自叙伝風小説32初ポーカー編

「当機はまもなく最終着陸態勢に入ります。今一度シートベルトを―――」
僕はそれを聞いて読んでいた本を静かに閉じた。
リーマンショックを受け、僕は住む場所も変えた。生活の質もあの頃と比べればガラリと変わっただろう。まだ蓄えはあったから急いで働く必要も無かったし、生きていくのに困ることもまだない。
だが、少しずつ少しずつ人生の時間だけを削られていくような息苦しさはうっすらと感じていた。
このままではいけない。そう思う中でもう一度ブラックジャックのカウンティングで勝負をしようと考えた僕は、いてもたってもいられなくなりすぐに行動を起こすことにした。
すぐにアメリカでリベンジをすることも考えたが、今乗っている飛行機の行き先はアメリカではない。
カジノはラスベガスが有名ではあるが、他にも有名な場所はいくつかある。
マカオなんかも日本人が聞いたことのあるカジノが多い。
そして今僕が向かっているのは、韓国。ソウルだった。
着陸の衝撃に揺られながら、ブレーキの轟音を聞く。
その中で僕は未だ直接見たことのないウォーカーヒルカジノに思いを馳せていた。
ウォーカーヒルカジノは韓国でも有名なカジノであり、地域で最大規模という名実ともに韓国一のカジノだ。
高級ホテルグランドウォーカーヒルソウルの中に備えられており、外観はパッと見ただけで誰もがカジノだとわかるようないかにもな煌びやかな装飾。内装はラスベガスのトップカジノに比べれば豪華ではないが、広々とした空間に人がごった返し、テーブルが所狭しと並んでいるのは圧巻だそうだ。
もちろんその全てが恒常的に立っているわけではないが、それでもかなりの数のテーブルが動いているらしい。もちろん僕の目的であるブラックジャックもそうだ。人気の卓の一つであるから、間違いなく良い経験になるはずだ。
そう思って僕は空港からタクシーでホテルに向かい、ホテルでの滞在時間はわずか数分で早速カジノに向かうのだった。
カジノに入った第一印象は、良い意味でも悪い意味でも親しみやすい雰囲気だな、ということだった。
ラスベガスほど非日常感のある絢爛な見た目ではないが、十分すぎるほどに豪華で、それでも目が痛くなるほどじゃない。
まぁ、言って仕舞えばラスベガスのトップカジノに比べれば地味だが、それは比べる相手を間違えていると言っても良いだろう。
数分遠目からカジノ内を見回してから、僕は早速ブラックジャックに挑戦しようとカジノ内を歩き始めた。皆どのような空気感でプレーしているのかも視察も含めてだ。
カジノには実は色々な種類の人間がいる。一般的には皆ギャンブルをしにきた人、程度に思っていないとは思うが、そうではない。
レギュラーと呼ばれる、いわゆるプロや常連の人間と、観光客や単純に遊びに来た程度のレクリエーションプレイヤー。大きく分けてもこの二種類がいる。
もちろん毎日のように勝負をしにきて生計を立てている人間と、遊びに来て楽しんでいる人間を相手にするのでは勝率がまるで違う。それの調査も含めてだ。
ブラックジャックのテーブルを見ながら少し距離を取ろうと足を下げると、何かにぶつかってしまい、僕はパッと振り返った。
あ、と声を漏らしてから軽く手をあげてソーリー、と呟くと足がぶつかったであろう男は僕を見て軽く驚いてから笑顔を浮かべた。
「大丈夫だよ、って・・・伝わってるやんな?」
「え?・・・ああ、日本人の方なんですね」
異国の地で、しかもカジノだ。ここにくる人間なんていないとまではいないが、限りなく珍しいのも確かだ。なんとなく僕は嬉しくなって彼に言葉を返して、急いでいなさそうな様子を見て軽く雑談を振ってみた。
「まさか最初に声をかけてくるのが同じ日本人なんて、嬉しいですね。あなたもブラックジャックを?」
