THE 戦闘員 最終話
【仮面バスターと最後の闘い】
とある採石場にて。
小野剛と仮面バスターは対面している。全身タイツに覆面、戦闘員の正装でそして並々ならぬ気合いをもって、仮面バスターを睨みつけている。一方、変身はしているが今にも鼻くそをほじりそうな態度で、仮面バスターはその場にいる。
仮面バスター「お前か?俺にこんなもん送り付けてきたの?」
くしゃくしゃの果たし状を掲げた。
剛「そうだ」
仮面バスター「なんだ、ただの戦闘員じゃねーか。本当にお前一人でやるの?」
仮面バスターは辺りを見渡す。
剛「ぜひとも」
仮面バスター「やめときなって。いいから怪人呼んでこいよ」
剛「一人であんたを倒す」
仮面バスター「…。ヒーローは弱いものイジメしないんだわ。帰るわ」
仮面バスターは帰ろうする。
剛「逃げんのか、鬼瓦!」
その一言は仮面バスターを止めるに十分だった。
剛「ヒーローとは思えない名前してんなー。ヒーローが地下アイドル好きってどうなんだ?お前は地下アイドルを応援してるかもしれないが、おそらく向こうはお前を応援してないと思うぞ」
仮面バスター「テメー殺す」
怒り心頭の仮面バスターはその勢いで向かってきた。
剛「やべ、ちょっと言い過ぎた」
小野剛は構える暇なく、仮面バスターの膝蹴りが入った。小野剛が倒れる前に左右のパンチ、そこからの回し蹴り。圧倒的だった。
仮面バスター「しまった。怒りに任せてやってしまった。ただ、お前が悪いんだぞ」
仮面バスターは帰ろうとする。その時、気配を感じた。振り返る。
剛「まだだ。来い」
仮面バスター「仕方ないな」
小野剛は瞬きをしたら地面に大の字になっていた。話しにならなかった。それはそうである。仮面バスターと戦闘員一人。こうなることは最初から決まっていた。小野剛は空を眺め、
剛「やっぱり、仮面バスターは強いわ。正利、ごめんな」
小野剛は目を閉じた。脳内で息子の姿が次々映る。
「パパー」
楽しかった思い出が蘇る。
「パパー」
妙に声がリアルだ。
「パパー。頑張れー」
小野剛は目を見開いた。
「正利」
小野剛は自然と立ち上がっていた。
剛「お前何でこの場所が?奈緒子に聞いたのか?」
正利「違うよ。偶然」
剛「偶然か」
正利「ここ家の帰り道だから」
剛「そういえばそうだな。久しぶりにお母さんのところ、よかったか?」
正利「うん。でも僕、斎藤嫌いだな」
剛「なんで?」
正利「あいつの目、エロすぎ」
剛「お父さんもそう思うわ」
親子で笑った。
仮面バスター「俺のこと忘れてるよね?」
剛「あー、ごめんごめん」
仮面バスター「で、何か復活してるし」
剛「よーし、行くぞ、仮面バスター」
正利「パパー、やっつけろー」
小野剛は仮面バスターに向かっていく。しかし、全く歯が立たない。それでも小野剛は倒されては起き上がり、向かっては倒され、起き上がっては向かった。何度も何度も繰り返した。
剛「くそー。全然敵わない」
仮面バスター「なんでこんなに立ち上がれる?」
仮面バスターの息はあがっていた。
剛「教えてやろうか?俺は今、息子のために闘ってるからだ。あいつの作文真実にしたいんだ。本当は倒れていたいけど、息子が腰を持ち上げるんだよね。あんたは何のために闘っている?」
仮面バスター「もちろん、世界の平和のためだ」
剛「そんなわけねーだろ。何が世界平和のためだ?地下アイドルのためって方がよっぽど説得力あるわ。だからお前はあんな小手先の攻撃しかできないんだよ」
仮面バスター「なんだと?ならこれでもくらえ」
仮面バスターは大きく飛んだ。
仮面バスター「バスターキーーーークッ!」
必殺のバスターキックが小野剛に炸裂した。
仮面バスター「どうだ」
剛「こ、これが、バスターキック。やばすぎる」
小野剛は倒れる。
剛「さすがにもう動けねーや」
遠くの方から声が聞こえる。
「あなたー」
剛「奈緒子」
「小野さん!」
剛「斎藤君」
「小野君!」
剛「蜂男さん」
「ヒー!」
剛「戦闘員のみなさん。なんでみんなこの場所が?」
蜂男「偶然だ」
剛「偶然なんだ。こんなにたくさんの…すげー偶然だよ。全くもって立ち上がるしかねーじゃねーか」
小野剛は再び蘇った。
仮面バスター「なんなんだこいつは?なんでだ?なんで戦闘員ごときが」
剛「戦闘員を一食反にすることが間違ってるんだよ。戦闘員の中にも強い者もいるし、頭のいい者もいるし、エロいボディーラインの者もいる。戦闘員だって一人一人違うんだよ」
「雑魚キャラ舐めんなよ!」
仮面バスター「戦闘員が生意気なことを」
もう一回あの必殺技を。仮面バスターは空高く飛んだ。
小野剛は全く動かない。
仮面バスターはロックオンした。
「バスターキーークッ」
小野剛目掛けてキックが一直線。
小野剛は全く動かない。
途中でキックを止めた。
「勝負はついていたな」
仮面バスターはそう言って、去っていった。
そして小野剛は倒れた。
「パパー」
そして10年後。
とある採石場にて。
仮面バスターVSサタン軍団。
正利は戦闘員になっている。正利一人で仮面バスターと闘っている。蜂男、他の戦闘員は後ろで見守っている。
正利は仮面バスターに圧倒している。仮面バスターは一方的にやられている。
「とぅ!」
正利は空高く飛んだ。
「戦闘員キーークッ!」
仮面バスターは吹っ飛んだ。そして人間の姿に戻った。
「クソ。覚えてろ」
仮面バスターは逃げていった。
闘いが終わり、斎藤と着替えている。
斎藤「いやー、今日も圧勝だったな。俺数えてたぞ。パンチ8発、キック1発。しかも最後のキックは変身を解かしたから、9万だぞ。9万円。すげーな、正利」
正利「どうも」
正利は戦闘服をハンガーに掛け、きれいに手入れしている。
斎藤「なんだよ、お前、仮面バスター圧倒してんだからもっと喜べよ」
正利「まあ」
戦闘服を手入れし続けている。
斎藤「お前まだ、そんなボロボロの服着てるのか?稼いでるんだから新しいの買えるだろ?」
正利「いや、これがいいんです」
破れた個所にハートマークのアップリケが。
正利「じゃあ帰ります」
左右出店が立ち並ぶ商店街を、颯爽と歩く一人の男がいる。ジーパンに革ジャン、そして指なし手袋。彼の名は…。
小野 正利。
年齢は18歳。職業は、地球の平和を守る仮面バスター、を倒す秘密結社サタンの戦闘員である。
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