朝になったか?夜にもならない夜。

朝になる。静かな朝になりそうな手前の時間は流れていく。こちら側へ。僕を通り過ぎて行きそうだ。その先はどこへ行くのか。
明けない夜は無さそうだし、朝も無いだろう。
明けない朝が無ければ夜も無いだろう。でも本当だろうか。本当だとしたら一体いつからの本当なんだろうか。妄想で追いつける本当だったらそれは本当に本当のことなんだろうか。

このまま玄関を飛び出して荒川沿いを歩きに行って良いのだろうか。良いのだろうね。脳みそがやめておけと言うその声はどこからやって来るのだろう。頭蓋骨に隔離されその狭い世界から飛び出られない寂しいやつの戯れ事だろう。
だろうとかだろうかとか推測疑問が果てのない外の世界への井の中の蛙は憧れや憧憬の光に満たされた孤独の裏側にたたずむ。

とある天文学者が言っていた。地球から見える全ての星はその向こうや僕らの反対側にあるそれ以外の見えない星との交信の過程で膨張と収縮を繰り返して古代何兆光年もの間に消えては現れる。この僕らの住む身の回りにも突如現れる。それが僕ら人間だと。僕らは星なんだと。輝く星になるために光を求めて足掻く星だと。

「出してくれ!ここから俺を出してくれ!」
「やめておけ!お前正気か!?自殺行為だ!ここから一歩でも出たらどうなるか分からないのか!?」
「知ったことか!俺はとにかくここから出て行きたいんだ」

こんなやりとりは珍しい事では無い。そしてここからで生きて帰ってきたやつはいる。皆成れの果てになり果てたダンディズムの探偵になって俳人になって句を読んでしまうようになってしまった。

ところで朝になったか?いやまだだ。明けない夜は今この瞬間にあるし、朝にならない。