クリーム白玉あんみつミニ

日記のような、作り話のような、いつかの夏の、ある日のこと。

※何者かにでもなったつもりで書いた、いつかの夏の、ある日のできごとを元にした、日記のような、作り話のような読み物です。お時間のある時の、暇つぶしにでも楽しんでいただけましたら幸いです。

ある夏の暑い日、
私は1人、電車に乗っていた。

友人と約束をしていたのだが、
急なトラブルで、キャンセルになったのだ。

田舎暮らしの私は、
連絡をもらったその時にはもう
家を出ていたので、
もう、なんか、そのまま一人でも
出かけてしまおうと思ったのだ。

なんだかんだ平和に電車を乗り継ぎ、
目的の自由が丘駅へ着いた。

駅から5分程歩くと
右手に、趣のある庭園と屋敷が見えた。

田舎者の私は、東京といったら…
自由が丘といったら、都会!オシャレ!
という印象を持っていたため、
なんというか…このような、
歴史の深そうな雰囲気の建物が
あるというイメージがなかった。

面積は広くはないけれど、
とても落ち着いて、
その空間内に違和感もなく
綺麗に収まった
とても素敵なお店だった。

中に入るとお座敷が。
窓際は、庭園を見ながら
スイーツをいただけるという
贅沢空間。

お店の人気メニューは
「クリームあんみつ」。

周りの人も、ほとんど
クリームあんみつを
注文している様子だった。

お店の名前が入った抹茶白玉ぜんざいも
大変に魅力的で迷ったが、
クリームあんみつに決めた。

出来上がるのを
ワクワクしながら待つ間、
庭園を眺めていた。

こんなにゆったりとした
時間を過ごせるのは、
人生であと
どれくらいあるんだろう。

そんなことを思いながら、
風に揺れる、
まだ青々とした紅葉を眺め
青空を眺め
夏の強い日差しを受けても
めげずに生きる
植物たちに想いを馳せてみた。

※以下、脳内再生

(さわさわ…※風の音)

紅葉「やぁ…今日も暑いなぁ。
   空なんてあんなに青く広がって、
   真っ白のもくもく雲、夏らしい。
   綺麗だなぁ。」

地面「夏らしいのはいいんだけどよぉ。
   こうも暑くっちゃ、たまんねぇよ。
   君たちみたいな背の高い木は
   葉っぱもあるし、いいかもしれないけど、
   俺なんてあれだからね、
   直!!直で直射日光!!
(あっ頭痛が痛いみたいな表現になっちゃった)
   地面からの照り返しで…とか言うけど
   照り返しよりあっついんだっつの
   こっちは!!ってことだからね!!」

紫陽花「まぁ、まぁ、そう言いなさんな。
    私もね、もう、こんな枯れた姿になっちまいましたけど。
    ほら、季節はね、巡ってくもんで、
    ここ、日本にはね、四季ってぇゆう、
    素晴らしいもんが、あるってぇ、証拠っていうかぁ、ねぇ。
    そういうことだから。
    この暑さも、まぁ、そう。
    いいもんよって。ねぇ。」

地面「まぁ、真冬に大雪が降って、
   辺り一面、雪に覆われるよりは、
   マシかぁねぇ。
   あん時ゃ、俺ぁ、
   一人で埋もれてもう、
   死ぬかと思ったわ。
   誰に話しかけても、
   みーんな、雪が、吸い取っちまうんだからな。
   あんなに静かに降って、
   すぐ溶けちまうもんなのに、
   なんだろうなぁ、恐ろしかったなぁ」

紅葉「1つ、1つ、結晶が降っている様子は
   それはそれは、綺麗なんだけど。
   積もり積もって、いっぱいになると、
   途端に重くなって、全てを包む
   というか、飲み込むような、感じだよね。
   美しいものは恐ろしいとは言うけれど、
   雪もまた、そうな気が、するよね。」

紫陽花「あん時ゃ私も、覚悟したねぇ。
    あの、ほら、去年だっけねぇ?
    ここいらにも、いーっぱい、雪が、
    積もった時の、ねぇ?
    ここ10年以上は、降っても
    ほっとんど積もらなかったってんだに、
    急ーに、あんな、ねぇ。
    30cmは、積もったかねぇ?」

つつじ「やぁー、あれにゃぁ、ほんっとーに、
    おっどれぇたねぇー?
    もう、おれぁ、こんの腕、
    ボキっ!っと、折れちまうんじゃぁねぇかぁと、
    思ったわけよぉ。」

小石「思った!」
草「思った!」
たぶんいるだろうクローバー「ボキッと!」

小石、草、クローバー「大変だった!」

シダ植物「おめらすたらこっつ言ってんけぇ、
     オラだってんっとやんべかったんだぁよ!」

小石、草、クローバー「やんべかった!」

地面「やー、どう考えても1番やべかったのは
   俺じゃね?1番下にいるし。
   真っ暗だし。マジ恐怖。何も見えないし。
   真っ白なのに真っ暗ってね!
   知ってる?」

