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アウトサイド・カウキュウレイション


◆前置きな◆

これは2019年3月2日に行われたニンジャスレイヤRPG・ソロシナリオのリプレイにストーリーを加筆したものです。詳しくはこちらのツイートをご覧ください。

使用するニンジャはこちら、ウィルダネスです。今までのミッションを全部クリアして見せた悪運強いサンシタです。

個性は初期設定からちょくちょく変更しましたが元とはそう違わないはずです。少なくとも自分はそう思いたい。

◆プロローグな◆ヤクザの事務所

「デスヴォルケイノ・クラン」のショドー。粉砕破壊された調度品。チャカ持ったケジメ腕。死体。死体。ヤクザのアジトとしては明らかに異常だ。「ザッケンナコラ……!」ケジメ腕の持ち主だったワカモノは地に伏してオヤブンのドゲザを見るしかなかった。

「早い判断で助かるぜ、ツジム=サン。俺だって出来るだけ未来あるワカモノを殺したくないんだ。」ドゲザオヤブンの頭を踏んづけてる男、ウィルダネスのオーラが場を支配していた。返り血に赤く染められたクロスカタナのエンブレムが彼の正体を示す。「ニンジャだって時間と労力の無駄が嫌いだ。」

目的が達成し、ウィルダネスは出口へ向かった。「詫びと言ってなんだがツテで人手の補充とそこのワカモノにサイバネを用意しておく。トモダチ価格だ。」欺瞞!クローンヤクザとサイバネ義肢の費用は何割も彼に戻って安いわけがない!「ヨロシクオネガイシマス」だが言い出したら先の虐殺の二の舞だ。オヤブンは涙とともに言葉を飲み込んだ。

重金属汚染雨が無限に降る外、ヤクザセダンとクローンヤクザ2体が待機している。トラディショナル・ヤクザクランにとっては准オヤブン級と待遇である。だがソウカイ・ニンジャでは最下位のサンシタが共用する最低限の備品でしかない。上位のヤクザリムジン、家紋タクシー、果ては専属防弾ヤクザベンツこそが地位のシンボルなのだ。

「センセイお疲れ様です。」ウィルダネスは補佐クローンヤクザの機械的労いを気づいてない。「アーイイ……!」事務所でのオーラから一転し、愉悦を目に浮かべて完全に緩みきった。金、暴力、全能感!カラテでグレーター・ヤクザをネギトロに変えた時の事務所を何度も脳内再生を繰り返す。

そしてもっとも再生したのは、クローンヤクザとサイバネを押し付ける部分だ。もう殺して安スクラップを漁るだけのヨタモノとは違う。長期的ビジネスプランを持ち、打算的で狡猾だ。「ドウシタンスカ」「エ?アッウン、出せ。」どうやら浸かりすぎたようだ。

ヤクザセダンが神話の矢めいて、夜のメガロシティを貫く。だがウィルダネスはふと違和感を覚えた。つい最近までツチノコ・ストリートしか知らず、学のない彼も覚える違和感が…「オイ、方向は違うぞ。」「スミマセン。だが、これでいいんです。」運転手は答えた。「トコロザワ・ピラーじゃないです、行き先は。」「何だと…?」

「ついさっき緊急指令が入りました。」補佐クローンヤクザが答える。「我々は一番近いので。」ウィルダネスはマナーモードに設定したIRC端末を見た。『アージェント・ノーティス:シックスゲイツ・ヘルカイト、シグナルロスト。周辺ニンジャに捜索・回収重点指令』ウィルダネスは思わず目を細めた。

シックスゲイツ・斥候ヘルカイト。ラオモト=サンも認めるウデマエの持ち主だが、裏社会組織ソウカイヤの中でも一際後ろ暗い噂の多いニンジャである。彼がシグナルロストするような事態はただ事である可能性は極めて低いし、例え救出出来たとしても上へのパイプとして扱いにくいだろう。

だがラオモト=サンの直接指令だ。無視がバレたら怒りもダイレクトに伝わるだろう。ウィルダネスは両者を天秤にかけた。「目的地までどれくらいだ。」「もうまもなくです。」「適当に停まって待機しろ。一人で行く。」怒り荒れる天災に立ち向かうよりは安全だろう、とウィルダネスは結論した。

◆スタートな◆廃工場入口

目的地エリアは廃工場が密集する地域だが捜索はそう難航しなかった。(廃棄されたにも拘わらず僅かに見える電気の光、そして入口にクローンヤクザ。しかも重火器装備だ。露骨さえあるな…)物陰からウィルダネスは状況判断する。ここで待てば緊急指令で増援は集まるだろう。だが…

【ワザマエNORMAL判定、ダイス3】
【5,1,1】CLEAR!

