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敏腕週刊誌記者が選ぶ「この記事が凄い」トップ10

 

 今年もいろいろあったスクープ。YouTube「元文春記者チャンネル」で集計した週刊誌記事トップ10のテキスト版を発表したいと思います。ランキングは"NBA調べ"をもとにしました。NBAとは「日本敏腕週刊誌記者・編集者アライアンス」の略で、というのはジョークですが、要は僕たちの仕事仲間やお友達のかたに協力を依頼し集計いたしました。記者のかたがたに緊急でアンケート取材を行い、同時にコメントも集めさせていただきました。

アンケート方式は、各記者にベスト5をチョイスして頂く形で集計しました。(1位は3P 2位は2P 3以下は1Pで集計 *ちなみにこのランキングには僕たちの署名記事は省かせて頂いております)

なお、記事についての推薦コメントは1位のみ頂ています。

スクープ記事は記者の努力の結晶です。どのスクープにも記者の思い入れや熱い思いがあるはずで、ランキングを集計する作業も「この記事も凄いな、惜しくもランキング外か」と思うことが多く、その作業には心苦しいものがありました。現場を走り回った週刊誌関係者のかたがたには、心よりお疲れ様でしたの言葉を贈りたいと思います。

はたして現場の記者、編集者のなかでも敏腕と呼ばれるかたたちは、どのような記事を選んだのか? 

それでは発表して行きたいと思います。

10位 「性行為のたび3万円でアフターピルを…」巨人・坂本勇人選手(33)に元交際女性の親友が告発《LINEに「なかだし? ダメ?」「髪もひっぱりたい」》
(「文春オンライン」 9月記事)


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この記事の特徴は週刊誌記者が記事をとても面白がったことにあったようです。ランキングの一位にあげる記者は少なかったのですが、ベスト5内にチョイスされた記事としては屈指でした。しかも一位以外であるのに、坂本記事にコメントを入れてくる記者が多くいたことが、語りたくなる記事だったということを表しているとおもいます。以下にいくつかコメントを紹介しておきます。(赤石)

《記者の推薦コメント》
「数々の証拠を出して天下に讀賣を黙らせた」、「坂本の制欲の強さは有名だったので意外ではなかったが、その後の野球界からスポーツ新聞の対応が酷すぎて笑えなく、時代遅れの象徴的な業界(野球界とスポーツ紙業界)を見せつけられている気がした」、「ケツアナのインパクト」、「忘れようとしても忘れられない今年一番の流行語。バズりまくるSNS、報道しないテレビという温度差も、時代を象徴していたと思う。忖度で情報を選り分けるメディアからは人が離れる」

9位 岸田内閣新閣僚が事務所費を妻に払っていた! 
(フライデーデジタル 8月記事)

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(説明)秋葉賢也復興相代表を務める政党支部が妻所有の物件に「家賃」を支払い、資産報告書に記載されていない不動産も所有したことをスクープした記事です。書いたのが元文春の後輩の宮下記者。「秋葉の記事はネット×署名でスクープを生み出す新しいかたちのスクープ」とコメントが寄せられました。細かい調査力で執念のスクープを書いた。彼は割と不器用なタイプの記者だったので週刊誌記者としては時間がかかったタイプだと思いますが、このスクープで一躍業界に名を知らしめました。いま秋葉更迭のニュースも盛んに流れているなかで、改めてそのスクープは大きな価値を持ちました。(赤石)


8位 秘書官が“告白” 寺田総務相妻代表の政治団体で“脱税”していた 
(「週刊文春」 10月記事)

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秋葉大臣辞任の流れを作った記事といえるのが文春の寺田記事です。担当したO記者は、ちょうどこの半年前に一緒に取材をしたのだが数字とか法律の話になると目が爛々と輝く異才。政治資金ではなかなか大臣のクビを飛ばせないと言われてきたが、政治資金+所管する総務大臣というコンボで、見事に首を取った。「堅い記事であったが、しつこく第二弾、三弾と打ち続け辞任に追い込んだのはさすが」などのコメントが寄せられました。(赤石)

7位 NHK激震!朝ドラ『カムカムエヴリバディ』主題歌がカネで買われていた 同じレコード会社ばかりなのはなぜか…渦中の「NHK公認プロデューサー」が激白60分
(「女性セブン」 3月記事)

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カムカムのスクープは国会で会長の証人喚問が行われて、維新の馬鹿議員の詰めが甘くて逃げ切りましたが、内部は紛糾するなどNHKを大きく揺るがした記事となりました。理事の若泉氏は退任し、いまはカドカワの執行役員とジャニーズの顧問に天下って、大河の現場でNHK憎しで睨みをきかせるという意外な転身劇も話題になりました笑

