死ぬな 研ぎ澄ませ 行け 走れ!

生命体/星野源
 笑う 何言ってんの
 はて 気づくと
 選ぶのは 生き様と地平
 君の胸が描いた 走路 
 飛び立て 荒野
 踊るように

 星野源が好きだ。
 星野源の歌には、必ずざらりとしたワードが混ざる。悲しみ、寂しさ、苦しみ、孤独、死の匂い…避けては通れない人間のマイナスな感情や歪み、いびつさがさらっと暗示される。どんなにポップな曲調でも、だ。でも、この人は決して世界を、人間を諦めない。難しさや苦さ、辛さに対して斜め上のアイデアを示すのだ。雨が降ったら雨の音で踊ればいい、と。1人は越えられる、と。どちらかではなく私は真ん中を行く、と。歪みもいびつも、カッコ悪さも下手くそさも、全部全部受け止めて、"この世は生きるに値する"と力強く歌う。ざらりとしたワードを歌う一方で、コントラスト強く、生きる歓びを歌うのだ。
 この曲「生命体」は世界陸上のテーマソングとして書き下ろされた。所々に〝走る〟というモチーフが出てくる。この曲でもまた、荒野を行く人々の背中を押している。人に言われた道でなく、己が決めた走路をただ走れ!と。荒野というくらいだからきっと簡単ではないだろう。でも、きっと、自分で選んだからこそ楽しんで、踊るように進んでいけるはずだ。
 「正解はない」ということは、実はちょっと苦しい。問い続けるのはしんどい。でも、自分は手放したくない。だから私は選んだ道を正解にすると決めている。そんな時、星野源の『生命体』はグッと背中を押してくれるのだ。
 "死ぬな 研ぎ澄ませ 行け 走れ !"
 だから私は星野源が好きなのだ。

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