「イヤーッ!」飛び出した瞬間スリケン投擲!「ア」悲鳴上げる暇もなくヘッドショット死!「まずはクリア…と」

周辺に敵の気配がなく、ウィルダネスは死体を漁り始めた。胸ポケットにサイフ。万札が…「は!?」殆ど無意識の行為に彼は愕然とした。まだ卑しいヨタモノが残ってると感じ、彼は激しい羞恥を覚えて震えた。だが屈んでる彼はクローンヤクザが付けてるバッジを目に入った。

目をモチーフにカンジ二つ。読めやしないがかつて正式にソウカイ・ニンジャになった時ラオモトの演説で出たことあるマークだ。

ザイバツ・シャドーギルド。ソウカイヤに歯向かうニンジャ組織で、シックスゲイツとダークニンジャを持ってしても壊滅に至れなかったほど強大だ。(ヘルカイトの爆発四散可能性が高くなったか)意外の発見がウィルダネスのニューロンを意外にも調整し、彼はすんなりメンタルのギアをビズのそれに戻した。

【カラテNORMAL判定、ダイス4】
【5,1,5,6】CLEAR!

内部にドス・ダガー装備ヤクザ。音もなく首を360度回転殺。胸ポケット。サイフ。万札。やるなら精密スシ・マシンめいた素早さで済ませ、次へ向かえ。

昔のジャンク品や安トークンと違ってモノは万札だし。

フロアを軽くクリアリングを行い、同フロアのクローンヤクザが2体のみと判断。ストリートチルドレンの頃、廃工場や廃屋にオバケやユーレイが出ると仲間同士が怖がらせあったが、世界の裏側に入った今になってそういうコワイ話も善意的に思える。少ない人数にニンジャ失踪に絡むニンジャ組織。この廃工場のどこかに敵性ニンジャがいるのは確実だ。ステルス系のジツ持ちを想定してもしかたない、フロアごとやれるだけクリアリング行うしかない。

クローンヤクザが居るのは1階だけのようだ。16階からクリアリングが雑になり、発見のある49階に上がった頃はもはやヘルカイトの安否がどうでもよく、ただただ繰り返す作業からの解放を噛み締めた。拷問椅子に爆発四散痕。部屋主がさそいい趣味をしている。ウィルダネスはしばし状況判断した。(ヘルカイトが爆発四散したらここはもう用済み、クローンヤクザ配置など有り得ない。今帰れば後ろががら空き、アンブッシュのいい的だ。こっちから見つけ出し、殺すまで!)

部屋にカイトが見つかる。「ムテキ」「槍で刺す」「キリステ」と威嚇的なショドーされてる。ヘルカイトのものだ。隣にあるUNIXに目をやる。電源が通っており、シロウトもわかるほど豪華な設備。そして何より隠す気のないザイバツ紋だ。ハッキングすればいい情報が手に入れるだろう。ウィルダネスのハッキング知識はソウカイ・ニュービーで受けた基本レクチャーしかなく、ここまで大掛かりなハッキングも初めてだ。セオリーならハッカーニンジャの増援が来るまで待機だ。だがウィルダネスはそのままUNIX前に座り、物理タイプを開始した。

いつニンジャのアンブッシュが来るも判らないどころに居たくないのもある。イサオシが他の連中に取られたくないのもある。だが何より....ウィルダネスは頭を振り、余計な思考をニューロンから追い出した。それでニンジャになった。裏切った連中も一人残らず殺した。(もう終わったことだ、サイオー・ホース重点な....なっ!?)

ログを見てもう10秒もタイプしてない。画面にシロウト目でも分るほどアブナイコードが飛び合う!「アイエ!?」このままではアラームが起動し、ハッキングは失敗だ!ウィルダネスは全ニューロンを動員し、追いつきに取り掛かる!

【ニューロンHARD判定、ダイス3】
【2,5,4】CLEAR!

キャバーン!アラーム鳴る寸前でハッキングが成功し、データの乗ったパンチテープがプリントアウトされていく。「セーッ、セーッ....心臓に悪い。」指しか動いてないにもかかわらず木人トレーニング直後のように息があがる。ネオサイタマに潜伏してるザイバツの情報を示すUNIX画面を恨めしく見る。苦労に見合う情報だがやはり損した気分だ。

CLICK。部屋の向こうの鉄扉が解錠音。どうやらUNIXに連動してるようだ。敵ニンジャもヘルカイトもそこにいる可能性が高い。鉄扉はかなり重厚で、このまま逃げれば時間をいくらか稼いでくれるだろう。だが問題はヘルカイトだ。もしヘルカイトは噂通りの男なら、増援に救出されたり何らかの形で生還したとすればここで見捨てた自分はこれから安心して寝ることはなくなる。覚悟を決め、鉄扉と対峙する。