若泉氏は出世コースから脱落、当時の藤沢センター長なども居場所がなくなり、裏コーディネーターを引き込んだ木田元局長一派は、冷や飯を食わされといいます。記者コメントとしては「当事者に認めさせてNHKの理事が退任した朝ドラ主題歌買収問題」、「記者の完璧な取材」と、その隙の無い取材を高く評価する声が集まりました。(赤石)

6位 市川海老蔵「SNSパパ活」乱倫の多重交際 役者の新型コロナ感染で大阪公演が中止になった夜、「まん防」も無視して、ノーマスクの深夜デート。人気インスタグラマーはホテルで2万円を渡され
(「女性セブン 4月記事」

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この記事については背景の解説が必須となるでしょう。取材をもとに当時の記事の背景を解説いたします。まず写真も含めて決定的なファクトを揃えた記事であることはいうまでもありません。更に記事のハードルとして、妻の真央さんが亡くなって以降、海老蔵(現團十郎ですが)の「恋愛」なるものは、女性週刊誌の最大の興味であり、そしてタブーでもあったという状況にありました。かつて「男が花なら女は花瓶」という軽薄プレイボーイ迷言を残していた遊び人の海老蔵ですが、がんで真央さんを亡くして以降、「遊んでるのは知ってるけど、それを出した週刊誌側のダメージ」も想定されていたのです。つまり、妻を亡くし育児と仕事に奮闘するシングルファザーに肩を持つ層がいて、週刊誌側が攻撃されるリスクがあったのです。ですので、海老蔵をやるには、「決定的なファクト」と「強いゲスネタ」が必要だったのです。女性セブンは、その困難なミッションを見事にクリアしてスクープを書いた、という部分が記者に高く評価された記事でした。(赤石)

《記者の推薦コメント》
「この記事はメチャクチャ会心の一撃だったと思います」
「20年以上、海老蔵を見てきた週刊誌記者としては、相変わらずゲス中のゲスだった海老蔵に一安心しました(笑)
「独身だし、あの歳でも元気で素晴らしいから。お金で解決しているのも潔い笑」
「よく現場を押さえたなと」

5位 初の「東大天皇」悲願の「紀子さま」が焦燥 「悠仁さま」“赤点危機”で赤門赤信号!? 超進学校の授業に戸惑い 追い詰められ“背伸び”の末の「学業」懸念 他
(「週刊新潮」一連の皇室報道)

S新潮の一連の皇室記事は悠仁さまのカンニング疑惑から皇宮警察の悪口記事まで、どれも読みごたえのある記事が揃っており多くの支持を集めました。以下のようなコメントが寄せられました。(赤石)

《記者の推薦コメント》
「宮内庁も全面的に認め、たしか『悠仁さまは感謝しています』みたいな意味不明のコメントを出したところまで含めて面白かった」
「皇宮警察の記事が面白く、週刊新潮らしい皮肉のきいた皇室ゴシップではないか。『愛子様は時間にアバウトで学校に40、50分の遅刻をする』『秋篠宮は渋滞にハマると小言を繰り返す』など、令和の皇宮警察を通した、皇室のリアルな姿が浮かび上がっていて貴重。彼らも人間なんだなぁと。他にも皇室への悪口が酷くて、あまり笑っちゃいけないし警備上の問題もあるが、読みながら笑ってしまった」
「悪口の中身が面白い。今年は週刊新潮が凄かった」
「週刊新潮の皇室シリーズに拍手を」



4位 ENEOS会長、電撃辞任の理由は“凄絶”性加害だった 「胸を触り、キスを強要」被害女性は骨折
(「デイリー新潮」9月記事)

この記事はYouTubeでも語った通り、世間よりも週刊誌業界内でより評価の高かった記事となりました。玄人受けする記事として4位にランクインしました。なぜ辞任したのか、世間の疑問に答える記事としても優秀だったという声が多くありました。(赤石)

《記者の推薦コメント》
「この手のネタは、選択やファクタやザイテンとかで一行情報的に事前に出て、ほんのり業界内で話題になってからドーンと出るパターンが多い気がするんですが、これに関しては会員制情報誌にもどこにも載らずに、いきなりドーンと出たのでびっくり」
「経済部記者がいくら取材しても掴めなかった退任の理由を見事にすっぱ抜いた。これぞ週刊誌という記事でした」
「唐突な退任の背景を解明してくれた納得感が非常に印象に残っている。世間の疑問にきちんと答えてくれた記事でした」
「取材したときは丁寧で腰の低い姿の印象があったが、記事を見て性加害と聞いて驚いた。その組み合わせの意外性に一票」


3位 スクープ撮 岸田派ホープ・吉川赳衆院議員と“おさげ髪18歳”のパパ活「飲酒」現場 夜景の見える焼き肉店で乾杯。お台場の高級ホテルへ ※女子大生を直撃「4万円のお小遣いをいただいて」
(「週刊ポスト」 6月記事)

