一途

歌声から感じた熱:猫アレルギー(猫田中P) / “一途”


今回紹介する作品は、猫アレルギー(猫田中P)さんの「一途」です。

深く吸い込むブレスからはじまり力強い高音で、音街ウナはこう歌います。

貴方のそばにいさせて
貴方の声をきかせて
寂しい夜を照らす笑顔をみせてよ

この歌の主人公(私)は、“貴方”が好きで、私にとっては暗い夜を照らしてくれる光のような存在であることがわかります。

ずっと ずっと ずっと ぎゅっとしてよ
わがままなんて言わないから

貴方の負担になんてならないから、ずっとそばにいたい気持ちが伝わってきます。

“わがままなんて言わないから”でドラムが入り、盛り上がって、一度無音を挟みます。そしてギターの音が右左繰り返し響き渡って、そっと添えるようなハイハット、それに合わせて歩くような速さでぽつぽつと語るように、歌います。

溜息のようなブレスのあと、こう綴られます。

夕焼け空の帰り道
分かれ際で立ち止まる二人の時間
永遠なんてものがあるなら
なんて…
交わる事の無い分かれ道
二人で同じ道を進めば良いのに
どうして貴方はそっちを選ぶの

茜色のひとときが、ずっと続くと思っていました。でも、同じ道を歩み続けることは、難しかったようです。

時の流れは残酷で
人の心はみえなくて

“みえなくて”を二回繰り返して、盛り上がるサビを予感させます。サビの前に無音を挟み、印象的だった冒頭のまっすぐなサビが歌われます。

ここで、歌の音に注目してみます。サビと比べて「夕焼け空の帰り道~みえなくて」の部分は、低い音で歌っています。この部分が静だとすれば、サビは動でしょう。この対比が上手くできているからこそ、思いが爆発しているサビを耳に心にその音を刻んできます。

また、低い音の音街ウナにあたたかさを感じてしまうのは、私だけでしょうか。実は、本作で使われているVOCALOID「音街ウナ」には、二つの声質があります。甘くて可愛い声質の「Sugar」、元気で力強い声質の「Spicy」、おそらくこの曲の低い音で歌っている部分に「Sugar」が、サビの高音域を「Spicy」が使われていると思います。

本作の静と動(曲のメリハリ)には、楽器の音数とこの歌声の質の違いによって表現されています。

あと、私はブレス(息継ぎ)の音も一役買っている気がします。歌もののブレスなんて気にしない方も、多いとは思います。私自身が学生時代合唱部だったこともあって、ブレスの位置だったりブレスの仕方だったりが気になってしまうのです。

また、ブレスを必要としないボカロが歌っている作品に、ブレスがあるとブレスの意図を探してしまいます。

本作のブレスをぜひ注意して聴いてみてほしいです。

ボカロに人間のような歌唱を求めない方もいらっしゃると思います。私が求めてるのは、届けたい音に合ったボカロの音です。

本作「一途」は貴方への一途な思いを歌い上げています。だから、ブレスがあるし、ギターに負けない力強い歌声やそれが映える優しい歌声の対比で表現していると感じました。

また、ラストのサビで、オクターブ下で“言わないから”と静かに歌い上げて余韻を残すように、曲が静かに終わっていくのも好きです。もう一度聴きたくなります。

最後に、この曲は、静と動交互にを繰り返しています。音作りもシンプルです。一見ありきたりな曲なのかもしれません。

でも、私はこの作品が好きです。一度聴いてから、歌声に熱を感じてから、頭が離れなくなったのでレビューを書いてみました。

この作品で音街ウナちゃんの歌声がより好きになりました。

ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

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