◆目標な◆ヘルカイト

しばらく経っても気配がない。恐る恐る鉄扉に手をかける。鈍重な音を立て、開いた先は素朴な牢屋に閉じ込められたヘルカイトであった。「ソウカイヤの....救援か……?ありがたい。シグナルロストしたニンジャを追ってここに来たが不意を打たれた。ここはザイバツのアジトだ……!」最初にシグナルロストしたニンジャについては聞くまでもない。おおよそ外の爆発四散痕だろう。「ドーモ、ウィルダネスです。ここのニンジャ戦力は?」ウィルダネスはとりあえずアイサツし、肝心な情報を手に入れようとした。「イカレたニンジャが一人だけだ。この牢屋にいない。」それを聞いてウィルダネスは初めてカラテ警戒を解く。

ウィルダネスはヘルカイトを見、しばし状況判断した。自立して歩くくらいは可能だが戦力として期待はできない状態だ。脱出の足まといになるぐらいならここで始末し、ザイバツになすりつけるべきか。だがまて、このヘルカイトはシックスゲイツである。つまり敵に狙われやすく、いざとなれば盾役としては有効だ。仲間意識などなく、あくまでも自分の損得勘定であった。「待ってくれ、いまロック壊す。」

付近だ見つかった救急キットでZBRと申し訳程度の応急処置のあと、ヘルカイトは外に置いてあった背負いカイトを装備しなおした。「恩に、着るぞ....」そう言って彼は窓から飛び出た。(あ、あれ?盾が?盾役ナンデ?もしかしておいてけぼり?)計算が吹っ飛び、ウィルダネスはしばらく立ちすくんだ。というか最初からあのカイトで脱出すれば良かったのでは?あの脱出シーケンスを見てウィルダネスは初めて思い至った。

苦労を経てメンタルをビズに戻す。パンチテープのプリントアウトはちょうど終了した。そのテープをマキモノ状にし、懐にしまった。(潜伏してるザイバツにはせいぜい俺の出世ポイントになってもらう)ウィルダネスの頬に残虐な笑みを浮ぶ。だがその喜びも長く続かなかった。入口方向にキリングオーラ、敵ニンジャが来る!

入ってきたニンジャは全身黒く、爬虫類を思わせる佇まいだ。ニンジャの中でも一際異様なアトモスフィアに訝しんだウィルダネスをよそに黒いニンジャは先手アイサツした。「あれだけ陽動しておいてやることはコソ泥か。ドーモ、ブラックドラゴンです。」陽動?何の話だ。「ドーモ、ブラックドラゴン=サン、ウィルダネスです。なんの.「イヤーッ!」な!?」アイサツが終了した直後、ブラックドラゴンのチョップが飛んでくる!

2連撃:回避ダイスを2,2配置
一撃目
【カラテNORMAL判定、ダイス2】
【4,3】CLEAR!

一応戦闘体制に入ってはいるから完全に不意打ちされてはいない!そのままガードする!だがガードの反動を利用し、ブラックドラゴンが反方向からフックを繰り出す!

二撃目
【カラテNORMAL判定、ダイス2】
【5,2】CLEAR!

辛うじてガード成功するのも強烈な一撃でタタミ二枚ほど吹き飛んだ!

「ここに向かっていた連中は全員あのムーヴで死んだ。」力の差に確信を持ったか、ブラックドラゴンはいきなり饒舌になった。「さすがに本命をつとめたということか」「....それはドーモ。」ウィルダネスは同じく力の差を感じた。ガード腕に残った残留カラテはひしひしと伝われ、ニューロンの警鐘を鳴らす。

危機的な状況にニンジャアドレナリンが過剰分泌し、主観時間を泥めいて鈍化する。まずは分かったことから判断する。一つ、増援ニンジャと敵ニンジャがいない訳が分かった。こっちが苦労してクリアリングしてるあいだずっと増援をしらみつぶしてた。二つ、この状況をどうにかしないと自分も増援ニンジャの後を追う。冗談じゃない、絶対にどうにかする。三つ、入口以外の階段がなく、その入口もトカゲ野郎の真後ろだ。「自慢するといい、サンズ・リバーで死んだ仲間にな!」ブラックドラゴンは再度突き込み、カラテを再開する!

【ワザマエNORMAL判定、ダイス3】
【4,6,4】CLEAR!