このテーブル近くで立っているということは目的は同じだな、あと案に宣戦布告ではないが話を振ってみると、彼は即答で手と首を振った。
「いやいや、俺はこっちやね」
「え?」
彼が指さしたのは僕がみていたブラックジャックのテーブルのすぐ隣。トランプとチップが置かれているのは全く同じテーブルを指さした。
「・・・ポーカー、ですか」
「そうそう、テキサスホールデムやな」
ポーカー自体はもちろん知っているが正直知識はあまり、いや全然無い。
日本では全く広まっていない競技なのだ。無理もないだろう。
「お兄さんも暇なら一緒にどうや?1−3でそんな金も飛ばないし遊びがてら」
彼の言った数字の意味はわからなかったが知らないということは興味のそそられることだ。
ブラックジャックは今日勝負しないといけないわけでもないし、せっかく異国の地で同胞に会えたのだ。付き合いがてら遊んでみても良い。
正直テキサスホールデムなんてルールはほぼ知らないが、それもまた一興だろう。
「そうですね、ではせっかくですし。・・・確か、Aが2枚来たら強いんでしたっけ」
「はは、まぁそうやな!っていうかこんなマイナーなのよく知ってるなぁ」
一応カジノに来るのだからなんとなくそのジャンルのことは一般人よりは耳にするだろう。
そんな風に軽く話しながら僕は席についた。
「俺は皆から兄そるって呼ばれとる」
「兄そる、ですか?」
「ああ、弟がおってな。そいつがじぇいそるだから兄の俺は兄そるってわけやな。三人でマカオで暮らしとる」
簡単な自己紹介を広げたい気持ちはあったが、周りにも人が座りゲームが始まりそうだったので、僕はアカヤギです、とだけ伝えて周りに目を向けた。
カードが配られ、順番にカードを投げたりチップを置いたり。
多分勝負するのかしないのかを表しているのだろう。
そうして空気を読んで僕の隣の人間がカードを投げた後に視線が向けられ、僕は慌ててそこで配られた2枚のカードを見た。
配られていたのは♤4、♡8。
そんな強いカードではないしスートもバラバラだ。これで勝負するだけの情報が僕にはないのでそっとカードを投げる。
そして隣に居る兄そるに目を向けると、兄そるはすでにカードを見終わっていたようで、何食わぬ顔でチップを3枚置いていた。
「あれ、おじさん昨日もいましたよね」
マカオに住んでいるだけあって英語はある程度話せるのだろう。
少額とはいえお金がかかっているとは思えない気楽さで兄そるは周りに話しかけていた。
声をかけられたいかにも韓国人風のおじさんも英語は話せるようで、同じ韓国でも遠くから来たからここ三日は入り浸っているよ、と笑っていた。
「それは良いですね、ここのカジノは楽しいですもん」
そう笑いながら兄そるはカードを放り投げ、中央に集まっていたチップがそのおじさんの元へと運ばれていった。
大雑把には流れは分かったがまだ勝負できるほどではない。
二回目のカードが配られる中でも、僕はまだ不安と緊張の最中だった。
そして配られてきたのは♧8と♡8。数字の強さ自体の判断基準はよくわからないが、とりあえず揃っているのだ、良い手だろう。
ソワソワしながら順番を待ち、僕は前の人と同じ枚数のチップを場に並べた。
兄そるは手が良く無かったのかカードを捨て、結局僕と同じようにチップを出したのは二人だけだった。三人での勝負ということになる。
そしてディーラーが3枚場に並べると、♡2、♧6、♧9だ。悪くはない。
だが、決まった、と思えるほどでも無かった。スートを見れば2枚と3枚で後少しだし、数字も2、6、8、8、9だ。ペアにはなっているがそれだけだしストレートも見えるがそれだと2枚足りない。結局いまいちというわけだ。
だが、先程を見れば後2枚追加されるのだ。自分の手が進む可能性はまだまだある。
様子見も兼ねて僕は他の人と同じようにチップをそのままに先へ進む。
今度配られたのは、♢8。
これで、スリーカードだ!
