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薬のお話~フィラリア予防薬のしくみ~

こんにちは。夏は蚊が鬱陶しいですよね。特に寝ているときに蚊のぷーんという音を聞いただけで、なんか眠れなくなったり(泣)。痒くなければいいのにって毎年思います。そんな蚊が媒介する犬の病気に「フィラリア症」がありますね。みなさんの犬はしっかり予防されているかと思いますが、今日はフィラリア予防薬のお話をしたいと思います。

フィラリア症は犬糸状虫(フィラリア)という乳白色の細長い線虫が肺動脈に寄生する感染症です。犬以外にもネコ科、クマ科、フェレットなどにも寄生すると言われており、日本ではトウゴウヤブカ、アカイエカ、ヒトスジシマカなど16種の蚊が媒介します。蚊は感染犬の吸血時にミクロフィラリアを獲得し、蚊の体内でミクロフィラリアは第3期幼虫まで成熟します。その後、第3期幼虫は蚊が他の犬を吸血する際に移動し、感染します。フィラリアが成熟成虫になるまでに感染後6ヶ月かかると言われています。

病院で観察されたミクロフィラリア

フィラリア予防薬は蚊の吸血時に犬の体内に侵入したフィラリアの幼虫を駆除するために服用します。つまり、一時的にでも犬の体内に幼虫は侵入しており、毎月その幼虫を駆除することでそれ以上の感染を予防することがこの薬の仕組みなのです。毎月の投与がとても重要なお薬になのです。

動物病院ではフィラリア予防薬の服用を開始する前に、必ず検査を受けるようにお話しています。これは「フィラリアが感染していないこと」がフィラリア予防薬服用を始める基準となるからです。

フィラリアは成熟成虫になると繁殖し、ミクロフィラリアをたくさん作りだします。ミクロフィラリアが大量に体内にいる状態で予防薬を服用した場合、ミクロフィラリアが一気に死滅し、循環不全やアナフィラキシーショックを起こしてイヌが急死する危険があります。

また、フィラリア予防薬もたくさんありますよね。どれがいいか悩まれることがあると思います。一つだけご注意いただきたい点があります。それは「コリーやオーストラリアンシェパード、シェルテーなどのコリー犬種の中にはイベルメクチン(フィラリア予防薬の成分)の投与により傾眠(うとうとしている)や運動失調などの神経毒性を示す個体がいる」ことです。これは薬物の体内動態に関係する蛋白質(MDR1(P-糖蛋白))をコードする遺伝子にホモ接合性に変異を持つためです。すべてのコリー犬種が発症するわけではありませんが、イベルメクチンは避けておくべきでしょう。

また、ワクチン接種とフィラリア検査を同時に動物病院で行う方も見てくださっている皆さんの中にいらっしゃると思います。できれば、ワクチン接種後1~2週間あけてから、フィラリア予防薬を服用されることをお勧めします。同時に投与した際に犬が体調を崩した場合、原因がワクチンの副作用なのか、フィラリア薬が合っていないのか分からなくなってしまうからです。

とても暑いですが、楽しい夏を、犬も、皆様も楽しんでいきましょう。

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