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孤立する性的マイノリティ 今 学校で何が起こっているのか


文部科学省が性的少数者の子たちへの理解を高めようと積極的な取り組みを始めている。

今月4月1日には、性的少数者の中に「同性愛」や「両性愛」を含むことを明記し、小中高校の教職員向けの手引を公表した。

手引きは昨年の4月に出された「文科省が性的少数者の子ども全般に配慮を求める通知」に続くもので、性同一性障害への対応や過去の支援事例、学校から寄せられた疑問にQ&A形式などが記載されているという。



文部科学省が昨年に続き、二度もこのような取り組みを進める背景には、学校での理解がなかなか進まない現状がある。

文科省が2013年度に初めて実施した全国調査によると、自身の身体の性別に違和感を訴える小中高校生は少なくとも606人おり、このうち性同一性障害と診断されたのは165人いたという。

だが、こうした子どもがいる学校の4割が「特別な配慮がされておらず、学校で性的少数者の問題が取り上げられることは少ない。



2011~13年に行われた教員約6千人を対象にした日高庸晴教授の調査結果では、6~7割の教員が教える必要を感じながら、実際に教えた経験者は1割」にとどまっていることがわかっている。

現在では、啓発に取り組む教育委員会や学校も増え始めているものの、全国的な規模ではまだ取り上げられる機会が少ないのが現状だ。



文部科学省が積極的に取り組む中で、なぜ学校現場で性的少数者への理解が進まないのだろうか?

一つの要因としては、教職員側の性的少数者に対する「理解不足」が挙げられる。


「性的少数者」は、生まれもった性(体の性)と心で感じている性(心の性)が異なる人のことを指す。

一般的には同性愛者、両性愛者、無性愛者、トランスジェンダー(※かつては「性同一性障害」と呼ばれていたが、現在は「性別違和」と表現される)などが含まれ、

最近ではそうした人たちを表すときに使う言葉として、「LGBT」という言葉が使われるようになっている。


「LGBT」ははそれぞれの言葉の頭文字をとった総称で、海外では性的少数者を限定的に指す言葉として広く知られている。

「L」… レ ズ ビ ア ン →女性同性愛者。女性で女性を愛する人。
「G」… ゲ イ →男性同性愛者。男性で男性を愛する人。
「B」… バイセクシュアル →両性愛者。愛する人が同性の場合も異性の場合もある人。
「T」…トランスジェンダー→生まれたときに法律的社会的に割り当てられた性別とは異なる性別を生きる人。
(自分自身が認識する性別と身体の性別が一致しない人のことを指す医学上の診断名「性同一性障害」より広い概念で、トランスジェンダーの人の中には、性同一性障害の診断を受けていない人もいる。 )
(※「神奈川県 性的マイノリティについて理解する」より抜粋)


電通総研が全国 20 歳~59 歳男女、約7万人を対象に行った「LGBT調査 2012」によれば、「LGBT」の出現率は 5.2%、つまり 約 20 人に1人の割合で出現していることが分かっている。

つまり、40人の生徒がいる教室ではそのうち2人、20人の職員がいる会社ではそのうち1人がLGBTということになる。

こうした事実をふまえると、「学校」という多くの生徒が在籍する現場で、「性的少数者」がほとんど理解されていないのは異常とも言える。

ほとんどの性的少数者は、教師からの援助を受けられず、学校で孤立した状態になっている。


性的少数者の子どもを支援する民間団体が、2013年、性的少数者約600人にを対象にした性に調査した結果では、約7割がいじめの被害を受けたと答えたという。

被害を受けた生徒が「不登校」や「自殺」へと発展する例も多々あることだろう。

文部科学省が学校に対して、積極的な取り組みを始めているのはこうした事実を踏まえ、被害の拡大をくい止めるためでもある。



しかし、先に述べた通り、文部科学省いくら学校側に通知を出し、性的少数者に対しての理解を促しても、積極的に取り組もうとする学校は少なかった。

おそらくそうした現状は、教職員向けの手引を公表しても、さほど変わることはないだろう。


この問題は、日本社会で長い間隠蔽され続けてきた「性の歴史」の問題と密接に関わっている。(続く)





参考:

<朝日新聞ニュース記事>

・性的少数の子、もっと知って 文科省、教員向け手引公表

http://www.asahi.com/articles/ASJ417G89J41UTIL06H.html

・「同性愛」「両性愛」、文科省の教職員向け手引に明記

http://www.asahi.com/articles/ASJ3Y7WPCJ3YUUPI007.html

・教職員向け手引に同性・両性愛を明記 文科省、新年度から活用

http://www.asahi.com/articles/DA3S12286048.html


<性的マイノリティーについての基礎知識>

・“20人に1人” LGBTを知ってますか?

http://www.nhk.or.jp/fukayomi/maru/2014/140510.html

・神奈川県 性的マイノリティについて理解する(PDF)

http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/757236.pdf


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