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チェンジマネジメントは主語を「システム」ではなく「人」で考えることだと思う

例えばSalesforceやChat GPTのように新しいシステムが導入されたとき、現場でそれが使われていないという状況に身に覚えがある方は多いのではないでしょうか?

私自身、これまでのキャリアで事業会社で新システムや機能の導入に携わることがありました。

そんなときに導入する側であるシステムチームと使う側である現場メンバーの間にとらえ方や情報量にギャップが生じて、結果システムが使われていないという場面の経験があります。

本来、新しいシステムや機能の導入のプロジェクトではシステムを開発すること使う人にそれを使ってもらうことの両方の取り組みが必要です。

しかし、どうしてもシステム開発に掛ける時間が多いので、ついついシステムを主語に考えがちです。

結果的に使われないという事象が発生したときにも、システムの改修などに走りやすくなります。

ここで見落とされているのは、システム自体には問題がなく、もう一方のほうに問題がある場合です。

それは、業務を新しいシステムに切り替えるというチェンジを現場メンバー一人ひとりが実現するための取り組みです。

これは人を主語にして考えることです。

言い換えると以下のような考えにおさらばすることです。

「システムが良ければ皆が使うのが当然」

では人を主語にするとはどんな風に考えることなのか、今日は共有したいと思います。

Salesforceの導入を例に説明をしてみます。

今回は以下のようなケースを想定します。

  • 業種:銀行

  • 対象部署:法人営業部

  • チェンジの内容:

    • これまでの運用:顧客情報や営業日報について個人でエクセルで管理。全体向けには、部内の事務のメンバーが全員分を合算する作業をしている。

    • 新しい運用:Salesforce上に顧客情報や日報を記録する。誰かが合算等をする必要もなく、Salesforceのレポート機能を利用すれば即時で状況が確認できる

導入した後の反応

導入して1週間、システム部のメンバーの耳に以下のような声が届き始めました。

システム部のメンバーAさん:
「あれ、Salesforceに全然データが入力されていないぞ!
なんで彼らは使わないんだ・・・」

営業部のメンバーBさん:
「入力が面倒くさい。エクセルのほうが便利でよかった」

営業部のメンバーCさん:
「入力はしているけど、業務効率が落ちている。なぜこれをやらなきゃいけないんだっけ・・・」

営業本部長Dさん:
「投資コストを掛けたのにこれで回収できないのでは?」

使われない原因はシステム自体の問題よりも、その運用が変わる変更自体(チェンジ)を使う人に適切にナビゲートしてこなかったことが原因の可能性もある

システム部門の方の場合、上記の状況が起きた時まずシステムに原因を求める方が多いのではないでしょうか。

そのときに、一歩下がって考えるべきことは何か?それは、運用の変更自体を適切に使う人にナビゲートしてきたかという視点です。

データを入力してもらえていない理由は、システムが使いにくいということよりも、前提としてそれを使う人の以下の疑問に答えていない可能性があります。

「なぜこの運用に変更をするのか?」
「この変更によって自分自身にどんなメリットがあるのか?」

この両方に対して明確なメッセージを考え、それをちゃんとコミュニケーションする必要があります。

チェンジマネジメントの中ではチェンジ戦略を策定します。その中の一つにコミュニケーション戦略があります。

コミュニケーション戦略では、ステークホルダーごとにチェンジのインパクト、彼ら自身のメリット、キーメッセージ、コミュニケーションするチャネル、実施するタイミングを考えます。

それくらいコミュニケーションというものに重きを置いています。

今回のSalesforce導入においてはそれが甘かったことが原因かもしれません。

・プロジェクトに携わっているメンバーへは導入の目的を共有していたが、ユーザーに対しては使い方のトレーニングしかコミュニケーションしていなかった。
・使いやすい機能を実装して、マニュアルを作成して、トレーニングをすることがシステム部のやるべき仕事だと思っていた。

人は変化することに対して多少なりとも反発することがある、という前提で考え、それをどうやって最小限に抑えるかを意識的に考える

ここが私が大事だと思うポイントの1つですが、
チェンジマネジメントでは人間中心の思考に立ち返ります。

例えば、こんなものです。

「人ってどういう考え方をするんだっけ?」

その1つが、変更することに対して程度の差はあれ反発するということです。

チェンジカーブ:変化するプロセスの中で一度ドロップして、変化に適応する中で上にあがっていきます。

なぜ変化に反発するのか?

例えば、これまで自分でエクセル管理していたときに自分の作業しやすいようにエクセルを加工して自分に最適化している人がいるとします。

それがSalesforceに変わると、自分が今まで築き上げた工夫(エクセルの加工)という財産を失うことを意味します。今までそのエクセルが源泉となって他の人よりも効率が高い仕事ができていたとしたらなおさらです。

また、例えば、Salesforceを一度も触ったことがなく聞いたこともない営業部メンバーがいるとします。

Salesforceって一体どんなものなのか情報がなく、自分の業務がどれくらい変わるのかが想像もつかない。そんな中で先の見えない怖さから反発することもあると思います。

このように、チェンジすることにより、今までの強みを失ったり、先が見えなくなっていたりして、抵抗心が出てくるのは自然なことです。

それに対してチェンジマネジメントはどう対処するのか?

一言でいえば、人が変化のプロセスの中で反抗したり混乱をするという自然な反応を前提に、それがなるべく最小限になるように前もって準備をするということです。

具体的には以下のようなことを計画します。

・チェンジケース
今回の例でいうと、Salesforceを導入することの目的・ビジョン。
これをしなければならない理由は何か?

・チェンジインパクトの評価

・スポンサーエンゲージメントプラン
→社長や事業部長などが変化を後押しするように積極的にチェンジに参加してもらうようにするための計画

・ステークホルダーエンゲージメントプラン
→チェンジに関係するチーム、メンバーに対してどうやって関与、フォローアップしていくかの計画

・コミュニケーションプラン
→どんなメッセージをどうやって伝えるかの計画

最後に

今日はチェンジマネジメントのエッセンスとして、「人」を主語に考える、というテーマで例をもとに説明をしました。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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