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Voice Colors Seriesのこと

 どうしてもこの作品について記しておきたいことがあって。

 制作会社のマリン・エンタテインメントさんから許可をいただいたので、この場をお借りして、書かせていただきます。

 2008年から私が脚本を担当させていただいているドラマCDシリーズ、Voice Colors Seriesに関する裏話ですVCS公式サイト

 このドラマCDシリーズは「幾多の物語・キャラクターをたった一人の声優さんが演じる」という、一風変わったものでした。

 物語の主人公はリスナーである"貴女"ですので、主人公のセリフはありません。登場人物と主人公のやりとりはリスナーに委ねる形で物語は進みます。

 各作品にはそれぞれ異なるテーマに沿ったオリジナルのミニドラマを七話ずつ収録。ひとりの声優さんの七色(作品によってはそれ以上!)の演技を堪能できる希有なシリーズとして好評をいただき、12作品が発売されました。(※先日2014年6月25日に発売された新作『Voice Colors Series〜KISS〜』を加えると全部で13作品になりますが、こちらは恋愛色を強めており、構成も少々異なるため、これまでとは別のシリーズと考えていただいても差し支えないと思います)

 このシリーズは声優さんにとっても私にとっても「挑戦的な作品」でした。

 声優さんは、ご自身が同時に何人を演じられるか? 一人で複数キャラクターのかけあいをするシーンもあるので、皆さんそれぞれに模索しながら演じられていました。収録後に「疲れた」とコメントされる方が多かったのが印象に残っております。(すみませんでした……!)

 脚本担当の私はといえば、主人公はリスナーという縛りのある設定で、いかに自然に物語を展開させられるか? 年齢層や性格の異なるキャラクターを何人生み出せるか? 毎回、制作スタッフさんと一緒に頭を悩ませながら(でも楽しみながら)執筆していました。

 さらに、このシリーズでは毎回、脚本に色々な”仕掛け”を施していました。基本的にはそれぞれ独立したミニドラマなのですが、実は随所に繋がりがあったり、他のVCS作品ともさりげなくリンクしたり、といった具合です。

 中でも、2011年12月21日に発売されたVol.11『憧憬』には、これまでにない、大きな大きな仕掛けを施しました。(前振りが長くなりましたが、ここからが本題です)

実は……

『憧憬』には、隠されたもう一つの物語がありました。

 『憧憬』をオモテとするなら、ウラの物語です。

 これらは最初から表裏一体となるように構成し、「オモテとウラを併せて聴くと、より一層面白くなる」そんな仕掛けを随所に盛り込んで執筆しました。 そしてこのウラの物語は、別の声優さんが担当するVCSとして、あまり日を置かずに発売する予定でした。

 ――しかし、それは実現されませんでした。

 色々な事情があって、お蔵入りとなってしまったのです!         スタッフ一同、「表裏一体となるもう一つのVCSも形にしてお届したい」と共通の想いを抱いておりましたので、悲しくて残念でなりません。

 あ、もちろん『憧憬』は単品でも充分楽しめるように仕上げておりますので、ご安心くださいね!

 『憧憬』をお持ちの方は今一度、改めて聴き返してみてはいかがでしょう? 「この物語のウラでは、どんなストーリーが繰り広げられているのかな?」なんて想像を膨らませながら聴いてみると、また一味違った楽しみ方ができると思います。

 お届けすることがかなわなかったVCSの作品の数々(他にも数作品分、用意していました)。それらは「お蔵入り」の言葉の通り、今も大切に保管されています。ゴーサインをいただけたなら、すぐにでも取り出して執筆をはじめられる――そんな状態で。

 いつか、そんな未来が訪れることを願うばかりです。


                     2014年9月30日 堀井明子 拝

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