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何故起こる?プロ野球界隈の同担拒否

Twitterでオリックスと検索ワードを入れたら、サジェストに同担拒否というワードが出てきたので、気になって見てみると選手の同担拒否についてツイートしたオリックスファンの話題で盛り上がっていた。過去にも選手の同担拒否でオリックスファン界隈で物議があったと記憶している

今回はネットで見つけた"同担拒否"についての論文やTwitterで募ったアンケートを参照しながらプロ野球界隈の同担拒否について考察を混じえながら話を展開していこうと思う

経緯

発端は3月28日にオリックスファンの女性が選手のサインを貰おうとしたら、横にいた人に同じサインを書いてもらったことに対しパクられたと言い、号泣したと書いたツイートだ。そのツイートに多くのオリックスファンが反応したというのが今回の流れだ

過去にも選手の同担拒否という話題は界隈内ではあったのものの、Twitterトレンドに挙がったのは初めてだったかもしれない

アンケートの実施

今回Twitterで同担拒否についてのアンケートを実施した。質問内容は以下の4つである

・プロ野球界隈での同担拒否についてありか否か
・野球選手の同担拒否についての率直な感想、意見を教えてください
・実生活での同担拒否についてのエピソード
・贔屓しているチームを応援するきっかけ

まず一つ目の"同担拒否についてありか否か"についての結果(計33票)はこうなった

あり … 21.2%(7票)
なし … 54.5%(18票)
なんとも言えない … 18.2%(6票)
同担拒否を知らない … 6.1%(2票)

"なし"が一番の得票となった。続いて"あり"が7票獲得という結果になり、"なんとも言えない"が6票、"同担拒否を知らない"が2票となった。やはり同担拒否を受け入れられない層が多いようだ。なお、今回アンケートの際、性別や年齢は聞いていないので性別差や世代差での傾向は分からない

続いて2つ目の野球選手の同担拒否についての率直な感想、意見(計26件)についての結果を述べていく。1つ目の結果で"なし"が多かったのもあり、否定的な意見が多かった。「理解ができない」や「気持ち悪い」、「心の中で思って勝手に距離をとる分にはありだが、同担拒否を掲げられると心が狭く感じる 」、「選手は物じゃないし、共有すればいいのに」などがあった

その反面「推し方は人それぞれだし、迷惑かけなければいいのでは」、「どの界隈にも一定数いるから」という寛容な意見も見受けられた。また、「同担はいてほしい」という同担を歓迎するものもあった。さらに、「同担だけど人間的に嫌い、応援するスタンスが嫌いなどの同担拒否、いろんな同担拒否がある」、「別に同じ選手を推してる人みんな消えろと本気で思っている訳ではなく、自分の好きな選手をアイドルのように応援してる人を見たくないと思って避けているだけ」という同担拒否について具体的な事例についても言及してくれた意見もあり、興味深かった

3つ目の"実生活での同担拒否についてのエピソード"についてもいくつか触れていこう

「一部の同担がほかの同担・他担ファン、もしくは推していない選手に対して誹謗中傷を行っているのを見て、"こんな奴と一緒にされたくない"と一時期同担拒否に近い状況に自らが陥ったことがある」

確かに誹謗中傷をするような過激ファンと同列に見られるというのは不服であり、こんな奴と一緒にされたくないという気持ちは共感できる

「同じ応援する選手の女性ファンが前にいて、後ろの女性より私のが愛伝わるよね?って謎の声デカでタオルアピされて試合見るのをタオルで妨害された」

現地で選手への愛を伝えたいのは分かるが、それに集中し過ぎて他のファンに迷惑をかけていいという理由にはならない

「私自身が同担拒否寄りの人間なので、同じ思考を持つ友人と話す時は推しが被ってないか確認し、被っていた場合はすかさず違う話題にするし、されます」

この人は出来るだけ推しに関するトラブルを避けようと努力しようしているのが伺える。また、同じ思考を持っている者同士だとこのような傾向になりやすいのかもしれない

「ライブ会場で同じアニメキャラのグッズの人には嫉妬というかマイナス感情が起こってしまう」

自分は球場に行った時に同じユニフォームを着たファンにマイナス感情を抱くというのはないが、これは行った先で他人と服装が被った時に気まずいと思うのと同じ感覚に似ているのかもしれない


