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億を稼ぐ男

もう15年前のこと。一人でふらっと訪れて静かに寿司をつまみ、酒を飲み一人の時間を楽しんでいるAさん。6月と7月にしか来ないから競馬関係者なんだと聞かずにも分かっていた。もう何年も来ているのに仕事の話すらしなかった。

しばらく前から競馬場の来賓室で馬主さんの懇親会で振舞われる食事を担当させていたにもかかわらず、競馬のルールも知らず興味もなかった。

しばらくすると店で居合わせたお客さんから

「ファンなんです。」

と声を掛けられて、Aさんは有名人なんだってことが分かった。だけど有名人なんだろうと無名人なんだろうが私には関係ない。

こんな事もあった。スポーツ新聞の記者さんがAさんと居合わせて私たちの会話を聞いていたのだけど、「ママ凄いね、あんな人をからかって」というのではないか。なにが?

Aさんは寡黙なんだけど、ソフト目にからかうと活き活きしてくるんです。

記者「あの人、数億円プレーヤーなんだよ」

うちには、ロマネコンティだとか超プレステージシャンパーニュなど1本もない。お金持ちだろうが、人の胃袋の大きさはだいたい同じ大きさで、かけ離れた量を食べられるわけでもないし、大幅に金額の大小があるわけでもない。

数億円稼ごうが私にくれると言っているわけではないし、私の家を建ててくれるわけでもない。


そしていつの日から、Aさんは女性を連れて来るようになった。

殆どは毎度異なる女性なんだけど......。

でもね、Aさんはおとなしく紳士的な男性です。

必ず連れて来る女性はAさんを狂ったように大好きで、いつも女性側がメロメロと言いますか、芯を抜かれたイカのようにAさんにしなっている。ここで普通のオジサンなら喜んだ表情を見せるところだけどAさんは一切変わらない。

Aさんが中座すると急に狂った女性たちは真顔になり私に

「他にどんな女性ときましたか!!!!」と詰め寄ってきます。

何故、女性たちはこんなにAさんが好きなのか..........。

よく見て!Aさんはオジサンです。

Aさんが地方に来るのを自費で先回りして空港で待ち構えていた女性もいました。何としても理解しがたい。

狂った女性「女将さん、ネットでAさんを検索してみてください」というので仕方なく見たら、収入が17億円と出ていた。

これが骨抜きの理由か。もしくはAさんの人柄か。






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