Akari Hanano

Branding / Direction / Community Architect …

Akari Hanano

Branding / Direction / Community Architect 本業では場作り、ライフワークでブランド作りや文章を書いてます。

最近の記事

「美しい」の研究報告(3月)

Taste愛が美味しいを生み出す 雨の日が続いた3月のある週末、生まれて初めて山梨県を訪れた。甲州の方へ車を走らせ辿り着いたのは山梨県・塩山にあるワイナリー「98wines」。雲一つない空の下、春の風を感じながらいただいた、甲州ワインとゴルゴンゾーラチーズケーキの味が忘れられない。芳醇なワインと甘じょっぱいチーズとのマリアージュ、なんと美味しいものか。静かで開けた丘の上にあるこの場所は、元々は公民館だったそうだ。老若男女問わず多くの人が集っていた場所を改装し、現在は新た

    • 「美しい」の研究報告(2月)

      Tastebrutto 2月の週末、代々木八幡にある「brutto」に訪れた。そこはずっと気になっていたお店。お料理ももちろん美味しかったのだけど、空間がとても心地よかったのが印象的だ。「ライブキッチン」といって、同じテーブルでお客さんは食事をして、シェフは料理をする。そんな調理と食事の境界が溶けている空間が私にとってとても好みで、活気に溢れた雰囲気にその場にいるだけでワクワクする。ちょうど座っていた席が目の前で焼きたてのパンが焼き上がる席で、パンの美味しい香りに包まれな

      • 記憶の寿命について

        「人の記憶に、寿命はあるのだろうか?」 友人とのふとした会話からこんな疑問が浮かび上がった。 記憶は完全に消滅することはないだろう。しかし、過去(例えば幼少期)の記憶をたどったときに覚えている記憶と全く覚えていない記憶があるのは確かだ。どんなことだと覚えているのか?どんなことだとすぐに忘れてしまうのか? 覚えている記憶だと、過去の自分のルーツとなるような出来事はずっと覚えているように思う。初めてお友達のバレエの発表会を観に行ったときのこと、父が買ってきてくれたおもちゃが気に

        • 「美しい」の研究報告(1月)

          Taste食卓の快楽 年始、大切な友人とともに京都にある「canavon」へ食事に行った。1月の京都、突き刺さすような冷たい空気をくぐり抜けてお店に入る。年始の挨拶から始まり、2023年の出来事と会話に花を咲かせながら、美味しい食事をふたりで分け合う。「美味しいを分かち合う時間が何よりも幸せだ」年末年始の休暇中に読んだ「美味礼讃」をきっかけにより一層そう思うようになったのかもしれない。その本の中に書かれていた印象的な一節に「食の快楽と食卓の快楽」というものがある。食の快楽

        「美しい」の研究報告(3月)

        マガジン

        • 「美しい」の研究報告
          15本
        • moment
          3本

        記事

          さいきんのオアシス

          昨年の12月から、9年ぶりに茶道のお稽古を再開した。中高時代は学校の茶道部に所属していたのだが、お免状をいただきあっさり離れてしまっていた。しかし、両足院の坐禅体験に参加したのがきっかけで日本文化の魅力にすっかり取り憑かれ再び茶道を始めることにした。 今は月3回、仕事を少し早く終えて稽古場に向かい稽古に励んでいる。仕事と稽古を行き来する日はとてもおもしろい。ビジネスの生産性・効率化の世界からそっと離れて、どちらかと非効率だが美学に溢れた世界に浸る。同じ世界にいるはずなのに、

          さいきんのオアシス

          moment

          言葉にすることは「救い」でもある。 心に響く言葉に出会った時、自分の感情を言葉にしている時、いつもそう思う。その反面、言葉は凶器にもなりうる。 昨年の2月から、『「美しい」の研究報告』という文章を書き始めた。日常の中で「美しい」と感じた場所・時間・食べ物・本を毎月記録してゆく、研究報告という名の日記のような文章。この文章を始めようと思ったのは、自分の感情をちゃんと言葉に残せるようになりたいと思ったのがきっかけだった。(去年の自分の想いを綴った文章が懐かしい…) 私は昔か

          「美しい」の研究報告(12月)

          Tasteナチュラルワインと優しいごはん 今年最後に出会った「美味しいお店」のお話を。先日、友人と京都にある「MUL」へ食事に行った。キムパと自然なおかずとナチュラルワインのお店。二階建ての小ぢんまりした店内に灯る穏やかな光、柔らかく温かみのある木の色合い、愛らしい絵柄を纏ったお皿の数々。雰囲気、お料理、器含めてとても好みなお店だった。ワインは好きだし飲みたいのだけど、イタリアンとかの重めのお料理だとちょっと疲れちゃう。そんな年の暮れが近づき外食が増えるこの時期だからこそ

          「美しい」の研究報告(12月)

          「美しい」の研究報告(11月)

          Tasteただいま、美味しいお店 食欲の秋と言わんばかりに、美味しいものに沢山出会った11月。その中でも特に心に残っているお店を一つだけ。東京・蔵前にある「anno」での食事が忘れられない。ナチュールワインと日本酒、そして季節のお料理が味わえるお店。完全予約制で、店内の撮影は手元のみ可という情報から、敷居の高い場所なのかな…とドキドキしながら伺うと、まるで実家に帰ってきたような温かな空間が広がっていた。美味しいお料理と心温まる接客。ここにいれば間違いなくいい時間を過ごせる

          「美しい」の研究報告(11月)