僕は嬉しい感情を抑えながら、自分の順番にレイズをかけた。一気に倍増するチップ。
これで勝てる可能性は高いぞ、と息巻いていたのだが、僕がチップを出してすぐに他の人はカードを投げてしまい、あっさりと中央のチップは僕の元へとやってきた。
勝った、という喜びはもちろんあるのだが、今来たチップは殆ど僕のものだ。最初に賭け金として払ったものと、その後レイズしたもの。
勝ったけれどあまりチップは増えていないんじゃないか?と疑問で首を捻っていると、兄そるは楽しそうに頷いていた。
「うんうん、最初の勝ちにしては早かったしいいんやない?おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
それは皮肉ではなく純粋な言葉であったから、僕も素直に頭を下げた。
確かに次欲しいカードが来るかどうかというワクワクはあるがそれだけだ。ブラックジャックのように頭を使うことも多くないし、運の要素が大きすぎる。
これにハマる人間がいるのだろうか、とふと考えてしまったのだが、その考えは十分もしないうちに跡形もなく消え去ることになる。
それは、何度か同じように繰り返して何度か勝負をした後のこと。
僕の手に配られた♡3と♧7を見て僕はすぐにカードを投げた。
なんだか飽きてきたし兄そるには申し訳ないがこれでラストにしようか、と考えていると、最初以来ずっと降りていた兄そるがチップを投げていた。
(良いカードが入ったんだな)
僕はニコニコしながらテーブルを見つめていた。
同じようにチップを投げた人間が後二人おり、また三人の戦いになる。
その中には最初に兄そるが負けた韓国人の男性の姿もあった。
場には♡2、♤5、♧9。バラけていてあまり高い手にはならなそうだ、と短い期間での経験を踏まえて考えながら僕はちらっと隣のブラックジャックの卓を見た。
すでに気持ちは離れており、あとは勝つかわからないが兄そるを見届けて今日は休憩しようかな、と考えて本命のブラックジャックの卓の観察をしていると、周りが軽くざわついたので僕も慌てて目を戻す。
すると、兄そるが丁度チップの山を前に押し出しているところだった。
(・・・・うわぁ)
これは相当良い手なんだ、と僕は内心で喜んでいた。さっきの僕のスリーカードにかけたチップのゆうに3倍はある。僕がポーカーに対してそんなに勝負する気がないとはいえこの差は結構な額になるはずだ。
確かここは低レートとさっき教えてもらったし、チップの計算をすると、最初は本当に百円二百円の世界だ。僕が一気にかけたのは7、8千円はあったから、彼が今押し出したのは三万円弱ということだ。金額だけ見ると大したことはないが、今までこのテーブルでやりとりされていた金額を考えるとかなり圧倒的だ。
そうして韓国人の彼はそのチップを見て少し考えると、ゆっくりとした手つきで同じだけの金額をかけてきた。
彼も良い手なんだ、と僕は驚くのだが、その驚きよりも早いくらいで、兄そるはさらにチップを一万円近く上乗せした。
そのあまりの即断に僕はさらに驚かされる。これはスリーカードとかでなく絶対勝つであろう手なのだろう。きっと最低でもスリーカードで、フォーカードとかフルハウスレベルなのかもしれない。と思ったのだが、場にあるカードは一枚追加されて♡8が増えていただけ。
今の段階でフラッシュはどうやっても作れないから、数字だけ考えると2、5、8、9。
できていたとしたらストレートだろう。今の時点で一番強い役ができているのだろう、と僕は頷いた。確かに場のカードは悪くないし可能性は十分にある。
そして、韓国人の彼も同じ考えに至ったのだろう。諦めたように渋々頷きながらカードを捨てる。
軽く放ったカードが捨てられたカードに弾かれ表になる。そこには9のカードが2枚あり、スリーカードまではいったのだろうということがわかった。確かにかなり強いが、記憶ではストレートの方が強い。あの速攻での賭け金上げは諦めざるを得ないだろうな、と納得してしまう。
