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ひらかれた新刊書店(推薦図書)

本は好きだが漠然と「推薦」するのはむずかしい。
というのも、相手あってのことだから。

例えば、私の周囲には理系修士の会社員が多く、おススメするのであれば、と考えてみる。
仕事と直結させずに娯楽として読みつつ、なにか感じてもらえそうな、「バッタを倒しにアフリカへ」を手渡すだろう。


例えば、もし私のように、このまま会社で働き続けることに違和感を持ち始めた人にならば、「LIFE SHIFT」を挙げるかもしれない。

書きながらamazonを開けてみると、どちらもカテゴリー1位だった。
メジャーな本たちだ。

本題に戻る。

今回は、上述の本たちよりもマイナーなものを紹介しようと思う。

どんな仕事がしたいのか、どのように生きたいのかわからず、もやもやしていた時に、とてもしっくり来た本があった。

「本屋、はじめました」辻山良雄

本は好きだし、なにやら自立する響きにあこがれる。
なぜ、本が売れないこの時代に書店を始めようと思ったのか?
そそられた。
それに、応援している出版社・苦楽堂の書籍だ。

著者は書店員としてLIBRO(リブロ)に勤め、マネージャーとして池袋本店の閉店まで思いを果たした。
その後独立し、新刊書店を開業する経緯が、物語のように1本の芯を持ちながら、つづられている。

本のある空間から受ける静謐なおもむきが連想される文章。
時折のぞかせる人間味や信念が彩りとなっているように感じた。

仕事をとおして培ってきたもの、人とのつながりが、お店のカタチに自然とつながっていく。
理想的だと思った。

開店までの準備は、パズルのピースを探しているようで、そこにも縁があり導かれるようでもあり、ストンとはまっていく。
かといって運任せでも神頼みでもなく、戦略と計画と地道な作業があってこそのもの。

これから新刊書店やなんらかの店舗をはじめよう、という人の参考にもなるだろう。

全編をとおして。
自分が本屋になりたいとか書店員になりたいという気持ちとは少し違うが、
こんな空気感の中に生きたい、こんな風に社会と関わっていきたい。
と、しっくりきた。
同時に、それを実現させた著者の生き方にあこがれた。

夏に、東京荻窪にあるその店舗へ出かけた。
「Title」という本屋さん。

本から受ける印象そのままの、静かで柔らかな空間。
日常の一歩先にある知識への足掛かりとなる本たち。
また訪れ、ゆっくりと次の本を吟味し、奥のカフェでもくつろいだ時間を過ごしたい。

ぜひ、カバーをめくってみてほしい。
出版社の細やかな気遣いが感じられる。

苦楽堂らしい、これまた細やかな「しおり」。