【要約】R・クラウス「アヴァンギャルドのオリジナリティ」(1985)

(1)要約

本稿の目的は、20世紀以降発展していったアヴァンギャルド芸術がオリジナリティという要素を求めたことを考察するものである。この考察では、ロダン彫刻の複製制度を指摘し、新しさを求めるアヴァンギャル芸術の作品にはオリジナリティを見出そうとする試みであることを明らかにしていく。ここでいうオリジナリティとは、「形式的な発明というよりは、生命の源を指示する有機体論的メタファー」であり、「根源的な無垢」をもったものであると主張する。「起源(オリジナリティ)としての作者(自己)は、「再生と永続的自己算出の潜在的能力」を持ち、新たな芸術と過去の伝統的な芸術を区別する方法であると主張する。

彼女は、アヴァンギャルド芸術のオリジナリティの基礎となる要素として「反復」があるという。例えば、ピカソ、モンドリアン、レジェ、ルウィットらの作品らに反復によって現れるグリッド表現がみられることを指摘する。グリッドには、作品の自律性、純粋性を表現として表しながらも、表現として柔軟性に欠けており、発展性を感じさせない表現でもある。しかしながら、パラドキシカルな意味をもち、絵画の上に絵画を再現=表彰することによって「グリッドは、ロダンの鋳造作品のように、論理的にマルティプル、すなわちオリジナルなき複製の体系なのである」ゆえに、複製と反復はそこに不在であるオリジナルな存在を見る側に意識化させる、「オリジナルを基礎付ける条件である」。

このようなアヴァンギャルドやモダニズムにおけるオリジナリティを求める特徴は、19世紀頃に確立したものであると述べる。彼女は、J・オースティン『ノーサンガー・アビー』における風景がをめぐる議論を例えにだし、プクちゃれすくの特異性を主張する。絵画における特殊な風景を、特異性をもった作者の表現によって決定されることを明らかにしている。絵画における鑑賞者がまたみたこともない風景の先行性と、その表現の現実的な反復がピクチャレスクの特異性には必要であると指摘する。

そして、19世紀からの、芸術が求めるオリジナリティと反復の関係は、写真表現において根源(オリジナリティ)を問いかけるかたちで現れている。それは、シェリー・ラヴィーンの写真表現が代表される。著名な写真家の写真作品を撮影し、作品化する試みは、写真表現及びオリジナルプリントに対する批評的態度をとるものでもある。このような試みは、脱構築的な表現でありモダニズムの延長でもなく、アヴァンギャルド芸術とも考えられないだろう。彼女の試みはポストモダニズム的である。したがって、根源とオリジナリティという関係を脱構築するポストモダニズムは、モダニズムの脱神話化を試みでもある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?