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映画祭のマネジメントの研究6:映画祭の世界史〜映画祭の起源

海外における映画祭の歴史

映画祭はいつから始まり、そしてどのような経緯をたどってきたのでしょうか。映画祭の歴史的経緯をたどってみましょう。映画祭は欧州を中心に広がってきたため、最初に欧州を中心に海外における映画祭の歴史を簡単にみておくことにします。

映画祭の歴史は、主に1930年代から始まりました。海外における映画祭の歴史について、全期間を5期に分けてまとめていくことにします。

第1期(1930年代~1940年代)

第1期は1930年代から1940年代です。この時期に始まった映画祭は、リゾート地での特別な映画上映イベントであり、かつ、国家をはじめとする大きな権力が支援することによって、自国の国威掲揚や宣伝のための文化イベントとしての色彩が強いものでした。

フランスの権威ある映画辞典Dictionnaire du Cinemaでは、映画祭の起源はイタリアのミラノで1910年に開催された催しであるとされています。この催しには当時の映画先進国であったフランスからエクリプス、エクレール、リュクス、ドイツからビオスコープ、イタリアからチネス、イタラ、コメリオ、アンブロージオの各映画会社が参加し、アメリカからはヴァイタグラフが参加していました。

ただ、今日的な形式に近い国際映画祭として最古のものは、イタリア・ベネチア市の観光対策の一環で、隔年開催のベネチア・ビエンナーレの映画部門として1932年に始まったベネチア国際映画祭です。

ベネチア国際映画祭は、イタリアのベネチア本島の南島に位置するリド島のホテル経営者ヴォルピ公爵らの主導で始まり、夏期のバカンスシーズン後も滞在客を呼び寄せるために毎年8月末から9月初頭に開催されています。

1930年代後半にはファシスト政府の介入を受けてベネチア国際映画祭は次第に政治色を強め、国威高揚のための政治的なイベントとして利用されるようになりました。

そのため、これに対抗するかたちで非政治的な映画祭として、フランスのカンヌ国際映画祭が構想されたのです。カンヌ映画祭は、もともと1939年からの開催が予定されていましたが、第二次世界大戦が始まったために開催延期となり、第1回目の映画祭が開かれたのは1946年になってからのことでした。

ベネチア国際映画祭もカンヌ国際映画祭も高級リゾート地の観光誘致と絡めて開始されるという特徴を有していますが、観光名所で開催するという特徴は、1944年から2年間だけ行われたスイスのルガーノ映画祭や、1946年に始まったロカルノ国際映画祭にも共通しています。

1940年代中ごろから50年代にかけて、ヨーロッパ各地にはさまざまな映画祭が誕生しています。1946年には旧社会主義圏における初の映画祭であるチェコスロバキアのカルロビバリ国際映画祭が開始されました。カルロビバリ国際映画祭は1959年以降、隔年開催となり、モスクワ国際映画祭と交互に開催されるようになります。

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