閉じ込められた話三選

突然だが、これを読んでいる人の中に“閉じ込められた”経験がある人はいるだろうか。時や場所は選ばず、何かしらに閉じ込められた経験だ。
今回はその話をしたいと思う。

最初に私が閉じ込められたのは7歳の頃、とあるアスレチックでの事だ。そこにはアリの巣地獄と呼ばれるアトラクションがあり、それはおおよそ地上3メートルくらいのすり鉢状の空間を、遠心力に沿って走り回ることで登頂を目指すアトラクションだった。
子供の頃の私は馬鹿で無鉄砲で、とりあえずやってみてから物事を決めるタチだった。
つまり、何も考えずにアリの巣地獄の中に入り込んだのである。
そして周りの人がやるように走って脱出を…できなかった、およそ半分ほどで限界が来て落ちたのである。
そこから私は泣いた、一生ここから出られないことを悟ったからである。
「あぁ、ここで死ぬんだぁ…」
絶望の言葉まで紡いだ。
そして今も私はその底からこのnoteを執筆している。

という冗談はさておき、泣けども泣けども人は助けてくれず、大人も笑って見ているだけである。幼心ながら私は気付いたのである、自分を救えるのは自分自身である、と。
アリの巣地獄とは木製遊具である。木をつなぎ合わせて作られたすり鉢、そこには僅かながらに木材の隙間が存在した。
私はそこに指をかけて登る決断をした。
このままここに居ても笑いものにされ干からびて死ぬだけである、自分を助けるのは自分、自己防衛、大人を頼っちゃダメ。
僅かな隙間に指を、靴の先をかけ、全ての神経を研ぎ澄ませ、やがて、登頂を果たした───。

それから10年後、友人と同じ施設を訪れる機会があった。
簡単に登ることが出来たし、年齢制限(下限11歳)が付いていた。そりゃそう。

次に閉じ込められたのが大学の教室である。
私が通っていた大学は空き教室で休憩したり自主したりすることが許されていて、暑い夏の日だったこともあり私はあまり人のこない教室でレポートを書く作業をしていた。
日が傾いてきたら帰ろう、それまではここでレポートを………
次に気が付いた時、部屋は暗闇に包まれ、窓からは月明かりが覗いていた。
「え?」思わず声が出た。スマートフォンを確認すると…夜の8時である。
部屋の鍵は閉まり、電気も落とされている。セキュリティがかかっているため内側からも開かない。夏の夜のじめっとした感覚が体を包む。冷房も付かない。大学に電話をかけてもこんな時間、受付時間外で当然繋がらない。(後に緊急番号があることを知る)
「ここで…死ぬんだ…」
絶望したが、もはや綺麗にここを出る事は不可能だと察した私は、教室にある内線を手に取った。
セキュリティが発動するか、それとも誰かが呼び出し音に気付いてくれることに賭けたのだ。
そしてそれは、どちらも同時に起こった。
セキュリティの警報は鳴り、警備員さんも来て、まだ残っていた事務員にも繋がった。
翌日とても怒られた、とても。でも正直確認しないでセキュリティオンにした学校もどうかと思う。

さて最後の閉じ込められ体験だが、これはなんと閉じ込められる要素のない田舎道で発生した。
ある夜中、寝られなかった私は適当に車を走らせていた。
夜中の2時ともなるとすれ違う車も少なく、田舎に向かうにつれ道に私以外の人が存在しない状況になった。
そのまま車を走らせていると、一方通行の出口である信号に差し掛かった。感応式信号、運転経験がある人ならわかるだろうか、センサーが設置されていて、車がそのセンサーを反応させることで信号が変わる、田舎によくある信号機のことだ。
車を停止線で止め、流していた曲を聴きながら信号を待つ。
流した曲が10曲目を迎える頃、異変に気付いた。信号が変わらないのである。
センサーが上手く反応しなかったのかな?と車を前後に少しジリジリと動かしてみるも、信号は変わらず、車から降りてセンサーに手を振るも反応無し。そして押しボタンまで歩き、それを押しても反応無し。
目の前の信号は赤、今いる道は一方通行の出口、1時間も経つ頃には
「私は、ここで車ごと干からびて死ぬのかもしれない」
と思い始めていた。
結局信号はその後も変わらず、どうすることもできず一方通行をゆっくり気を付けながらバックで下がる事になった。

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