消極的ユーザーへの体験設計

消極的な人よ、声を上げよ。......いや、上げなくてよい。
ー「消極性デザイン宣言」

そのタイトルに興味を惹かれて一気読みしました。
これがよかった。自分の感じていた違和感をデザインで解決しようとしている。

わかる、わかるなあ。
服を見ているだけなのに求めてもないおすすめをしてくれるショップ店員と話さざるを得ない空気も、合コンという恋愛対象としてジャッジメントされるような空間で2時間以上も強制的にコミュニケーションを求められるとか、スマホの画面をのぞいているのかのぞいていないのか電車の隣の席の人の視線が気になる…。

「でも、嫌だなんて言えない」

消極的人間の行動をテーマにデザインを考えてみると「ユーザーのため」という言葉に懐疑的になる必要性があることがわかってきました。

「わかりやすさ」という強要

ユーザーインターフェースといえば、ユーザーが「使いやすいこと」「目的の導線に導くこと」「行動を促すこと」を指標にしていますね。

たとえば、アプリケーションを軽い気持ちでダウンロードしただけなのに有料プランを強要され、ログインするたびにポップアップでおしらせが表示される。

「新機能が追加されましたー」
「このステップで活用しようー」

ユーザー側になった時に、不自然なコミュニケーションに設計者側の強いエゴを感じてしまって、いつか解放される日が来るだろうと期待して時に頑張って使い続けることもある。そうでなければ二度と開くことはない…なんて経験ありますよね。

ペルソナというユーザー像を描くことになり、ユーザーのモチベーションレベルをいくつかに分解するとします。

設計者は自分の思い通りに動くユーザーが好きです。しばしばサービスに対して熱量の高いユーザーを理想的なプロセスで歩ませた感情曲線を張り出して「カスタマージャーニーで設計しました」ということが起きる。消極的なユーザーのプロセスに関しても、理想と実際の行動イメージとが結びついていないか、多くの消極的ユーザーがないがしろにされているような気がしてならず、葛藤した経験が何度もありました…。

「わかりやすい設計」とは「早くわかってくれ」という下心があってされる設計なのではないか。すぐにわからないものを「わかりやすく理解させよう」とユーザーに対して強要している。

実は「ユーザーのための設計をしている」と大声で言いながら、おせっかいにもユーザーに精神的な負荷を強いていると気づいていない可能性があります。

たとえばですが、イベントに参加してたまたま端の方で固まっていると主催者が心配して「コミュニケーションを取れるように」と突如自己紹介タイスをスタートさせようとする。「そうじゃないんだよな…」

強引にコミュニティに引き込むのはユーザーのモチベーションにそぐうでしょうか。

モチベーションの設計

一方で、インタラクションデザインについて考えてみたいと思います。
インターフェースデザインが「操作のデザイン」であるのに対して、インタラクションデザインは「使おうとするためのデザイン」。機能のアクセスのしやすさから生活の中で機能することを考える。重要な設計使命は「人のモチベーションの設計」になります。

インタラクションデザインとは、1990年、IDEO創立者ビル・モグリッジが製品を通してそれを使う人々をつなぐ、あらゆる分野に用いられるこれを「インタラクションデザイン」と呼び始めたことから広まっていきます。
インタラクションデザインに関してまた別で取り上げてみたいと思います。

ここでの「消極的」はネガティブな意味ではなく、積極的な人に比べ刺激に敏感になりやすい人々としています。
そこで彼らにとってどんなデザインが最適かを、書籍を参考に特に重要だと感じたポイントをピックアップしました。

1. 「ついで」を設計する

普段私たちは「使いやすくするために」身近に置くなどしてアクセスしやすくするわけですが、行為の接続がしやすい製品やサービスが提供できるかどうかを一つ判断軸として持つことをします。
例えば、メールアプリに接続されたタスク機能、Twitterの友達フォローによりレコメンドされる投稿をお気に入りに保存する機能。それぞれアプリを開いたタイミングでついでに操作しようとされる可能性を持ちます。

2. 起動すると認識させない

「起動」したと感じさせない工夫が必要です。
Apple製品は非常に上手に設計されています。たとえば、iPhoneはデバイスを傾きを感知してホームスクリーンが起動します。FaceIDで検知しスクロールでホーム画面を開くことができます。
待ち時間は「起動」状態を意識させます。待つ時間のストレスだけでなく、無意識にこれから使うのだというハードルを作っています。

3. 自由自在であること

Googleメールの設計にもあるような「半モーダルビュー」はまさにそれを表しています。画面の右下でメールを入力しながら、別の操作が可能になっています。また、iPhoneでは一度起動するとバックグラウンドで起動した状態になっています。シームレスに操作させることによって「起動する」「終了する」といった感覚を持たせることなく自由な行き来を実現しました。

さいごに

デザインとして「わかりやすい」「使いやすい」設計が良しとされる傾向を感じ、少なからず私自身もそれを意識して言葉にしていましたが、少し懐疑的になって「わかりやすければいいのか」という視点を持つ必要を考えています。

個人に向けてデザインすると、結果はそのデザインが対象とした人にとってはすばらしいが、他の人には合わないものになる。活動向けにデザインすると、その結果はすべての人に使えるものになる。主なメリットは、デザインの要素が活動と調和していたら、人は複雑さに耐え、何か新しいものを学ばなければならなくても我慢するだろう。
ー「誰のためのデザイン」D.A.ノーマン

サービスを使う理由は彼らの行動の観察から始まり、観察をし続けことでしか真実はわかりません。
人間には「思っていること」と「思っていると思っていること」の2面があり「言葉はウソをつく、行動は真実を語る」。

日常的に出会うのは、ほとんどが既知の事物のバリエーションですから、それらの記憶と瞬時に照らし合わせて概念として美しいと思い込もうとする。 目の前で起きているこれは夕焼けなんだから、よって美しいに決まったものなのだと思い込もうとしている自分に気づいた経験はありませんか。
ー「塑する思考」佐藤卓

自分は思っているほど自分のことを理解していない。

ユーザーのことだけでなく、自分自身のことすら理解できていないことに気づいていない。それを自覚するタイミングは少なく、自分が一番自分をわかっていると誤解してしまう。

そして、ユーザーは設計者が考えるほど強い意志を持っていない。そもそもサービスに高い期待を持って利用し始めているでしょうか。いつのまにか自分の熱量がまさってしまい、そんなことを忘れてしまう。

消極的ユーザーへのアプローチを無視して、積極的ユーザーを獲得することはできないと考えています。インターネットという無限に広がる世界の中で、自分の居心地のいい空気を選べるようになっている。通りすがりの誰かに触れてみてもらうためにユーザーとしての感覚を失わずにいられるか、問い続けなければと考えさせられました。

盲目になっていると自覚することから始めませんか。


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yoshikawa akane

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