するとチップを大量にかき集めた兄そるが立ち上がり、僕の肩を叩いた。
「丁度いいし俺は飯にしようと思うんやけど、一緒にどうや?」
「あ、是非」
飽きてきたところだった、というわけにはいかないが休憩にはいいだろう。
それにご飯を食べたらいいきっかけだから僕はブラックジャックに行く、と言いやすい。
そんな風に考えながら僕は彼についていきレストランまで歩いていった。
どうやら彼は友人との待ち合わせをしていたらしくこれ以上長くは続けられなかったそうだ。なおのことブラックジャックに行くには丁度いいかな、と考えながら料理を待っていると、兄そるは興味津々と言った表情で僕を見つめた。
「そういや、アカヤギ君は何目当てでカジノに来たん?単純に観光?」
「いいえ、実は・・・ブラックジャックで勝負しようと思って」
そうして僕は素直に経緯を話した。詳しくは伝えなかったが事業で失敗してやることもなかったので、以前カウンティングの勉強をしたブラックジャックで勝負をする、と。
「ラスベガスに行った時は負けてしまったんですけど、稼げると思うんですよね」
そんな僕の意見を彼は嬉しそうに頷いて聞いていた。
「俺も弟と友達とブラックジャックとかバカラして遊ぶよ。カウンティングは確かに良いよなぁ」
「・・・なのにポーカーするんですか?」
それは皮肉でもなんでもない意見だった。稼げるとわかっているのならばブラックジャックをすればいいのに、というつもりで伝えると、兄そるは気を害することもなく笑っていた。
「はっはっは。まぁなぁ、でもポーカーの方がずっとずっと楽しかってん。アカヤギ君は素直にどんな感想やったか教えてくれる?」
「・・・素直に、ですか」
僕は申し訳ないけれどいい感想は言えそうになかった。
いや、楽しくないわけじゃない。稼げるかどうかもそこまで本気で勉強しているかもわからない。でも、いい感想ではなかったのだ。
「かなり運要素がすごく思えて・・・。結局勝つのは手が強い人じゃないですか。それでいい手が来るのを待つだけな気がして・・・」
それを聞いて兄そるはどこか思惑通りだとばかりに余裕のある笑みを浮かべ、人差し指を左右に振った。
「いやいや、それがそうでもないねんて」
「・・・そうですか?でも、勝つのはさっきの兄そるさんみたいにストレートとか引かないとダメじゃないですか」
「・・・ストレート?」
「??最後の大勝ちした勝負ですよ」
もはや忘れていたのか、と呆れながら伝えると、兄そるはさらに嬉しそうに大きく笑った。
「あはは!そこがポーカーの面白さなんやって!」
「・・・?」
強い手を引くことが気持ちいい、とかだろうか。
言葉の意味を探っていると、兄そるはもったいつけて二度ほど咳払いをした。
「最後、場には何が出てたか覚えとるか?」
「ええ、と・・・2、6、8、9・・・で、フラッシュができない感じだった、かな」
思い出しながら伝えると、それには兄そるも驚いたように軽く呆けていた。
「結構意地悪のつもりやったんやけど、覚えとったん?」
「まぁ、参加してなかったからゆっくり考えられましたし」
「いや、にしてもそこまで覚えとるってことは、しっかり考えてた証拠やな・・・」
感心、と口に出しながら兄そるは先程の話に戻った。
「さっきな、俺の持っていたカードは♡Aと、♡Jやったんよ。最初は数字も強いしスートも揃ってるからなんとかなるなって勝負を始めたんやけど・・・コミュニティカード、場にあるカードが全然良くなかったやろ」
うまくいかんな、と話している兄そるだが、僕はその前の言葉で思考が止まっていた。
「ちょ、ちょっと待ってください!A、Jって・・・え、ワンペアにもなってないじゃないですか!」
「ふふ、そう。これがテキサスホールデムなんや」
嬉しそうに笑う兄そると対象的に僕は顎を掴みながら下を向いて考え込んでしまう。
