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Happy Birthday(まゆ)

ラインベックでパンケーキの朝食。5年ぶりくらいに行った。

先日、友人と最近起こったことを話していた。

すると、今まで思い出すことがなかったことが急に私の前に立ち現れて、言葉ではまったく説明ができないのだけれど、ただ、とても混乱してもう生きていけないような気持ちになった。
周りの声がまったく耳に入らなくなって、自分だけ別の世界に行ってしまったようだった。

自分でもなぜそんなことになったのかわからないのだが、そのフラッシュバックは私を激しく動揺させた。

見たくない景色だった。自分がものすごく汚い存在に思えた。

一方で、それはよく知っている景色だった。
ごくたまに浮かび上がっては、奥に押し込めて、ないことにしてきた。
きっと、無自覚にそうしていたのだと思う。

そばに2人、信頼する人たちがいてくれて、その人たちにどう思われるかななんて考える余裕もなく、意識が遠のきそうになりながら私はギリギリで語り始めた。

2人は、励ますでも、引き上げるでもなく、2人としてそこに存在して、ただ、聴いてくれた。

語るということが、私にとってはその時自分の生をつなぎとめる唯一の選択だった。
そして、2人がただ聴いてくれたことが、私を存在させてくれた。


かつて、聴くことを仕事にして、聴くことを研究して、私なりにいろんな道を辿りながら探求してきたつもりだったけれど、私は何もわかっていなかったのだと思った。
聴くことは、存在の肯定なのだと私は初めて身をもって知ったのだった。

それは私がかつてたくさん学びトレーニングした「聴く技法」とはまったく違う次元のものだった。
相手がいて、私がいる。
感情を素直に持てること、思うことを何にも邪魔されずに話ができることがとても尊いことだと思った。


自分のどうしようもない醜さと向き合ってすごく絶望したのだけれど、不思議と今、晴れやかさがある。

自分の苦しみの根本がひとつ明らかになったからかもしれない。
押し込めていたところに光が当たって、話したことで自分だけの世界から飛び出していった。
手放したとも言える。

抑圧されたことはいつか何かの形で表出するのだと思う。
意識下ではないことにしているつもりでも、自分や周囲にいる人には直接的・間接的に影響が及んでいて、無自覚に加害してきた。たくさん。

同時に、自分の苦しみも、いろんなめぐりあわせで起こったことなのだということが腑に落ちた感じがしている。

生きるということはそんなめぐりあわせを辿ることなのかもしれない。
抑圧することが悪いとか、自分のせいとか、誰かのせいとか、簡単には言えないなと思う。

ただ、あることをないことにしないことならば、少し現実感がある気がする。


考えてみれば、私は苦しみや悲しみを持つことすら抑圧してきたのだと思う。

私の考え方や感じ方が悪い。

●●に比べたら私がこんなことを思ってはいけない。

こんなところを見せたら人が離れていく。

表面ではありのままで、とか、素直に、とか言いながら、いつもそんなことばかり考えて自分を否定していたのだと思う。

それは結局、本当には向き合ってはいなかったのだと思う。どこかで自分をきれいな存在に思いたいという幻想もあったかもしれない。「被害者」にして自ら力を奪っていた気がする。

でも、痛みや苦しみや悲しみは、どうしようもなく、ずっとここにあるのだ。

楽しそうにしている人たちの様子にとんでもなく疎外感を持って、本当に悩んでいることをヘラヘラしながら自ら話のネタにしたりして、ますます孤独になって。

自分にかけている呪いは、必ず誰かにも同じようにかけている。

もう、そんなの終わりにしたい。

せめて、痛みや苦しみや悲しみを、「よかれと思って」という名のもとに行われるマウンティングやイデオロギーや観念に奪われず、自分のものとして生きてみたいと思う。


自分のダークサイドが明らかになることはつらい。
でも、それがあったから私はここまで生きてこれたのだと思う。

そして、ここから、また歩いていける。

こんな私を、それでも、生きていこうと、静かに覚悟が決まったのだった。


話を聴いてくれた2人は存在で私を抱きしめてくれ、そして身体でも抱きしめてくれた。

苦しみよりも、存在できる幸福感がそこにあった。

私は存在したかったのだった。

うれしかった。


私も、そんなふうに誰かを抱きしめられるだろうか。

久しぶりにヘッドホンで自分の歌をききながら、バスに乗って街に出た。

私たちの生活の風景。大事な人といた時間。

曲を作った時にめぐった心の動き。

レコーディングスタジオのマイクの前の緊張感。
作品に向き合って、一緒に作ってくれた人たち。

生きてきた時間、記憶。

歌おうと決めた時、舞台に立った時の高揚感と恐怖。

正敏と歩いてきた道。

自分の音楽が、愛しいと思った。
私はこの世界で確かに生きている。
やっぱりものすごく泣けた。

よくここまで生きてきたよね。

Happy Birthday.

なんだか生まれ変わった気分。

明日ネガポジでライブします!しばらくライブ予定ないので、ぜひ遊びにきてください。
10月29日(月)100%バックライブ
加納良英(and young)
BUNTA
松井洋介
センテンス
start 19:30
チャージ500円
センテンスは出番1番目19:30からです。
http://www.negaposi.net


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