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感謝の意味

さてさて商業演劇の世界に飛び込んで新鮮だったこと…それは、小さい頃からテレビで見ていた芸能人の方々が私の日常に現われること。

当たり前なんだけど、不思議な感覚。
そして皆さん大御所と言われる方ばかりなだけに本当に優しくて懐が深くおおらかでいらっしゃる。

基本的に私達ダンサーは、歌謡ショーのみ出演することが多いのだけれど、選抜でお芝居にも出演させてもらえる事もあった。

お芝居に出演させてもらうと普段、交流のあまりない役者さんとお話し出来たり、大御所の方とも仲良くして頂いたりと楽しい時間を過ごす事が出来る。

芝居は時代劇なので、私の役は芸者や花魁などが多い。お化粧は白塗りシャベ化粧をする。
そして自分の出番が終わると、次の歌謡ショーのために洋物のお化粧に化粧替えをすることになる。背中までジャベを塗る時はお風呂に入ってお化粧を落とす。忙しくも毎日が楽しくて、私の舞台人生の中で充実した幸せな数年間だった。

私はこの商業演劇の世界で、本当に色んな経験をさせて貰った。

大阪公演だけでなく、名古屋の御園座、福岡の博多座など地方都市の公演にも出演させてもらえた。
劇場近くのウィークリーマンションに1ヶ月半ほど滞在し公演をするのだが、公演が終わった後は、それぞれの土地の美味しい食べ物を食べさせて貰ったり、休演日には少し遠出し遊びに行ったりと、舞台以外にも沢山のイベントがあり楽しくて仕方がなかった。

特に北島三郎座長の公演はどこの土地でも、毎日満員のお客様で劇場が熱気に包まれていて、座長の偉大さを感じた。

北島三郎座長公演で一番印象的だったのは『感謝』と言う言葉である。
座長はこの『感謝』と言う言葉を何度も何度も繰り返してお客様に伝えていた。

フィナーレの舞台セットにもデカデカと電飾で『感謝』と書いてある。

この言葉こそが座長を取り巻くすべての大きなパワーだったのだと最近になって気が付いた。


感謝とは、感謝しなければならないと思ってするものではない。
当たり前だと思う気持ちでいると感謝などと、いう気持ちは生まれない。

私はこの時期(20代後半)自分の容姿や技芸に満足していなかったし、他人と比較して自分に無いものばかりにフォーカスして過ごしていた。
恵まれ過ぎた環境にいたにも関わらず無いものねだりばかりしていた。
当時の私は、この『感謝』にほど遠い考えで生きていた。

今、ある程度年齢を重ねて気付いた『感謝』の本当の意味と素晴らしさ。
座長のような偉大なパワーは纏えないけれど、限りある人生の中で触れられたあの感覚はいつまでも覚えていたい。

そして日々すべてのことに感謝して生きていきたい。




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