見出し画像

StationTV Linkとおしどり夫婦

仕事で使っているMacBookでテレビを見るために、StationTV Linkを購入した。
インストールするだけでテレビ番組や録画した番組をパソコンで見ることができるアプリである。

フリーランスでライターをしていると、仕事の9割は家の中での作業になる。残り1割が取材での外出だ。
加えて現在、通信制の大学で学んでいるためにレポートを書く時間も必要で、ここ数年間はほぼ引きこもり状態で暮らしている。
そのため、BGVとしての番組、ネタとして役に立つ番組、そして大学のレポートにいずれ繋がるであろう番組を主に録画している。もちろん、単に見たいから録画しているものもある。

その全てが、夫の好みと合っていない。

そして夫は、TV好きの自覚がないTVウォッチャーである。
いや、男性の多くはTVとリモコンが目の前にあったら、ザッピングしないではいられない生き物だと、世の男性には申し訳ないが私は認識している。
グーグルの検索で「男性 テレビ」と入れると、自動的に「男性 テレビ好き」と変換されるのを見ると、あながち性差別的な思い込みではないと思う。
アラン・ピーズ+バーバラ・ピーズ氏も、著書『話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く』の中で、確か「男性にとってTVのリモコンとは、世界を手中に収められるツールである」的なことを書いていたではないか。うろ覚えだけど。

で。

本当に集中したい時には、私は一切の音をシャットアウトする派だ。
庭から聞こえる風や車の音はむしろ効果的なので、テレビとラジオを消して窓を開けるのが理想的な空間と言える。

が。

夫にとっては、目が覚めている間はTVを付けているのが当たり前。
朝から寝るギリギリ直前まで、それはそれはまるで湯水のようにTV番組を流し続ける。寝る前の歯磨きをしながらヘビーメタルを爆音で聴いている時もある。
これまであまりテレビを付けっ放しにしなかった私の脳は、数時間も経つとまるで源泉掛け流しの湯に浸かり続けたような状態になり、ぼんやりとして思考回路が鈍くなってしまう。

これはマズイ。
しかもそれが今、毎日続いているのである。
お盆休みだから?
いや違う。
夫が、有休消化の時期に入ったからだ。

夫とは年の差があり、私よりだいぶ先にリタイアの時期を迎えた。嘱託の提案も断って、すっぱりと仕事から身を引いたのだ。

つまり、今のテンションがこの先数十年続く可能性を考えなければならない状況にある。
どうする私。戦うか?いや戦わずして勝利を手中に収めなければ。

夫とは仲が良い方だと思う。多くの夫婦同様、数々の衝突を経てこの境地へたどり着いた。
この峠へ至る道は生半可ではなく、同じ苦労をもう一度繰り返す気力はもはやない。

どうにか穏便に、互いのペースと空間を上手に作れないだろうか・・。

最初の一手として、私は仕事スペースをリビングから母屋へ移した。
まず一つ解決である。

次の課題は、自分用のHDDに日々たまり続ける録画番組だ。このままではろくに消化できずに早晩メモリが限界を迎えてしまう。見たいものが見られないフラストレーションも予想外に重かった。
試しにTV専用のアプリをダウンロードしてみたが、今使っているレコーダーが対応しておらず、私用のHDD内に録画された番組の一覧は覗けるのに再生ができない。見えるのにいじれないせいで、余計ストレスが溜まってしまう。

TVチューナーを買うか?アプリが使えるタブレットを買い足すか?とも考えるが、そこまで投資するほどの必要はさすがに感じられず、葛藤しつつ調べているうちに、StationTV Linkにたどり着いた。

決してレビューは良くはない。ただ価格が3,000円弱とお手頃だ。
下手すると捨て金になる・・という懸念もないではないが、実際にMojave10.14の環境でそこそこ問題なく使用できている人がレビュー内にいた。

一晩悩んだ。
そして翌日、TVのリモコンに触れられない状況がいつも通り繰り返されて決意した。

よし、買おう!

結論を言えば、五分五分の使い心地である。
ローディングで引っかかると何時間も開けない。開けても度々接続が切れる。
それでも、調子が良ければ少しずつでも見られるので胸のつかえはだいぶ楽になった。

これで、長年頑張ってきた夫が好きなようにTVを見ながら、人生で初めて手にしたフリーな暮らしを満喫することができ、私も仕事環境を確保しつつ録画番組を消化することができて、互いのストレスは軽減される。

なるほど、現代のおしどり夫婦には、愛や気遣いには頼らない最新のITツールが必要らしい。

ついでに スマホ用のリモコンアプリもダウンロードした。
夫には残念ながら「妻がリモコンを操作する」という前提がないようで、リモコンは常にテーブルの向こう端、つまり私の手が届かない場所に置かれていて、膝に猫が眠っている時はリモコンにどうしても手が届かず、なんとももどかしい気持ちにさせられるのだ。
「取って」と言えば良い、と思われるかもしれないが、そもそも「取って」と頼んで私がチャンネルを変える機会は、夫の前ではほぼ皆無と言っていい。
それほどにチャンネル権は、うちの場合夫にある。

しかしこれもアプリであっさり解決した。
爆音の中で夫がうたた寝をした時には、スマホでさっと音量を下げることができるようになった。これは大きな成果である。
うん。買ってよかった。ダウンロードしてよかった。

人生100年時代に突入した今、長い長い道のりを歩調を合わせて歩くには、夫婦それぞれのペースを確保するのも大切なこと。
私たちは、実際にはおしどり夫婦と言えるほど睦じいわけではない。ケンカもすればすれ違いもやらかす。
それでも、便利ツールがあれこれと手助けをしてくれる世の中ならば、その力を借りて残りの人生でゆっくりそこを目指すのも悪くはないのかもしれない。





この記事が参加している募集

買ってよかったもの

読んでくださった皆さまに心から感謝を。 電子書籍「我が家のお墓」、Amazon等で発売中です! 知ってるようで情報が少ないお墓の選び方。親子で話し合うきっかけにどうぞ^^ ※当サイト内の文章・画像の無断転載はご遠慮します。引用する際には引用の要件を守って下さい。