萌えみのりちゃん推し

「みのりちゃん好き」

日頃幾度となく呟いているこの言葉の裏で、バチバチに対抗心を燃やしながら「萌えみのりすこ?よそのガチ恋の言葉は借りねえ!」と意地を張る一人相撲の厄介オタク。みのりちゃんの些細な言葉で一喜一憂し、他のオタクが褒められると誰彼構わず嫉妬する。何でこんなにめんどくさいガチ恋勢になっちゃったんだろう。初めはもっと────

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初めはもっと?振り返ってみると、私は割と初めの方からみのりちゃんにガチ恋してたのかもしれない。

みのりちゃんとの出会いは本当に初期も初期、米米米のデビュー日に遡る。11月23日。その日は私の誕生日だった。自分の誕生日に三人組のVTuberがデビューする。TLを何気なく眺めていた私の目にそんな告知ツイートが飛び込んできて、思わずスクロールする指が止まった。何となく気になった。

2018年11月30日、一本目の動画が公開される。試しに、と思って覗いてみた。──今だから言えるけど、正直ピンと来なかった。いきなり流れるよくわからない歌、コンセプトは米。米…?なぜ…?付いていけないまま、終わりまで観ないうちに動画を閉じてしまった。

それから日々は過ぎ、師走が終わりに差し掛かる頃、何の気まぐれか再び米プリンセスチャンネルを覗きに行った。1膳以外にも何本か動画が上がっていた。じゃあまあ1膳…は前回挫折したから、とりあえず2膳から。このとき先入観に負けず動画を開いた自分を褒めたい。面白かった。めちゃくちゃ笑った。ピンクの子が可愛かった。大人しそうな顔をして斜め上の下ネタを楽しそうに放り込んでくるギャップがよかった。でもそれ以上に、笑い方や仕草や声の調子といったキャラクターに還元されない部分にどうしようもなく惹かれた。一目惚れだった。

それからはみのりちゃんだけを目当てに米米米の動画を追うようになった。翌週の動画公開が待ちきれず、同じ動画を何度も何度も繰り返し視聴した。観返しすぎて冒頭数秒のトークを聴いただけで何膳か言い当てられるレベルだったと思う。だけど、ここだけの話、みのりちゃんの出ない動画が上げられたときは心底肩透かしを食らった。ろくに再生していない動画も結構ある。私が聴きたかったのはみのりちゃんの下ネタと笑い声だけだった。

そのうちSHOWROOMでみのりちゃんの個人配信が始まった。でもすぐには観に行くことができなかった。機械オンチでインターネット恐怖症の私にはSHOWROOMという聞き慣れぬプラットフォームがどことなく怖いものに感じられた。我ながら鋭い直感だと思う。しかしそれだけじゃなく、企画動画のみのりちゃんが大好きだっただけに、生配信のみのりちゃんを見てイメージと違ったら幻滅してしまうんじゃないかという一抹の不安もあった。臆病なオタクだった。そんなこんなで何週間か逡巡した末にようやく生配信を覗きに行った。正直に言うと生配信を聴くようになって数回の配信のことはよく覚えていない。たぶん身内ネタを把握するまでに時間がかかったからだと思う。クローゼットがどうとか、あづきちゃん(リスナー)が皿からプリンを啜ったとかいう話が聞こえてきたのは何となく覚えている。そのうち輪に入りたくなってちょこちょこコメントするようになった。そうしてしばらく経ったある日、みのりちゃんが突然「あかさたなさん、最近よく来てくれますけど、YouTubeに字幕を投稿してる人ですよね」と声を掛けてきた。ぎょっとした。企画動画を追いかけてきた私からすれば、みのりちゃんは自分とは縁のない画面の向こうの人だった。ちょっとした憧れの人と言っても差し支えない。そんな人がたった数回顔を出しただけの私のことをエゴサしてまで知ってくれているだなんて露にも思わず、動揺してしまった。本当はカッコよく返答したかったのに「あ、はい」と文面までキョドってしまった。その後続けて「米米米の動画にも字幕を付けてくれたら嬉しいです」と言われ、二つ返事でOKした。このときにはもう完全に落ちていた。オタクってチョロいな。