最後に贔屓チームを応援するきっかけ(33票)について聞いてみた

・本拠地が近所だった・・・27.3%(9票)
・テレビ中継やライブ配信を見て・・・24.2%(8票)
・友人、家族等からの勧誘・・・21.2%(7票)
・好きな選手の影響・・・21.2%(7票)
・その他(気づいたら、近鉄が消滅したから)・・・6.1%(2票)

「本拠地が近くだった」が最多得票だったが、かなり拮抗した結果になった。好きな選手や推しの選手を見つけた、もしくはその選手の移籍から応援するきっかけとなったファンもそれなりの数いるというのが分かった
ちなみに自分も元楽天の鉄平選手がトレード移籍がきっかけでオリックス・バファローズを応援するようになった

同担拒否の理由

ここからは何故同担拒否が起こるのかについて考察していく。今回同担拒否の理解を深める為、琉球大学の学生の"同担拒否"に関する卒業論文を拝読した。考察の中でその中の論文の言葉を引用させてもらう

論文の中では同担拒否が起こる理由として、推している対象の魅力に対する解釈や価値観の相違からくる同担ファン同士の衝突を避けることが挙げられていた。アンケートの中にもそのような理由での同担拒否になったというエピソードがみられた。ただその中には同担の特定の人物が嫌いで関わりを避けていたというケースもあった。推しへの解釈とは関係ない人間関係から生じる同担拒否もあり、これも論文の中で語られている「過去に同担でのトラブルで嫌な思いをした」というものに繋がっていくケースなのだろう

また、論文の中で別の同担拒否の理由で挙げられていたものは、「推しが被った時のライバル意識」、「自分の方が推しについて詳しいから」、「推しが自分以外のファンを見るのが嫌だから」というものだった。これは前述の同担拒否との違いとしては、人間関係からくるものではなく、嫉妬心やライバル意識からくるものであるということだ。また、ファンの中には推しが好きすぎて疑似恋愛的感情に浸っているファンもおり、それが嫉妬心やライバル意識を生むきっかけになっているのだろう

先述のオリックスファンの女性のツイートの件も、ツイートから察するに嫉妬心やライバル意識からくる同担拒否のパターンなのだろう。ファンは選手からサインをもらったり、一緒に写真を撮ってもらったりすることは何よりも嬉しい交流のかたちであるのは確かであり、最近は顔がイケている若手選手をモデルのような売り出し方をしている球団も見受けられてきた。それもあってか、疑似恋愛のような感情が湧く女性ファンもいてもおかしくはないのだろう

同担拒否の背景

同担拒否文化が生まれた背景についても考えていきたい。論文の中ではインターネットやSNSの普及が同担拒否の文化の後押しになっていると書かれている。1990年代のインターネットやSNSの普及により、アニメファンやアイドルファンのコミュニティ内での交流がオンラインが主流になった

野球ファンもファン同士での最初の交流がSNSになりつつあると感じる。コミュニティ内での対面によるオフライン交流では目の前にいる性格や価値観が合わないファンとの関係を断つというのは、簡単にはいかないものだが、オンライン交流であれば、SNSの匿名性やブロック機能などを駆使すれば距離を置きたい相手を自分で選別できる。推しへの解釈や価値観を大切にする同担拒否のファンの特性上、オフライン交流よりもオンライン交流は理に適った人間関係構築の場なのであろう

また、論文では推しとの直接交流するイベントの増加や多様化も同担拒否に関わっていると述べている。2000年代から握手会やハイタッチ会といった一対一のイベントの増加が見られた。AKB48がCDに握手会の参加券を封入し販売したことが代表的な例だ。プロ野球界隈では選手とファンの直接交流できるサイン会やファンフェス、球団や個人のYouTubeやインスタライブ、SNSでの直接コメントを送ること等がそれらに当てはまる。そのような選手とファンとの交流の場の増加も、選手の同担拒否に影響を与えているかもしれない

