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【詩】皮

服を脱いでしまえばみんなおなじヒトなのに

偉そうにふんぞり返って
尖った革靴を光らせて
脚を組み直して
大声で電話をしているスーツの男
カフェの店員を手招きして
エスプレッソを指差す
ラックからレオンを取り出して
あるページをスマホで撮影して
退店する時雑誌も戻さず
小銭を投げて支払っていった
迎えにきた左ハンドルの
真っ赤な車の運転席から降りてきた
女のボディーラインの強調した
タイトワンピのいやらしさ

ある夜の銭湯にて
携帯電話でゴルフのスコアを自慢しながら
脱衣所に入ってきた男の白いTシャツは
胸にだけフランスのハイブランドのマークがプリントされていた
その横で私は定価980円のその上セールで半額になったグレーのTシャツを脱いでいた

そういえばいつからネズミ色と呼ばなくなったんだろう
私もまわりも

なんて考えてたら
私がドブネズミにおもえてきちゃって
途端におかしくって
肩で笑ってしまった

そうこうしているうちに
浅黒い男は汗と香水の混ざった匂いを残して大浴場へと向かっていった

銀座 六本木 南青山 白銀台

金持ちばかりが集まる街で
着飾った人の波を眺めていた

マックのアイスコーヒーを飲みながら
三足九百円の靴下を履いて
ローラーがささくれたキャリーケースに座って

どんなに気取って 見栄張って 着飾っても
服を脱いでしまえばみんなおなじヒトという生き物なのに
香水でも隠しきれない匂いを残す裸のヒトなのに

やりきれない時
この街にいるみんな
裸になってしまえばいいのにと思ってしまう









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