「いや、だってそんな・・ブタであんなに賭けられるなんて」
「ちなみに、テキサスホールデムにブタは無いで?一番弱い役はハイカードっていう数字で一番大きなやつで勝負するのがあるからな」
そんな兄そるの追加情報も右から左で、僕は先程の勝負の立ち回りを考えていた。
「・・・・・だってあの人はスリーカードだったし、いや勝負中はもちろんわからないけど兄そるさんのレイズにも少し悩んで乗ってきてたし・・最強でないにしても強い役だったのは僕でもわかった」
ぶつぶつとつぶやく僕のことをニコニコ見つめてくる兄そるの視線を感じながら僕はさらに夢中になって考えていた。「スリーカードじゃなくてセットって言うんだよ」なんて揶揄うような追加情報も耳にせずに。
「そもそも最初にあの人は確か賭け金をあげていたはず。その時点でなかなか強いんだなって僕でもわかったし。じゃあ賭け金をあげる理由は・・・ブラフ?」
確認するようにつぶやくと、兄そるも嬉しそうに手を叩いてくれた。
「うんうん、すごいな。やっぱり勝負しにきてるだけあって・・・テキサスホールデムで勝つ方法は二つあるんや」
そう言いながら彼は人差し指と中指を立てた。
「まず、相手より強い役を揃えること。当たり前だけど何のペアにもなってないハイカードとワンペアだったらそれだけで勝ちや。もう一つは、相手を降ろすこと。例えば相手がストレートフラッシュっていう最強の手で、自分がハイカードだったとしよう。でも、相手が降りてくれればそれだけでこっちの勝ち。何のペアもない手が何にも勝てる最強の手になるんや」
これが楽しい、と心の底からの笑顔で彼は呟いた。
「自分のプレー解説なんて恥ずかしいしプレー中ならバッドマナーやけど・・・最後の勝負、相手が強いのはわかった。でも、途中の賭け金の置き方とか表情とか見て、「勝てるだろうけど、負ける可能性もあるなぁ」みたいな感じだと判断した、そこでこっちがいかにも最強の手だと教えるために敢えて考えずに速攻でチップを置いたんや」
「・・・なるほど」
僕は何度も頷いていた。いつの間にか彼の話とさっきの勝負に夢中になっている僕がいた。
「それに、何試合か見ていて、あの人ってあくまで楽しんでるだけの人っていうこともわかったんや。だから無駄に勝負するなら降りるっていう性格っていうのもわかっとったから、だからあんなこともできたんやな」
「そこまで・・・!」
確かに彼は始める前にあの対戦相手の韓国人と軽く談笑していた。そこから勝負が始まっていたのかと思うと面白くてならなかった。
「ふふ、どや。テキサスホールデム、おもろいやろ!」
「はい、はい!」
何度も僕は返事してしまった。それだけあの勝負と今の話、そしてテキサスホールデムに一瞬でのめり込んでしまっていた。
「もし興味あったらやってみるとええ。今日ずっと見てる限り才能は間違いなくあると思うで。あとはどれだけ勉強して努力できるかやな」
そう言いながら彼はジャケットの内ポケットに手を入れて、一枚のメモを取り出した。
持っていたペンで軽く何か書き込むとそれを僕に差し出してくれる。
「もし何か困ったことあったらここを訪ねてみ。俺今マカオと日本を行ったり来たりやからここに来てくれれば俺の所在もわかるし・・・何よりもしこの道に進むんなら面白いところやで」
礼を言いながらメモに視線を落とすとそこには住所と軽い地図、そして雀荘ポンと書かれた文字だった。
「雀荘、ですか?」
「なんや、麻雀は嫌いか?」
そんなわけがない。ある意味で僕の原点である競技だ。そこから僕は今までの経験なんかも話すと、彼も痛く喜んでくれたようで友人の方が来るまで時間がむしろ足りないくらいだった。
いつかまた話したい、いつか一緒にカジノに行きたい。
そんな風に思えたことが今回の旅行の最大の思い出になるのだった。

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