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帝都東京・隠された地下網の秘密

日々使われる地下鉄網が、異なる目的で過去に建設された秘密のトンネルを改造したものだったら?
最近オープンした地下構造施設が、戦前戦中の要塞だったら!?

それだけで昔の男の子の気持ちを鷲掴みするかもしれない。ところが本当に、日常乗り換える地下鉄ターミナル駅が海軍の大深度要塞跡だったりする、そんな話が満載の本書。

私の出会いは15年ほど前だと思う。
なんの気なしに図書館で手にとったところから、取材による実録と憶測と、わずかに著者の大げさな勘違いによる妄想。地底にある別世界の東京にワクワクしたものだ。
ほどなくAmazonで購入して、続刊も注文した。

著者の秋庭俊氏は、朝日の海外特派員出身。
そもそもこのテーマを研究し始めたきっかけは、丸ノ内線トンネルのカーブだった。
戦後に建設、開業したはずの丸ノ内線の一部のカーブが小数点のアールがあるのだ。通常はアール200mカーブで構成されているのに、一箇所だけが小数点を示している。調べるとそれはメートルではなく、ヤードの値。
一体いつ設計され、いつ建設されたのか。疑問に挑んだところから、東京の地下は政府内務省や陸海軍のトンネル、地下要塞だらけだという話題の尽きない作品だ。

内容を羅列するだけでも、行数はここまでの数倍になる。ぜひ手にとって妄想とリアリティを楽しんでもらいたい。
都市計画、戦史、地下鉄の好きな人には特にお薦めする。

絶版 文庫による縮刷版入手可

帝都東京・地下網の秘密
秋庭俊
洋泉社 2002年

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