 週刊ポストのスクープ記事が3位にランクインしました。議員としては小粒な存在であった吉川氏ですが、岸田派のホープとされていたことや、その後の居座りや税金泥棒的な行動を見るにつれて、「国家議員とは何か?」という大きな問いを社会に投げかける形となりました。そんな解説もありつつ、その下世話ぶりが世間の大きな関心を呼んだという部分が週刊誌記者に高く評価されたようです。(赤石)

《記者の推薦コメント》
「記事が出たあとの吉川のクソすぎる対応や、第二弾、三弾とポストが打ち続けていく感じがとても面白く、まさに飲み屋話として最高。これぞ週刊誌記事!」
「リアルタイムでドキュメンタリー調で展開した吉川議員」
「単純に意外性があって、おもしろかったです。下ネタの下世話な興味と、議員の質の低下を如実に現してくれたという公益性も兼ね備えた記事」
「厚顔政治家ここに極まれり」
「こんなに気持ち悪いおっさんが議員にいたのかと国民に知らしめた意義も大きかった」

2位 山上徹也 伯父が告白150分「父の自殺と母の統一教会1億円」
(「週刊文春」 7月記事)


 歴史を変える事件だった7月10日の安倍氏銃撃事件。そのなかでも、レベルが一つ上の記事を出したのが文春でした。金曜日発生という悪条件(文春は次週の木曜日発売)にも関わらず、新聞テレビが「文春がどえらい記事を入れてくる」と慄いた。まさに取材力の文春を改めて誇示した記事だったといえるでしょう。特に文春記者からの熱い支持があったのが当該記事で、それだけ自信作だったといえるのだと思います。(赤石)

《記者の推薦コメント》
「逮捕直後から統一教会に恨みを持っての犯行と報じられていましたが、それを裏付けつつもより深く、山上の人生に迫った迫力のある記事」
「記者は炎天下のなかガーシーのような日焼け状態。伯父のインタビューだけではなく、以外の部分もめて質、量を圧倒」
「歴史的な大事件のキーマンを真っ先に押さえて、発売まで囲い込んだということが凄い。ストレートニュース取材の王道で、週刊誌の真骨頂」

1位 美人ホステスの下着をはぎ取り匂いを… 「香川照之」銀座高級クラブでワイセツの裁判記録
(「週刊新潮」 9月記事)

文句なしの1位となったの週刊新潮のスクープでした。まさに週刊誌の虚像を剥ぐという醍醐味に溢れた記事だったということで、アンケート集計では断トツの1位となりました。多くを語るより、記者の推薦コメントを読んで頂いたほうが記事の価値がわかるのではないかと思います。(赤石)


《記者の推薦コメント》
「トヨタさえも香川を使うのをやめてしまった文句なしのスクープ。なぜ今頃…と、いぶかしむ声がネットでは散見されたものの、そもそも週刊誌の記事というものには常に怪しさがつきまとうもの。怪しさも含めて今年一番の芸能ネタの大スクープ」
「口が固いはずの銀座の歴史を変えた新潮の香川照之。オリジナリティと破壊力で大物俳優のペルソナを剥がした香川照之に一票」
「今年は性加害告発オンパレード、その集大成記事」
「何よりも写真のインパクトが強烈でした」
「2週目に新潮が文春に圧勝したのが印象的。写真のインパクトも凄かった。」
「スキャンダルには普段のイメージとのギャップに読者が驚き話題になるケースが多く、記者もこれが最高のパターンと考えるもの。もう一方でこいつ、実はこんな奴なんじゃないのと思っている人がそのまんまのスキャンダルを起こす、腑に落ち系、カタルシス系というのもあると思う。香川のはまさにカタルシス系だと思う。ドラマで二面性を持つキャラを最高にうまく演じていたが、銀座のクラブでまさにそのまんまだったという。ホステスの髪をつかんだ表情がドラマで顔芸と言われる悪役のときそのまんまというのが凄かった」


まとめ

 ベスト10に並んだのはいずれも世間を驚かせたスクープばかりでしたが、それ以外の記事にも価値あるスクープがたくさんありました。集計作業をして改めて感じたのは、毎年たくさんのスクープを出し続ける週刊誌記事の層の厚さでした。

 今年の特徴としては週刊新潮のスクープが目立った1年だったということが言えるかと思います。これまで週刊文春一強とされていたなかで、ライバル新潮が存在感を強く出したことは印象深いことでした。一方で他の週刊誌もランキング内外の記事で粒ぞろいのスクープを出しており、群雄割拠の時代になったとも言えるでしょう。今年もより多くのスクープで世間を賑わせてくれることを期待して、当記事を締めくくりたいと思います。

 YouTube元文春記者チャンネルでもランキング紹介動画をあげておりますご興味あるかたは動画版もぜひごらんください。(赤石)


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