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おすそわけ日記 267「とんでもないことでございます」

私は今、今月中にこなさねばならない課題に取り組んでいる。それは「我が家のスマホとキャリアを、どうするの!?」問題。重い腰を上げ、三日がかりでAppleと携帯電話会社二社に問合せの電話をかけることにした。

今日が二日目。今のところ、親切丁寧に対応して頂いていて、大変ありがたい。電話中、ある言葉を聞いて、私の感動スイッチが入った。

それが「とんでもないことでございます」


昨年末、トラブル続出の引越しの為に、様々な手続きで何十回も電話をかけた時のこと。

私は外面がいいので、企業の電話応対の担当者と競うほどに腰が低い。まぁ、競う必要はないのだが、言葉の使い方はきちんと丁寧でありたいと願う。そんな私が、この言い回し、初めて聞いたなぁと驚いたのが「とんでもないことでございます」なのだ。

「とんでもございません」ではなくて、「とんでもないことでございます」


最初に聞いた時は、その人が丁寧すぎるのかと思っていたが、後に、他の企業でも数人の担当者から同じ言葉を聞き、思わず、博識な友人に尋ねてしまった。だが、友人も知らないと言い、Googleで検索したら、敬語として正しいとのこと。

へー、そうなんだ。

以来、「とんでもないことでございます」と聞く度に、この人は、敬語の使い方がきちんと出来る素晴らしい人だと、感動するようになった。


今日、久しぶりにこの言い回しを聞いて、おー、来た来た!と高揚。もー、とんでもないことでございます、でしょ!?知っておりますよ、わたくしも。のほほほほー。なんて、半可通な若旦那みたいに、ほくそ笑んでいたのだが。

あれ?私、辞書引いてないな、と云うことに気がついた。

山の様な本を引越しで処分してきたが、母のたっての願いで命拾いした我が家の広辞苑。持ってきて、よかったな。


調べてみたところ、「とんでもないことでございます」は見つからず。まぁ、敬語の辞典じゃないからね。じゃあ、もう少し、言葉を短くしてみよう。「とんでもない」なら、ある。

【とんでもない】「でもない」の転。(以下、略)

ふーん。でもない、って、何?

【とでもない】「とんでもない」に同じ。(以下、略)

これ、辞書でよくある、ループしちゃうやつだね〜。じゃあ、そもそものって何なの?

と【途】みち。みちすじ。

なるほどね。

みちを、ことわりであったり、人としての道であったり、そういう方向で捉えてのでもない、とんでもないになったんだろうかと、勝手に解釈して納得する。

広辞苑では「とんでもないことでございます」自体には辿り着けなかったが、思わぬ収穫があったので、よしとしよう。


引越しの準備で疲れ果てている時、母と一緒に面白可笑しいイントネーションで「とんでもないことでございます」と言い合って、二人で笑っていたことが、頭を過ぎる。

「とんでもないことでございます」が、我が家にもたらしてくれたものは、実は、はかりしれないのだ。

なーんて、電話で口にしたら「とんでもないことでございます」と恐縮されたかもしれない。



【今日の一枚】タイトルの写真、及び、本文の一部は『広辞苑 第五版』新村 出 編、岩波書店、1998年刊から引用しました。

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今日もおつきあい頂いて、ありがとうございます。

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