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*醤油を仕込んで醤油を知る! 発酵マニアは醤油も自家製!


3月半ばになると、毎年醤油を仕込むという習慣ができた。
醤油仕込みを始めたのが2014年。
これまで数々の失敗を経験した。
醤油麹になるばすの大量の大豆と小麦が納豆になったり、
成りくさしの麹で醤油を仕込んで
発酵も腐りもしない訳の分からない液体を作ったり…
無駄にした大豆と小麦はもったいなかったが、なにせ教えてくれる人がいない。
この経験は避けては通れなかったと諦めるしかない。
けれど、この経験のお陰で、醤油麹を仕込むのに適しているのは
日中の気温が15〜20度前後になってくる3月半ばから終わりにかけて(地域によって異なる)だということが分かってきて、
毎年この季節になると醤油を仕込むという習慣になった。


さて、醤油の仕込み方であるが、まずは大豆と玄麦で醤油麹をつくらなければならない。
その醤油麹を作る上で難しいのはやっぱり温度管理だ。
米糀と違って大豆は発酵熱が上がりやすく、しかも
醤油麹菌は40℃を超えて2時間ほど経過するとどんどん死滅していく。
そして納豆菌にとって居心地の良い環境になり、いとも簡単に納豆が出来上がる。
なので、発酵中の3〜4日間は、いつでも品温を確認出来るよう時間を空けておく必要がある。
自身で発酵熱を上げるので、特に保温機などもいらない。
必要なのは、大豆と玄麦と時間である。

絞り前の醤油

醤油麹の仕込み方

材料

乾燥大豆2キロ  玄麦2キロ   醤油麹菌15g(材料の2%以上)
   水(麹の量の1.1〜1.2倍)
   塩(出来た麹の量+水分の18%)  塩と水は仕込み時に使用

大豆を茹でる


茹で上がった大豆


大豆を前日から洗い浸水させておく。15~18時間程度。
Point① 浸水させた大豆を半分に割ってみて、中に凹みがない程度まで。

大豆を水から茹でる。柔らかくなるまで。
Point②潰すわけではないので、味噌ほどに柔らかくなくてよい。

玄麦を炒る



大豆を茹でている間に玄麦を炒る。
麦がプクッと膨らみ、香ばしく焦げ目が付くまで。
ガス火のフライパンで30分程度かかる。
焦がさないように、中火で。

炒った小麦をフードプロセッサーで砕く。荒さはまちまちでよい。

砕いた小麦が冷めてから、篩で細かいものを100g程取り、そこに麹菌をよく混ぜ込んでおく。こうせん=麦こがし、という。
少ない種麹菌を大豆にまんべんなく振りかけるため増量剤となる。

醤油麹の種菌と炒って砕いた玄麦

種麹菌を混ぜる


大豆が茹で上がったら、ザルで水分を落とし、40度以下に冷ます。
Point③ 麹菌は40度を超えると死滅していくので気を付ける。
冷ました大豆と砕いた小麦をよく混ぜて、作っておいた麦こがしを全体によく混ぜる。

保温する


これを10Kg用米袋2枚に分けて入れ、
暖かい場所(保温気、コタツの中、電気毛布、湯たんぽなど使用)に入れておく。
発酵熱が上がるまでは空気を抜くように丸めて塊にし、
熱が上がりやすい状態にしておく。
発酵熱は6時間後くらいから上がり始める。
40℃程度になってきたら、40℃以下に冷ましてから
丸めなおして毛布などで包んでおく。
Point④保温の温度を下げるなどし、温め過ぎないように気をつける。

一番手入れ


18時間後、大豆に白い菌が生えている。
温度確認。品温が30〜35度がベスト。40度を超えると麹菌が死んでしまい、納豆菌が繁殖し始める。
Point⑤40度を超えても、2時間以内に冷ますことが出来れば菌は生きているようなので、小まめに温度をチェックする。

大豆が固まりになっているので、ほぐしながら酸素を入れ、温度を下げてあげる。
保温をやめ、米袋を切って開け、中の麹を平らに広げ(2~3センチ厚程度)、熱がこもらないようにする。

夜間は気温が下がるので、発酵熱も上がりにくくなる。
うちではコタツの中に入れ、温度は低めで、気温によっては
コタツカバーを薄手にしたり、かけないでおいたり調整している。