以上の要因から同担拒否という文化というが生まれた過程が分かった。ただ野球界隈の中で好きな選手が同じファンのことを同担という呼び方をする人を少なくとも自分はSNS上で見かけたことはない。過激派ファンと呼ばれるファンがたまにいるが、それと同担拒否とは性質的に違う気もする。もしかすると、プロ野球界隈の中で同担拒否のファンが自然発生したのではなく、同担拒否が定着している界隈の影響を受けたファンがプロ野球界隈でも同担拒否という考え方をそのまま当てはめたことにより、プロ野球界隈にも同担拒否のファンが出現したのかもしれない

同担拒否文化とプロ野球界隈との親和性の低さ

ここからは同担拒否文化がプロ野球界隈のファンにあまり受け入れられていないことに関してその理由を考察していきたい

まず、同担拒否という文化自体が特殊なものであるということだ。同担拒否はあらゆるジャンルの界隈で起こっている現象ではなく、アイドルやアニメ等の特定の界隈での現象であり、それはプロ野球ファンにとっては異質なものと感じているのだろう。また、同担拒否という現象は若い年代の人で起こりやすいというのもあり、年齢層の幅広いプロ野球界隈ではなかなか受け入れにくい現象なのだろう。そもそもアイドルとスポーツではファンの応援する目的というのも違ってくるわけなので、推しの応援の仕方や文化に違いが出てくる尚更なことなのである。寧ろプロ野球界隈では同じ推しがいるなら相手を退けるよりも歓迎するファンの方が多いようにも思える

次に、同担拒否の原因となる過度な嫉妬心や独占欲は他人には理解されにくく、ネガティブな印象を与えやすいということだ。ここで恋愛の話題を出すのも唐突で申し訳ないが、恋愛でも嫉妬深い人や独占欲が強い人というのは疎ましいと思われる傾向にある。もちろん嫉妬や独占欲というのは誰でもあるものではあるのだが、度を超えてくれば厄介なものだ。それが恋人ならともかく、恋人でもないプロ野球選手に対してなら尚更周囲から煙たがれても仕方ないとも感じる

最後に、プロ野球を見るようになったファンのきっかけが選手の顔や性格から入ったというファンというのが少ないということだ。特定の選手の顔や性格からファンなったという人はある程度実在しているが、それが過半数を占めているわけではないというのが事実であろう。前述のアンケートにも好きな選手の影響でファンになったのが全体の20%程。また、好きな選手の影響でファンになったからといって、その人が同担拒否になるというケースは少ないように感じる。これはプロ野球界隈に同担拒否という文化が根付いていないからか、同担拒否という思考が生じにくいのだろう

結論

同担拒否文化は昨今のSNS時代特有のオンライン交流が主流の界隈で起こりやすい現象であり、今回の一連の事象はその界隈に慣れている新規の野球ファンがプロ野球界隈に同担拒否文化を持ち込んだことによって生じたトラブルなのだと分かった

以前よりも熱心に選手を応援する女性の野球ファンが多くなって、球団側もその層をターゲットにしたマーケティングを行うようになり、プロ野球界隈のファン層が変化したようにも思える。選手の同担拒否のファンもその変化の中で生まれたものだと思う。だが同担拒否が理由で同じ球団のファンを避ける程度であればいいとしても、迷惑行為に及ぶのは賢明なやり方だとは言えない

同担拒否をするファン層とそうではない層の衝突は度々見受けられるのが現状だが、そうではない層の人達も同担拒否をする層の人達に対して理解ができない、気持ち悪いと吐き捨てて排他的な態度をし続けるのはコミュニティの健全性が損なわれることにも繋がりかねない。故に同担拒否というものをある程度理解した上で、許容する姿勢も必要なのかもしれない

同じ好きな選手がいるファン同士で、その選手のいい所を語り合うという光景が望ましいと一野球ファンとして感じる。推し活が盛んになっている昨今、ファン一人一人が節度ある交流をし、野球観戦を楽しめる健全な界隈であり続けることをただ切に願うばかりだ

参考文献

http://www.cc.u-ryukyu.ac.jp/~yi-jen/sotsuron/187450B.pdf

「同担拒否」が起こる原因の再考
-TWICEファンの事例から-

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