迷ってる暇はない!「イイイヤーッ!!」初撃を側転回避!だがそれだけではない、ウィルダネスはそのまま連続側転を打ち、ヘルカイトが脱出に使った窓へ飛び出た!49階から落下したニンジャはどうなる?知らぬ!

「状況判断も思い切りもいい。逸材だ。」窓際にブラックドラゴン。「そのゆえここで殺す!イヤーッ!」窓際を蹴り、高度から急加速をワザマエに乗せた殺人的トビケリだ!「シマッタ!?」重心を狙い定めた一撃は正しくヒサツの威力を持ち無防備になったウィルダネスに迫る!その時!

「イヤーッ!」「グワーッ!?」さらに上空からヘルカイトのダイビングインタラプトだ!「ヘルカイト=サン、脱出したはずでは!?」勢いをそのままウィルダネスをキャッチする!「借りは返したぞ」とヘルカイト。さっそく切れるカードなくなったのは残念だが実際命の危険だった。「………ああ、ドーモ。」地面までの束の間、二人は無言のままだった。

◆エピローグな◆トコロザワ・ピラー

次の朝、ドコロザワ・ピラー。ラオモト=サンはパンチテープマキモノを電算室のダイダロスに送れよう側近のダークニンジャに命じた。「ムハハハハ!よいぞ!見事な働きであった!これでザイバツのネズミどもをイチモ・ダジーンしてくれる!これでサケでも飲むといい!」懐から無造作に万札の束を持ち出し、ウィルダネスに投げつけた。

ウィルダネスは礼をいい、万札を受けてからすぐ九十度オジギのポーズに戻した。彼は未だに目の前の男のことが大の苦手であった。付き合い方はもうわかっている。忠誠、実力、そして成果を出せばひとまず安全に居られる。だが恐怖は理屈ではない。現にラオモト=サンは上機嫌である。だがウィルダネスは微かに感じる残虐なキリングオーラを感じ、震えあがってる。自分に向けられてるものではないのは分ってる。対象はおおよそアワレなザイバツニンジャどもだろう。だが理屈は分っても身体が、果てに身に宿るニンジャソウルがそのキリングオーラに反応している。

サバイバル本能が知っているのだ、目の前の男の八つ当たり一つで自分がなすすべなく爆発四散してしまうことが。「ん、どうした。震えてるぞ」「アイエ!?え、えと」「ムハハハ!さて、ザイバツのネズミから敵前逃亡したからソウカイヤのメンツ汚してたことか?」「アッハイその通りです!」全くもって違うだが慌てたウィルダネスは打算など出来ず、とにかく頷くことにした。「ムッハハハハ!身に過ぎた悩みも考えものだな、ウィルダネス=サン!お前が持ち帰ったデータでアジトを全部ネコソギすれば問題あるまい。お前はこれからも成果を持ってワシを楽しませてくれればそれでいい。」「ありがたき幸せです!」傲慢と嗤笑のオーラを受け、ウィルダネスはドゲザした。

部屋からウィルダネスが退室して、廊下に出る。そこでこれから入るヘルカイトと直面。「....ドーモ。」「ドーモ。」アイサツだけ交わし、そのままお互い通り抜ける。今回のヘルカイトは、ラオモト=サンはどう評価するだろう。少なくともこっちまで飛び火がなさそうと思いたい。(もっとも二度と会わない方が嬉しいがな。)シックスゲイツは豪華な待遇の分働きが期待されてる。つまり日常的に死地に送られるのであり、いるどころがほとんどイクサバだ。

ウィルダネスが求めるのはこのマッポーでの生存、そして平穏だ。そのためにソウカイヤに入って、そのために地位を求める。だが未だに平穏になった実感がなく、今も藁をつかむ気分でもがいてる。ドコロザワ・ピラーからネオサイタマを見下ろす。このネオン満ち溢れるメガロシティに本当に求めてる平穏があるのか?答えは髑髏めいた月のみぞ知る………

あとがき

いかがでしょうか?辻褄を合わせたり面白いと思ったものを入れたら結局想像よりずっと長くなってしまった。キャラが勝手に踊りだすのも考えものですね。

ウィルダネスは打算的で狡猾のつもりでいたが結局計算が狂ったり計算外の要素が乱入したり、果てには計算出来ないものに翻弄されてたストーリーになりました。ある意味モーターロクメンタイに翻弄される我々PLのようですね(笑)しかも成功しても失敗してもオイシイキャラ付け、我ながらズルいと書いてて思いました。

モーターロクメンタイがいる限り、ウィルダネスは次のミッションに駆り出されるだろう。彼はこの先求めていた安寧を手に入れるか、それとも志半ばで爆発四散のか....ここまで読んでくださった皆様ももしよろしければ、次の話にもお付き合いください。

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