二番手入れ


四角い餅箱に広げた米袋のまま入れ、管理している。


29時間後、⑨と同様に行う。菌は白から黄色っぽく成長している。
この間、小まめに(2時間おきくらい)温度は確認するが、
温度が高くて冷まそうと混ぜすぎると、菌にダメージを与えてしまう。
表面積を広げたり、扇風機をかけたりと対応する。

出麹



45〜48時間後、黄色の菌が鶯色に成長してしれば出麹。
それより時間がかかっても、手入れを続けながら鶯色になるまで待つこと。


醤油仕込み

材料

出来た醤油麹  水(麹の量の1.1〜1.2倍)   塩(出来た麹の量+水分の18%)

計算する


出来た麹の量を測り、水分量を計算する。
麹量4300g×1.1〜1.2=4730〜5160㎖(5000㎖とする)

次に塩分の計算をする。
麹4300g+水5000㎖=9300g
9300gの18%で塩1674g

塩切り

出来た麹と塩を混ぜておく。

仕込み


まんべんなく混ぜた塩と麹を、仕込み用の樽に入れ、
水を注ぎよくかき混ぜる。

酸素が入るように晒しなどで蓋をし、冷暗所に場所に保管する。

天地返し

塩が沈んでくるので、天地返しする。
同じ大きさのタルが二つある場合は、ボウルで上面をすくい、移していく。
タルが一つの場合は底の方からよくかき混ぜる。

仕込んで3日目、1回目の天地返しし、

以後、1週間に一度天地返しを1.5ヶ月間行う。

塩が溶けたら日の当たる屋外の暖かい軒下などに移し、
月1回の天地返しを10月まで行う。
Point6天地返しを行うことで、表面に生えやすいカビの発生を抑え、
酵母菌に酸素を供給しながら、乳酸菌と酵母菌が繁殖しすぎないよう調整している。
(詳しくは、ぬか床仕込みで記載予定)

カビチェック


梅雨時や夏場は表面にカビが生えやすい。
カビが生えていないか適宜チェックする。
白カビは酸素が好きなので、表面をひっくり返し、空気を遮断すれば死滅する。あまりカビが多ければカビのある部分を取り除く。
Point⑦白いカビに毒はない。緑や黒いカビが生えてしまったら、あまり混ぜ込むことはせずに取り除く。


醤油麹を作る際、米糀と違って、たんぱく質の多い大豆は雑菌が好み繁殖しやすい。
発酵熱が上がり始めたら、下手に保温するよりも、温度を下げる事を考えてあげた方が上手くいく。

一度、4月に入ってすぐに仕込んでみたことがあるが、気温が高く、品温が上がり過ぎて、いとも簡単に納豆になってしまった。
かといって、気温が低すぎても発酵に時間がかかりすぎるので、住んでいる土地の気候を考慮して、適切な時期を見計らう必要がある。
初めて仕込む人や自信がなければ、材料を半量まで減らしてもよいだろうけれど、
少なすぎても品温が上がいにくくなる。
たぶん、この分量が家庭で作るには作りやすいように思う。
あとは経験でカバーしてみてね。

水分が蒸発し、絞りを待つ醤油

毎年小麦を畑で栽培しているので、醤油用に保管しておき、
仕込みの時期になったので確認してみると、全てネズミに食べられ無くなっていた。
もう、今日仕込もうと思っていたので愕然とした。
ふと思い出した。ネットで醤油の仕込み方を調べていた時、小麦粉で仕込んでいた人がいたことを。
他に手がないので、やってみることにした。
確か、炒りもせず、粉のまま使ったと思うが、なんとも問題なく醤油麹になり、1年後にはちゃんと醤油になった。
玄麦がない人はお試しを。

玄麦 みなみのかおりを使用している


自宅で味噌は仕込んでも、醤油を仕込む人は少ないかもしれない。
なにせ、味噌と違って失敗のリスクは高いし、
時間も手間もかかる。
昔ながらの本物の醤油を買う方が安くつくかもしれない。
そこまでして、自宅で醤油を作る必要はないかもしれないが、
仕込み好きさんには何とも言えない魅力があるというか、
初めてしまったらやめられなくなってしまった。
醤油を自宅で仕込むことを特におすすめしたいわけではないが、
仕込み好きな方であれば、一度経験してほしいな、とは思う。
発酵食品のいろはが詰まっているような、そして、
巷で販売されている食品の不思議などが見えてくる、得難い経験になるだろう。

 

しょうゆこうじをしこむのはさくらのはながさくころやで

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