          「美しい」の研究報告(10月)

          Taste記憶を美味しくいただくこと 10月は気のおけない大切な友と軽井沢へ。生年月日が一緒の友とお誕生日旅行と題して始まった旅行は今年で二回目。誕生日である12月はお互い忙しすぎるので、全く関係のない10月にただただご褒美旅行をした今年。ディナーで訪れた「ピレネー」で過ごした時間がとても美味しい時間だった。冷たい軽井沢の夜をくぐり抜けると、そこに広がるのは外国の田舎町のホリデーディナーを思わせる温かくも心躍る空間。そして、気さくで丁寧な接客と美味しいお料理。素敵な場所に

          「美しい」の研究報告(10月)

          「美しい」の研究報告(9月)

          Time9月の空に、秋を読む 心身の健康のために、毎朝できるだけ堤防に行って歩いたり走ったりしている。 少し前まで朝6時でもジリジリと暑かったのに、9月に入り一気に秋の涼しさが漂うようになった朝の堤防。 人肌の穏やかな優しい風を心地よく感じながらも、夏の暑さとともに眩しい記憶たちが季節の影に姿を潜めてしまったようでなんだか切ない。 季節の境目に立つといつも、四季がある日本がいいなあと思う。たとえ一つ前の季節に悲しいことがあっても新しい季節が全て掻き消してくれるような、新

          「美しい」の研究報告(9月)

          「美しい」の研究報告(8月)

          Taste淡路島の恵みたち 広い海を背中に、坂を登った先にある美しいレストラン。 淡路島にあるLA CASA VECCHIAでランチをいただいた。淡路島で採れたお魚、自家製の果物、自家製粉で作られたパスタ。食材だけでなく器も全て淡路島で生まれたもので生み出される空間。一つ一つに思いが込められたお料理に愛と情熱を感じた。大阪生まれ大阪育ちの私は、幼い頃から頻繁に淡路島に訪れていて、その地を知ったつもりになっていたけど。淡路島にはまだまだ知らない魅力が眠っているのだ、と気付

          「美しい」の研究報告(8月)

          「美しい」の研究報告(7月)

          Tasteほぐれる、を味わう 7月の休日。友人と共に鎌倉にある「enso」へ行った。ensoはOSAJIが展開する食と香りを体験できる場。真夏の鎌倉にひっそりと佇むこの場所は、時の流れがゆったりと流れ、優しい木の匂いが空間を包む。そこで味わう地元・鎌倉の食材をふんだんに使ったお料理たち。一つ一つ口に運ぶたびに笑みが溢れ、自分の中の凝り固まったものがゆっくりとほぐれていく。自然と会話も穏やかになる。美しい食体験は、料理だけでなくそれが出される空間の質によって左右されるのだ、

          「美しい」の研究報告(7月)

          「美しい」の研究報告(6月)

          Taste美味しい季節 仕事終わりの一杯が美味しい季節がやってきた。先日、東京・代々木にある飲食店「寄」に行ってきた。食とカルチャーが融合した東京のイケてる立ち飲み屋。食だけでなくファッションアイテムやレコードが販売されていたり、アートも展示されていたり。明るい時間からサクッと飲めるのもいい。テラス席ではペット同伴OKらしい。この街の人々の理想が詰め込まれたような場所。ビール片手に楽しそうに会話するお客さんたちの声が音楽のように心地よく空間に華を添える。心地よい、日曜日の夕

          「美しい」の研究報告(6月)

          「美しい」の研究報告(5月)

          Tasteゆっくり味わい、溶けていく お天気がナナメな5月のある日。滋賀県高島市にある古民家カフェ「スズノイエ」に行ってきた。 大阪から滋賀に移住したご夫婦で営まれていて、田園風景の中にぽつんと佇む可愛らしいお店。扉を開けるとすぐ右手には洋菓子が並ぶショーケース。キラキラきらめく美しいケーキたちが眩しい。靴を脱いで店内に上がると、木の床のぬくもりがじんわりと足を伝っていく。お手洗いを「厠」と表記しているのも愛おしかった。 店内は程よい感覚で席が配置されてて、窓の外には田

          「美しい」の研究報告(5月)

          「美しい」の研究報告(4月)

          Taste人気店の最後の味 4月末で閉店の「二甲料理店」へ友達と行ってきた。 二甲料理店は大阪・新町にある西洋料理店。細い路地を抜けた先のビルの1階に佇むその場所は、味はもちろん雰囲気も心地よく、センスも良い。飲食系雑誌では「センスのいい酒場」として取り上げられたりしていた。そんな飲食店はすぐに人気者になり、過去何度か足を運んだときは大体満席で入れない。とっても繁盛しているお店。そんなお店が3年の月日を経て4月末で閉店した。今後は飲食のコンサル会社を立ち上げ、別の飲食店とし

          「美しい」の研究報告(4月)

          「美しい」の研究報告(3月)

          Taste数mlのための特別な儀式 3月の週末、大阪・中之島にあるワインバー「su il soffione」へ行った。1階がワインショップ「il soffione」でその2階にあるバーだから「su(=on the)」。 モダンな内装と、温かな照明、夜が深まるにつれて店内が賑やかになっていく、とっても素敵なワインバーでいろんなワインに出会う夜だった。 私はワインが好きだ。 「赤?白?」と選んでどんなワインが来るだろう…と待つドキドキ感。 選んだワインのことを説明してもら

          「美しい」の研究報告(3月)