見出し画像

映画祭のマネジメントの研究4:上映作品の傾向と開催地とのベストな関係とは

上映作品の種別による分類

映画祭は、どのような範囲の映画を集めて上映するのかという、上映作品の種別によって分類することもできます。大きく2つに分ければ、幅広い作品構成で上映が行われる総合型映画祭と特定の専門ジャンルに特化した作品を上映するジャンル型映画祭があります。

総合型映画祭は比較的大規模な映画祭に多く見られる類型です。例えば、カンヌ国際映画祭やベネチア国際映画祭、ベルリン国際映画祭、モントリオール国際映画祭、東京国際映画祭などは総合型映画祭になります。

それに対して、ジャンル型映画祭は、中規模以下の映画祭に多く見ることのできる類型です。ホラー映画やSFなどのファンタスティック映画を中心に上映するスペインのシッチェス映画祭や、サイレント映画をテーマにしたイタリアのポルデノーネ無声映画祭などが例としてあげられます。

ジャンル型映画祭よりさらに作品を絞り込んだもので、特集上映や回顧上映に人的な交流やイベント性を加えたものをテーマ映画祭と呼ぶこともできます。これらの映画祭の多くは、監督や俳優など映画にかかわる人々またはある種の映画傾向に焦点を当てています。

例えば、1949年にフランスのビアリッツで開催された呪われた映画祭は、それまで正当に評価されてこなかった映画作家たちの作品を集め、上映した歴史的なものでした。

テーマ映画祭は日本においても数多く行われています。過去のものとしては、ダニエル・シュミット映画祭(1982年)やサミュエル・フラー映画祭(1990年)、レンフィルム祭(1992年)、マキノ雅裕の映画祭(1985年)などが例として挙げられます。

これらの映画祭のほとんどは、カルチャー・センターや各地の美術館あるいはシネクラブや有志の集まった実行委員会によって行われますが、配給会社や広告代理店が新作公開のためのプロモーション活動として行うものもあります。

開催地による分類

映画祭は、どこで開催されるかによって分類することも可能です。都市で開催するものを都市型映画祭、地方で開催するものを地方型映画祭と呼ぶことにしましょう。

映画祭は自国の宣伝や文化の交流と同時に、観光や地域経済の振興策にもなるため、リゾート地が映画祭を開催し、観光客誘致の呼び水とすることも少なくありません。例えば、カンヌ国際映画祭やベネチア国際映画祭、湯布院映画祭などは地方のリゾート地で開催されており、地方映画祭のカテゴリーに属します。

これに対して都市型映画祭としては、ベルリン国際映画祭や東京国際映画祭、ニューヨーク映画祭などを挙げることができます。

上映作品の種類と開催地の種別とを2つの軸とすると、映画祭は4つの象限に分類することができます。このなかで、総合型映画祭とジャンル型映画祭とを比べると、予算の少ない地方映画祭にとっては、ジャンル型映画祭のほうが取り入れやすいといえるでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?