ぼくとミャオンと不思議を売るお店 第5章2話

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第5章 こころがモヤモヤ!

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2話

 うわぁ……まただよ。
「シャーッ!」
 大きな猫が、道の真ん中に立ちはだかって、尻尾を思いきり膨らませて牙をむいている。
 ――そう。
 昨日に続いて今日も、ぼくはあの『チョビ』とか『マンマル』とか呼ばれてる大きな猫に道を塞がれてしまっていた。
 違うところは時間帯。昨日は朝。そして、今日は学校からの帰り道だった。
 放課後だから時間に余裕はあるけれど、早く帰ってミャオンと遊びたくて、急いで学校を出たのに……。
 大きな猫の目が、ギランギランに輝いてぼくを見据えている。
「フーッ!」
 うう……1歩、横に移動しただけで、これだよ。
 あとから来た他の学年の子たちも、「わっ、怖い!」「大きな猫!」って、ぼくの後ろで立ち止まっちゃった。
 だよね、だよね! 怖いよね!?
 芽雨さんには昨日笑い飛ばされたけど、実物を見たらやっぱり怖いって思うよね? 迫力たっぷりだもの! ヘタに手出ししたら、絶対にケガするよね!?
 あの猫、一体、どうしてぼくを狙うんだろう? わけがわからないよ。
 うう……どうしたらいいかな。
 話しかけたって、どうせぼくの言葉は伝わらないんだろうし。
 帰りたいけど、このままじゃ帰れそうにない。
 ……はぁ、仕方ないな。
 ぼくはくるりと猫に背を向けて、学校へ戻った。別の通学路から帰るために。

 さっさと下校したはずのぼくが、また学校に戻ったことに、最初に気が付いたのは芽雨さんだった。
 校門のところで、ばったり会っちゃったんだ。
「どうしたの? 忘れ物?」
「ううん。そうじゃないけど。芽雨さんは帰るところだよね。さよなら〜」
 手を振って見送る体勢。だけど、芽雨さんは怪訝そうにぼくを見て「大林くんは帰らないの?」って聞いてきた。
「……帰るけど?」
「『けど』、なに?」
 薄々予想はしていたけど、芽雨さんは見逃してくれなかった。
「……別に?」
「ごまかさないで。一度学校出たのに、また戻ってきた理由を聞いてるんだけど」
 うう、相変わらず容赦ないツッコミ。何て答えよう?
 ぼくが一瞬答えに詰まると、芽雨さんはキランと目を光らせた。(ように見えた!)
「何か隠してる」
「! そ、そんなこと……」
「何も言わないで! 当てるから」
「え」
 芽雨さんは人さし指をおでこに当てると、テレビドラマに出てくる探偵さんみたいに考え込む。そしてひとりでぶつぶつと何か呟いて――。
「理由がわかったわ」
「!!」
 おでこに当てていた指を、ビシッとぼくに向けて言った。
「あの子に会うためでしょう!」
 それって、昨日、ぼくに何だかワケのわからないことを言ってきた、あの美少女のこと?
「ち、違うよ! あの子じゃない!」
 ぼくは慌てて否定した。
「じゃあ、なんなのよ?」
「う……」
 ああ……芽雨さんがイライラしはじめてる。また不機嫌にさせちゃうよ。こうなったら、もう白状するしかない。ぼくは観念して本当のことを話した。
 また大きな野良猫に通せんぼされたってことを。
「……だから、別の通学路で帰ろうと思って」
 芽雨さんはあきれ顔で、大きな、大きなため息をついた。

 結局、今日は芽雨さんと一緒に帰ることになっちゃったな。
 クラスの子たちに見つからないといいけど。
 ぼくがヒヤヒヤしていたら、芽雨さんはジロリとぼくを横目で睨んできた。
「それで、あの女の子は、結局なんだったの?」
 やっぱりね。聞かれると思った。
「だから……ぼくにもわからないよ。昨日初めて会ったんだし」
「本当にぃ? だって、ケンカしてたじゃない」
 芽雨さん、完全に疑ってる。
「ケンカじゃないよ、いきなり一方的に怒鳴られたんだ。見てたでしょ? 話、噛みあってなかったじゃない」
「……そうかなぁ」
「本当に、本当なんだってば。ぼく、あの子の名前すら知らない。信じてよ」
 芽雨さんは必死に訴えるぼくを、ジロジロ眺めると、諦めたように言った。
「わかった、信じるわよ」って。
 やった! 誤解が解けた!
 ぼくは心底ホッとして、思わず「よかった……」って呟いちゃったよ。
 なんでか同時に芽雨さんも小さく息をついていたけど。
 ぼくたちは通学路を朝とは逆の方向に歩きながら、あの美少女の狙いは何だろうって予想しあった。
「ぼくを他の誰かと勘違いしてるんだと思うんだけどなぁ」
「他の誰かって?」
「わからないけど」
「『寂しい思いをさせるな』とか『独り占めするな』とかって言ってたよね?」
 うん、確かそんな感じのことを言ってた。
「どう見てもチワゲンカよねぇ」
 芽雨さん、また勘違いしそうな方向に話を持っていこうとしてる!?
「ち、違うよ!? そんなんじゃないからね!?」
 ぼくが必死になって否定すると、芽雨さんは「……わかってるわよ」って苦笑いした。
「人違いにしては、難しいこと言ってきて、わけわからないわね」
「そう、そうなんだよ! なんだったんだろうなぁ、あの子」
 あの美少女――キレイな子だったけど、口調は男っぽいし、なんかずっと怒ってて怖かったし、宮尾くんは「ボス」みたいな存在だって言ってたし――。
「!」
 今頃になって、気が付いた。
 宮尾くん、あの美少女のこと、知ってる感じだったよね!?
 そうだよ。「ケンカっぱやい」とか言ってたもの! 少なくとも、ぼくよりはあの美少女のこと知ってるはず!
 よ〜し。今度、宮尾くんに会ったら聞いてみようっと。

                          <3話に続く>

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