みのりちゃんの配信は本当に楽しかった。容赦なくオタクをしばきあげ、ことあるごとに熊やタワーを要求するみのりちゃん。配信の度にゲラゲラ笑った。みのりちゃんとリスナーの気の置けない距離感が羨ましくて、私も呼び捨てで呼んでほしいとお願いしたりした。あれはオールナイトニッポンポンの後だったかな。「あかさたなさんはあかさたなさんって感じだからなー」と言いつつ呼び捨てにしてくれたことに私はご満悦だった。ギフト読みのときに「あかしゃたなー!」と元気よく呼んでくれるのが可愛くて可愛くて、テキトーに付けたこの名前にも特別な愛着が湧いた。

この頃にはもうみのりちゃんの配信が毎日楽しみで仕方がなかった。でも回を重ねるにつれ、次第にみのりちゃんから弱気な発言が目立つようになった。「他の二人に比べて自分には存在意義がない」と。 寝耳に水だった。私は本気でみのりちゃんが米米米の中で一番魅力的だと思っていた。当然みんなみのりちゃんを一番に推してるものだと…。この当時、みのりちゃんはよくファンレターを送ってほしいと言っていた。「ファンから貰った手紙は自分が死んだときに棺に入れて一緒に燃やしてもらう」──所詮オタクと配信者という永遠に距離の縮まらない関係だけど、そんな風に自分の贈ったものを一生大事にしてもらえるのなら、みのりちゃんの人生にネットの壁を超えてほんのちょっとでも関われるような気がして、これ以上ない幸せに思えた。普段あまり積極的にコメントやリプをしていない分、ファンレターでみのりちゃんに自分がどれだけ応援しているかを伝えよう。そう思ってさっそく手紙を買いに行き、下書きを始めた。ファンレターを書くのは人生で初めてだった。そもそもちゃんとした手紙を書くこと自体初めてだったかもしれない。書き出しはどうしよう、不快な表現じゃないか、わかりにくくないか、文面を考えに考えて一週間以上推敲に費やした。中でも最後のくだり──みのりちゃんがいなくなったら米米米のファンを続けていける自信がないというくらいみのりちゃんのことを不可欠に思っている、というくだりには力を入れた。私が一番伝えたかったことだった。たった一人のファンの想いに過ぎないけど、五億人分の応援のつもりで書いた。緊張しながらポストに投函した。宛先が間違ってないか不安で三回もポストに突っ込んでは戻して確認を繰り返したから、周りから見たら挙動不審だったと思う。

ファンレターを送った後、OFF-KAi!!のガチイベが始まった。このとき初めてタイムテーブルというものの存在を知った。他のオタクたちがいくつかのタイテを提案する。私も力になりたくて周回の仕組みを解説したサイトを巡って勉強した。その甲斐あって私のタイテが採用され、以降ガチイベがあるたびに頼りにしてもらえている。ありがたい話だ。でも、このガチイベは私にとって苦い思い出にもなった。

超接戦の中、ラスト五分間の大逆転劇を経て、みのりちゃんは優勝した。私は貢献度ランキング6位だった。毎日星捨ての夢にうなされるほど欠かさず周回して、限界まで課金もした。そうして得た大健闘の順位なのだから不満のあろうはずもない。なのに、気づいたら上位の人たちに嫉妬していた。名指しで褒められているのが羨ましかった。表に出しはしなかったけど、この時点でだいぶ厄介になっていたというか、ガチ恋を拗らせていたんだと思う。整理のつかない感情に自分でも驚いた。上位の人たちは上位になるだけの頑張りをしたんだから…と納得しようとしたけれどなかなか割り切れなかった。ガチイベって怖いな、二度とやりたくない。ファンレターとガチイベ、この二つをきっかけにみのりちゃんへの感情がエスカレートしていった。

11月23日、米米米大嘗祭。視聴にはOculus GoというVR機器が必要とのことだったので、告知があるなり迷いなく購入した。夏頃にみのりちゃんに人生初課金を捧げて以来、財布の紐が緩みきっていた。それからしばらくして「実はレンタルもあるよ!」というファンを嘗めきった運営の案内があったが、そのときの私はあまり気にしなかった。とにかくライブが観られればそれでよかったし、なんなら後からVRで録画を観返せる分、こっちの方がお得だとすら思った。それくらいライブを楽しみにしていた。そして当日。みのりちゃんは輝いていた。後でファンレターにも書いたことだけど、贔屓目なしにみのりちゃんのダンスが一番安定しているように見えた。他の二人よりもダンス経験が浅いからと毎晩遅くまで練習していたのを知っていたから、感動もひとしおだった。みのりちゃんばかりを目で追って、部屋の中で大の大人がサイリウム(リモコン)をガンガンに振っていた。踊りながら歌うって並大抵のことじゃないのにしっかり踊れていたし歌声も安定していて可愛かった。特に Girlish Lover は悶絶するほどの可愛さだった。

