本のレビュー「アラフォークライシス」

読んでいる間に涙が出てきました。
NHKクローズアップ現代取材班の「アラフォークライシス」。

今日書店で目に止まって早速購入。この本の主人公は就職氷河期世代に社会人になった現在35歳から44歳くらいの世代、1974年-1983年生まれと書いてある。私は1981年、大学2004年卒業だけど、体感では就職氷河期は私の学年までかなと思っていた。というのも、私の年には応募していなかった企業の採用が次の年には再開していたり、私の年には嘱託職員しか採用していなかったのに、同じ業務を次の年は正社員で採用していることがあったので2005年はちょっとましになっているのを感じたからだ。おまけに同学年の女性でフライトアテンダント希望の友達が多数いたけど私の年は採用がJAL, ANA共になくて、留学して一年遅れた友達は採用があってJALに入ったという記憶があるからだ。

とにかく仕事探しでは理不尽な思いをした。小学生高学年までテレビをつければ世の中バブルで、大人になったらこんなに楽しい世界が待っているのかなと思っていたら、自分が受験戦争という思い出しても暗くなる期間が終わりやっと大学に入って卒業するタイミングになると、世の中不景気で新卒採用をしていないという時期だった。

もちろん同級生には大手の会社に就職した人もいるけれど、他の年に比べたらとても狭き門だった。景気がいい年に20人採用している会社がこの年は2人とか、もしくはなしとか。

新卒で入った会社はその年に正社員採用をしていなくて、嘱託職員としての採用だった。1年働いて、次の新卒が入ってきたらそのときは正社員採用があって同じ仕事なのにはじめから給料が3万ほど高かった。やってられないと思った。

面接に行けばバブル世代かそれより上の年代のおじさんに、なんで会社を辞めちゃったの?なんで正社員で働かないの?と言われるし、家族も親戚も理解してくれなかった。

この本にいろんな人のエピソードが出てくるけれど一番味方であってほしい家族から、「おまえの努力が足りないからだ」とか「どうしてフラフラしているんだ」と責められるのは本当に辛いと思う。時々ニュースでこの世代の娘、息子vs 親でどちらか刃物で殺人事件を起こしたという話があるけれど、一番わかってもらいたい人にわかってもらえない辛さが原因だと思う。こういうニュースを見るたびに、どうして娘、息子が生きてきた世代という観点からニュースを分析しないんだろうと思っていた。

同じ世代を見渡して安定しているのは、公務員か看護婦さんなど資格を持った職業の人、民間に入ったけど大変で途中から教師などに転職した人、安定した職業の伴侶を得た人、親の援助がある人。

それ以外の人はこの理不尽な状況に、社会がこんなにひどい仕打ちをするならば自分でどうにかするしかないともがいている。私も日本の会社で働くことは20代イヤだと思い、だからこそどうにかしないととカナダに行って自分の仕事を模索して、今は個人事業主だけど私の顧客の大半は海外の人。日本社会とは無縁の仕事をメインにしている。同世代の友達は飲食店オーナーだったり、美容師さんだったり、自分でどうにかしようとしている人が多い。

いくらこの就職氷河期世代、「アラフォークライシス」を叫んだところで、他の世代の人は関心は持ってくれていないし、「そりゃ大変だったね」の一言で終わってしまうと思う。

でもこの本の最後に書いてある通り、学校を卒業して社会に出たタイミングの景気によって人生を大きく左右されるような仕組みのままでいいのか、このまま何も変えなかったら日本全体の問題にもなる、同じようなことが違う世代にも起こりうる。

あんまりこの問題をいうと負け犬の遠吠えみたいだし、どうせ誰も聞いてくれないのだけど、少なくともこの本を読んで「大変だったね、よく生きてきたね」と慰められた気分になったし、大学卒業していままで理不尽さを感じてきたのは私だけじゃなかったんだと慰められた。

願わくばみんなに読んでほしい。一番読んでほしいのはこの親世代70代前後、上司世代60代前後、そして本人たち40代前後。

主人公の世代はいままで家庭や会社で非正規の職歴や行動を「自己責任」として責められてきたし、本人たちもそう思っていると思う。だからいままで個人の問題として発信してこなかったと思う。こういう本が出されて、NHKのクローズアップ現代でも取り上げられて、やっと自分だけじゃなかったのかと思える。本当はこの世代はもっと連携すべきだ。思いを共有できるのは同じ世代だけだ。連携して助け合って、いい方向に影響できればいいと思う。

日本の新卒採用も、年功序列も、社会人採用の少なさも、30代以上の特に女性のシングルに対する強い風当たりも、一度すべて打ち破りたい。










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