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神田伯山新春連続読みレポート 2日目(畔倉初日)

新春連続読み『畔倉重四郎』2024に6日間通って感想を書く。2日目はついに本編の畔倉重四郎がスタートした。

悪事の馴れ初め

畔倉重四郎の父、畔倉重右衛門は町人をいじめる薩摩の武士と斬り合いになり、浪人の身分となる。そのときに救った町人である穀物屋平兵衛のもとで、重右衛門は昼間は手習いの先生、夜は剣術の先生をすることとなった。跡を継いだ19歳の重四郎も同じように先生をしたが単調な日々に飽きるまで長くなかった。そんなある日やってきた男に道場を貸してくれと頼まれ、差し出された二分金を前に頼みを呑む。その日は出かけていたが帰宅してみると道場でやっていたのは剣術の稽古ではなく博打だった。すぐに男たちを追い出そうとしたが、興味を引かれてやってみることにした博打は面白く、博打にはまってしまう。穀物屋平兵衛は、重右衛門の息子が博打で落ちぶれたことを残念に思っていたが、訪ねてきた重四郎は立派な形で、酒や博打は止めたと言う。平兵衛はその様子に胸を撫で下ろすが、このとき重四郎は平兵衛の娘、なみに一目惚れしていた。日を改め平兵衛宅を訪ねた重四郎は、なみの部屋へ行き文を渡す。必ず明日、返歌をくれと言って渡したそれは乳母に奪い取られる。折しも平兵衛は竹馬の友である杉戸屋富右衛門と囲碁をしていた。平兵衛が厠へ行った隙に、乳母は富右衛門に文を渡して読んでもらう。果たしてそれは恋文だった。富右衛門は平兵衛にそれを見せてしまい、平兵衛は重四郎が娘を拐かそうとしたことに憤り出禁にする。さらに、平兵衛は娘を嫁がせ、重四郎と結ばれることは決してないようにした。恨みを募らせた重四郎は、博打仲間の三五郎から富右衛門の煙草入れを入手すると、平兵衛殺害を目論み、街道に潜伏する。

穀屋平兵衛殺害の事

娘なみの嫁ぎ先を訪ねた帰り道を歩く平兵衛に、重四郎は背中から斬りかかった。丁稚の三吉は急いで逃げて行く。うつ伏せに倒れた平兵衛を重四郎はわざわざ仰向けにし、相手に自分の顔を認識させてから首にぐっととどめを刺した。死体のそばに富右衛門の煙草入れが落ちていたことから、富右衛門は下手人とみなされお縄になる。

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1席目がやけに長く、実はもう2席目なんだっけ、でも羽織を脱ぐところをまだ一度しか見ていないような気がする…と不思議に思っていたら、1席目と2席目の配分を間違えたとのことだった。講談はこういうこともあるのかと驚いた。でもこのやり方も嫌いじゃないと言っていたが、確かに殺害のシーン直前までは「悪事の馴れ初め」で言葉通り間違いないわけだし、人殺しをしてしまうかその前かで人間は大きく変わってしまうのだからそこまで一気に語ってしまうやり方はしっくりきて私も好きである。

今回、既にYouTubeで見たことのある畔倉重四郎という演目をやるということで、申し込むかどうか少し考えた。でも何回聞いてもまた来たいと思うのはこんなふうに違うものを見れたり発見があるからだ。納得&満足した。

城富歎訴

富右衛門は拷問の末死罪を言い渡される。富右衛門の息子、城富は盲目で按摩を生業にしており、父逮捕の報せを聞く。城富は自分が生まれてから父がずっと優しく、一人で生きていけるようにと按摩師のもとで修行させてくれたことを感謝しており、そのような父が竹馬の友を殺すはずがないと冤罪を確信した。老中のもとに行った城富はそのことを訴える。老中の安藤は城富の主張を受け容れ、大岡越前守に再捜査を命じる。

越前の首

城富は湯屋に行き、他の客の会話で父が晒し首になっていると知る。大岡越前守なら正しく裁いてくれると信じていた城富は激怒し、騒ぎを起こして大岡越前守と対面することになる。そこで城富は自分が父の真の下手人を見つけた暁には大岡越前守の首をいただきたいと主張し、越前守はそれを受け容れる。

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畔倉初日は畔倉重四郎が悪に染まっていくところが見どころだが、今回城富の存在感をとても強く感じた。涙ながらに訴える演技とその話し相手の演じ分けを、切替のタイミングに違和感を感じさせずに見せるのは至難の業なのだろうなと思う。

そんなふうに城富の訴えが胸に迫った帰り道、後ろで会話していたお客さんが、でも杉戸屋富右衛門も悪いやろ、よせばいいのに恋文見せたんだから、城富は優しい優しい言うけど優しくないだろ、と言っていて、なるほどそういう視点もあるかと感心した。


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