感動的なライブだった。それは嘘じゃない。でも、私が一番好きなみのりちゃんは、やっぱり普段の配信で下ネタ飛ばしてゲラゲラ笑ってオタクをしばいているアイドルらしくないみのりちゃんだった。みのりちゃんがライブ後のnoteで歌や踊りよりもべしゃりの方が好きだと語っていたように、私もそれをひしひしと感じた。だから私は(あくまでも私は)「みのりちゃんはアイドルだよ」とは言わない。アイドルかどうかに囚われず、自分が楽しいと思う活動を生き生きとやってるみのりちゃんを見ていたい。よく「好きに生きてほしい」と言っているのもそういう理由からだ。みのりちゃんが無理せず楽しく生きてることが私にとってのファンサだよ。

11月の半ば頃、みのりちゃんがわくVというリアイベに出演することが告知された。ついにみのりちゃんに会える!胸が高鳴った。と同時に、みのりちゃんが昔「リアイベに来るときは自分が一番オシャレだと思う格好をして来てほしい」と言っていたのを思い出した。それはどう考えても服装の話だったはずだが、いつもどこかズレている私は「じゃあまずは肉体改造だ!」と思い立ち、ダイエットを決意した。しかしイベントまで一ヶ月しかなかったので、確実に痩せられるように一日の消費カロリーから摂取許容カロリーを算出し、毎日の食事を徹底管理し、運動もジムに通ってきっちりこなし、結果的に4.5kg痩せた。ちなみに糖質制限はしてない。お米のアイドルのイベントなんで。そういうところオタクは律儀。もちろん服装にも気を使い、上から下まで一式新調し数年ぶりに髪まで染めた。自己満足の極致だけどイベントまでのこういう準備って楽しいよね。で、当日。東京は私の家からおそろしく遠い。でもケチって深夜バスを使ったらコンディション最悪になることは目に見えていたので飛行機で向かった。会場に着くと私も出資した木立さん企画のフラワースタンドが目に入った。リアイベにやってきたんだという実感が湧いた。わんおんわんのチケットを購入しトークイベントまで会場内で待機した。そのあいだ物販があったがここに来るまでの出費がデカすぎてチェキもTシャツも買うことができず、売り切れていくのを臍を噛む思いで見守っていた。アホだと思う。何はともあれ、トークイベントが始まった。正直、後に控えているわんおんわんのことで頭がいっぱいで気が気じゃない部分はあったが、それでも他のVTuberとのコラボに不安を抱えていたみのりちゃんが楽しそうにトークしているのを見て嬉しかったし、どうだ私の推しは面白いだろ!とちょっと誇らしい気持ちになった。トークイベントが終わって、いよいよわんおんわんの時間になった。この日を迎えるまでに家で何度もイメトレを積んできたけど、いざ列に並ぶと何もかも頭から吹っ飛んでいた。そしてついに私の番。ネット越しでしかコミュニケーションを取ったことのなかったみのりちゃんが私の顔を見て私だけに話しかけていることが衝撃だった。語彙がすっかり消え失せて、笑ったり「ああ」とか「うん」としか言えなかった。仕草もキモオタっぽかったと思う。後から思い返すと恥でしかないな。短い時間の中でみのりちゃんは私に直接伝えたかったらしいことを伝えてくれた。いっぱいいっぱいだったけど、それを言ってもらえて嬉しかったのはよく覚えている。ありがとう。無理してでも東京までみのりちゃんに会いに来て本当によかった。またいつかみのりちゃんがリアイベに出演する日をずっと待ってる。

ここまでが2019年の話。今年に入ってからのことも書きたいけど、切りがないのでそれはまた次の機会に取っておこうと思う。

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生誕祭のとき、みのりちゃんが「私がオタクの中で人生を変えたなと思っているのはあかさたな」と言っていた。ほんとにそうだ。何に対しても一歩引いてしまう私が、こんなに夢中になった人(米)はみのりちゃんが初めてだった。だから私は加減ができない。重すぎるくらいの愛で推している。萌えみのりちゃんは私の唯一の推し。かけがえのない人です。

いつもありがとう。

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