見出し画像

名探偵コナンの映画で、「弁護士は肉親の弁護はしない」と言っていましたが、本当ですか?

先日、劇場版最新作の「黒鉄の魚影(サブマリン)」を見てきました。

やはり黒の組織絡みはテンション上がりますが、過去作オマージュのシーンでの灰原のあのセリフだけは、良くない意味で鳥肌が立ってしまいました。

さて、問題のセリフは、2018年公開の劇場版第22作「ゼロの執行人」の中の妃英理のセリフですね。

「なぜ小五郎の弁護を引き受けないのか」という蘭の問いかけに対して、英理は次のように答えています。

弁護士はね、肉親の弁護はしないの。

客観性がないと裁判官に判断される可能性が高いからよ。

つまり、私があの人の弁護を引き受けると、かえって不利に働くかもしれないのよ。

肉親の弁護が「できない」ではなく、「しない」と言っているのは正しくて、ルール上できないことはありません。

では、弁護士一般が肉親の弁護を避けているかというと、そのような統計データには触れたことがないのでわかりません。

中には「近しい関係の人の弁護人や代理人はしない」と決めている弁護士もいるのでしょう。

ただ、あくまで推測ですが、当事者との関係性や事案の内容を踏まえて判断するという人が多いのではないでしょうか。

一番引っかかるのは、弁護を引き受けない理由が「客観性がないと裁判官に判断される可能性が高いから」という部分です。

「客観性」の意味内容にもよりますが、この文脈からすると、弁護士が肉親であることそれ自体で客観性がないと裁判官に判断されるというように読めます。

しかし、そもそも弁護士は、裁判官などと違って当事者との間に「客観性」が要求される立場ではありません。

むしろ、依頼人の有利になるように、依頼人に肩入れして活動しなければならない立場です。

裁判官にしても、弁護人や代理人が当事者の肉親であるということだけでそちらを不利にするという方がよっぽど客観性に欠けると思います。

当事者と弁護士の関係性より、当事者と証人の関係性の方が裁判官の判断にとっては重要でしょう。

百歩譲って、「客観性がない」の意味が、「肉親だから気持ちが入りすぎて冷静な判断力を失い、適切な証拠の評価や理論構築ができなくなっている」ということであればわからなくもないですが…

ただそれだと、過去に小五郎が殺人の容疑者になった事件で、現場に居合わせた英理が冷静な判断で小五郎のピンチを救った場面と矛盾してしまいますし、無敗の敏腕弁護士という英理のイメージにも合いません。

今作では、英理に引っ込んでおいてもらうために「それっぽい」理由をつけたということなのだと思いますが、すこし引っかかったシーンではありました。

事務所を持たずに携帯だけで仕事をする「ケー弁」なんてのも現実には存在しませんし、コナンの世界には、我々の世界と一緒のこともあるし、違うこともあるということですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?