小石「真っ白なのに!」
草「真っ白じゃなかった!」
クローバー「真っ暗!」(草にかぶせ気味に)

小石「真っ白なのに!」
草「真っ白じゃなかった!」
クローバー「真っ暗!」(草にかぶせ気味に)

地面「断続的または継続的に与えられる苦痛より、
   なぁーんにも無い方が、精神って、病むらしいよ?」

小石、草「らしいよ?」

クローバー「イキってるー!!」

小石、草「イキってるー!!!!!」

突然現れたきのこ「ドヤってる!」

地面「!!!?っるせー!!んっとに怖かったんだからなっ!!
   みんな、誰もいなくなっちまったのかと思って、
   俺、ほんと…っここに、独りぼっちになっちまったのかと…っグスっ」

小石、草、クローバー「グスッ」

きのこ「

「お客様、お待たせいたしました。」

ハッ!!!

店員さんが、ちょっと不思議そうな顔で
こちらを見ている

私は1人で庭の植物たちの会話を創造して、
ニヤニヤしてしまっていたのだ。
最後なんて、地面が辛くも可愛いこと言い出すから、
ちょっと涙腺緩んだし!

いかんいかん、想像力豊かか!!
妄想が捗りすぎた…

「コト…」
目の前に、お茶と、
お待ちかねのクリームあんみつが、置かれた。

なんて美しい盛り付け…
このお庭とお店、
この空間に相応しい、
素敵にナイスな食べ物…

(語彙力なさすぎか…?)

すみません、
この素敵空間、
素敵時間を、
表現すべく語彙を持ち合わせていない
未熟で稚拙で愚かな私をお許しください…!!

私は何に謝っているのかわからないまま、
両手を合わせ、
「いただきます」とつぶやいた。

まずは何からいくか…

ハッ!!
季節のフルーツは月によって違うって聞いたな…
今月はスイカか!

突き出ていながらも全体のまとまりを壊さないバランス、
赤という奇抜な色にも関わらず、
和の趣にマッチしているその親和性、
しかし落ち着きのある他の具、器に対し
抜群のアクセントになっているその姿…
最高だぜぇ…っ!!!

たらりと、アイスが少し溶けた。

食べよう。

改めて、いただきます。

まずはこのスイカからいただこう。
シャリ…という音をたてて、
上品な甘さが口に広がった。

この暑さの中、歩いてきたかいがあった。(駅から5分だけど)
もう既に、十分満たされた気持ちであった。

いやいや、本番はこれから!
アイス…
寒天…
みかん…
黒蜜…

ふぅ~…

満足…

ペロリとたいらげてしまった。

美味しかった…

(一瞬ーー…!?)

私はまた庭に目をやると、
先程脳内会話していた植物たちが
こちらを見て、
また会話しているような気になった。

地面「おい…見たか?アイツ、もうたいらげたぜ?」

小石、草「たぜ?」

クローバー「見た見た!」

紅葉「豪快だったね!気持ちいい食べっぷりだったなぁ」

紫陽花「きっとねぇ、よっぽど美味しかったのねぇ。」

つつじ「やぁー、あっちゅーまやったなぁーほぉんと!
    俺も食べてぇー!ってぇなぁ!」

小石、草「なぁ!」

きのこ「デリシャス!!」

私は、庭に向かって、
大きく1回、更に小さく何度か頷いて、
また正面を向き直して、
両手を合わせて呟いた。

「ごちそうさまでした。」

そしてまた、庭に目をやって、
心の中でつぶやいた。

「もともと美味しいあんみつが、
 あなたたちがいてくれたから、
 より一層、とってもとっても、
 美味しかったです。ありがとうございます。」

入ってきた時は、庭に気を取られて気づかなかったけど、
店内には所々、雑貨が置いてあった。
ギャラリーもやっているらしい。

可愛いらしい手作り小物などがあって、
混んでいなければ、じっくり見たかったところだ。

お会計を済ませて、
外に出て、再び庭に向かって、
軽くお辞儀をした。

(シダ植物さん、出番少なくてごめんね!
 最後、出演させるの、忘れちゃったし…!)

庭の植物たちが、
風に吹かれて、少し揺れた。

ちょっと笑ったような、
挨拶をしてくれているような、
そんな気になった。

シダ植物以外は…
(ごめんね…!)

是非、また来たいなぁと、思ったのだった。

都会にひっそりとたたずむ
日本家屋の素敵な甘味処。

そうだ!思い出した!
今は、こういう所は、
「古民家カフェ」というのだった!

…合ってるかな?

由緒正しい古民家という感じだった。

…由緒正しい古民家って何だ!?

突っ込みが来そうな事ばかりだが、
まぁ、そんな考えも、愉快でよろしいと
自分で言い聞かせ、

この綺麗でオシャレで
色んな物が、人が、
たくさん溢れるこの街を
もう少し、散策しようと思った。

(表紙の写真テキスト…クリーム白玉あんみつって入れちゃったけど…白玉は…入ってないんだったなぁ…)


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