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近況六個(古着屋/ふさわしい言葉/夢/行きの電車/片付け/ライブで一緒に)


近所の古着屋さんの店先に「絶対着ないけれどなんか欲しいな...」という服が、ちょくちょく目を惹くようにかけられている。

サンバ衣装の頭飾りのような装飾が施されたロンT

クーピーを見ずに取ったかのように合わない数色のレモンの輪切り風刺繍が両サイド縦二列に入ったYシャツ(種に当たる部分は生地がくり抜かれている)

誰かがアパートのベランダに立っている写真がプリントされたTシャツ

毎回迷って買わずにいて、誰かに買われて無くなる。
残念と良かったが半々の気持ちになる。

着た人とすれ違ったことがない。近所で見かけてもおかしくないのに。

「絶対着ないけれどなんか欲しいな...」で、手に入れる選択をして、部屋で眺めて「やっぱ着ないな」と笑っているのかもしれない。



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ふさわしい言葉が見つからないな

という言葉が写真に添えられているツイートが、いいねで流れてきた。

誰かに言葉を見つけてほしいわけではない、「ふさわしい言葉が見つからないな」という言葉がふさわしい写真なのに、リプライや引用リツイートで深ぶった浅いタイトルを付けている人が大勢いた。

落書きをしないでくれよと思ったけれど
黙ってリツイートやいいねをしている人のほうが遥かに多いのを見て、落書きではなく埃に思えたのでよかった。



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夢を見た。

三人で暮らしていて、飼っていた大きめの動物が亡くなって、私以外の二人がその肉を生で食べて、私は味付けして焼いて食べて、他の二人に「食肉として美味しく食べるのは弔いじゃない」といったことを言われる、夢を見た。

(言われた言葉が聴こえているわけではなく、そう言われたと脳が認識している感じ。夢に音や匂いは無い。色はある。鈍いけれど味や痛みを感じることもある。)

いつも見る夢は、その日にあったことが少しずつ摘まれて元になっているのに、この夢の元がひとつも思い当たらなかったので不思議だった。



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行きの電車でスピッツを聴いた。

仕事へ向かう移動時間は考えたり確認したり探したりする時間だけれど

早めに家を出て 天気が良くて
急行ではなく各停に乗って
スピッツを聴きたい気分になった

「なんでもいいぞ」とシャッフルにしたのに
「これは今じゃないぞ」と二曲飛ばすの勝手だな

ラベンダー色のマスクをしている人がうとうとしている

連ねて書けるような目に留まる光景は無いかときょろきょろした時点で終わり。



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仕事の詰まった数日がひと段落して、家に帰ってすぐ寝て夜中に起きて、部屋を片付けようと思えた。

玄関におろして置いたままのフリップと鞄を戻して、財布に千円札を二枚補充して、ぬるい炭酸を飲み干して、すすいで台所に置いていたペットボトルを潰してごみ袋に入れて、顔を洗って、出しっぱなしにしていたドライヤー類を戻して、フリップ作りの残骸を捨てて、フリップ作りの道具を戻して、外して置いたままのマスクを捨てて眼鏡を戻して、洗い物をして、玄関の靴を仕舞って、テレビ台の埃を落として、床のキルトラグにコロコロをかけて、録画を消化しながら洗濯物を畳んで、朝になった。


部屋が少しずつまともになっていくさまがホームスケイプみたいだなと思い、ホームスケイプが家事みたいなんだと思い直した。


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普段ライブで一緒にならない方たちとライブで一緒になった。

普段ライブで一緒にならない方たちとライブで一緒になったとき、人生が交差して、またしばらくは交わることがなくても、いつかまた交わるんだろうなと思えて、せつないような、ちりりとあつい気持ちになる。約束こそしていないけれどまた会えると感じられる嬉しさ。

よくライブで一緒になる人たちとライブに出ているときの嬉しさは、じんわりあたたかい気持ち。遣われる敬語も遣う敬語も河原の石のように角がとれている。同期とのため口は言わずもがな。

どちらも楽しく、ありがたい日々。続いてほしい。



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