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そんなことも知らないの

視界の片隅で薄い色のカーテンが揺れる。生温い風が頰を撫でる。言葉の切れ端だけが遠くから聞こえてくる放課後の教室。
耳には僕のために話す先生の声。耳の外側では金管楽器が基礎練をしている。
「これはこうで、これはこうだ。」
「へー、はい。」
机に広げたノートと教科書。僕と教師しかいない時間が流れる。チャイムの音がいつもより大きく聞こえる。消しゴムで文字を片付けるたびカタカタと机が音を出す。
「えー、これはこうで、これはこうだ。」
「うんうん。」
この繰り返し。分かっていても分かっていなくても頷く。
気づけば暗号が頭を叩く。知らない場所なのに次は右でその次は左だよと道案内される。「そもそもここってどこですか。」
恥ずかしくて言えない。そんなこと言うと冷笑の的になるような気がして。
問題を理解することより、この時間が終わることを目的としてしまう。別のことを考え出す。
消しゴムなんて使わなくても元々空っぽだ。

昔から、こういう一面がある。
一対一で人から何かを教えられる時、とてつもなく面倒くさくなることがある。
最近こういう感情になったのは、バイトの研修中とかかな。これって僕だけなのかな。
基礎的なこと聞くと、それは“常識”だよと揶揄される気がして聞けなくなるんだ。
この国では(他の国は分からないけど)、誰かをマウンティングしないと満足しない人が多いのを知っているから。それが嫌で仕方ない僕のような人間から見た“生きづらさ”がそこにはある。

#エッセイ #学校 #同調圧力

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