのようです。人と接して生きることは、苦労が多いのでしょうね。

“ヨネ”と意思疎通はできないものかと、呼びかけをしてみたり、おやつを目の前で振り、“ゴハン”とか“オヤツ”などと言ってはみましたが、ゴハンやオヤツが無ければ相手にしてもらえません。眠そうな顔をして、“もう寝てもいいか、俺は寝るぞ”といった具合で背中を向けてしまいます。“わかった、わかった、寝てもいいよ。”と私は、目を細めたり、閉じたりをしてみました。どうやら、この仕草は、通じたようです。安心して、丸くなってのお休みです。

それ以来、目を細め、眠そうな顔を作ることが、全ての合図となってしまいました。

今も少し距離を開けて、首筋を伸ばして座り(猫としては行儀の良い正座スタイルなのかな)、私を見上げて目を細めています。
“はいはい、ゴハンですね。ちょっとお待ちください。”
“ヨネ”用にキャットフードは切らす事が出来ません。お気に入りの銘柄の猫缶を開け、1/4ほどを小皿に盛り付けます。
ほんの少しだけレンジで温め、熱さ加減を確認してから、目の前に置いてあげます。すぐには食べ始めることはありません。匂いをかぎ、安全を確認してからのお食事です。
食べ終わると、私に向かって一歩前に近づき、また目を細めて見上げてきます。御かわりの合図です。
“正月だから、特別にこれをあげよう。どうだ?”時折買ってくる、カツオのおやつを見せると、目を輝かせています。
“わかりやすいヤツだな、さあお年玉だよ。” カツオの時はあっというまに彼の胃の中に消えてしまいました。
食べ終えると、こちらを横目で見ながら、踵を返し、窓際の椅子の上に飛び乗ります。
“まったく、愛想のないヤツだな。”彼がすり寄ってきたり、じゃれてきたりすることは今後もなさそうですね。

ただ時々思うのですが、いつの日か“ヨネ”がしゃべりそうに思えてなりません。“うるさい、静かにしろ”なんて、おじさんの声で言われたらと思うと、少し嫌ですけどね。



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