クジラの上でガッツポーズしてないか?

SNS社会の中に潜む「表現上の問題点」について


今、「表現する」ということで私の脳裏に浮かぶのは、一枚のクジラの写真である。

そこには死骸となったクジラの上で得意げな様子でガッツポーズを決める男性の姿も写っている。

クジラ死骸上でガッツポーズ 写真コン最優秀作品に批判

この写真が「生命の侮辱」などと全国から多くの批判を浴びることとなったのはもはや説明するまでもないだろう。

批判の中には嫌悪感を表すものや写真コンテストの趣旨に反する作品が選出されたことに対する怒りなど、さまざまな反応があった。

出品者が受賞辞退する結果になったのも当然のことだと言えるだろう。

クジラ写真とSNSとの関係

しかし、私にはこの写真がもう一つの事実を語っているようにも思えて仕方がない。


クジラの上でガッツポーズをとるという行為は非常に珍しいと言えるが、この写真を見たときには不思議と「驚き」がなかった。

なぜだろうか?

いろいろと考えた末、ふと思い当たったのがSNSで投稿されている写真とどこか似ている点があることだった。


フェイスブックやツイッターなどでは、ふだん目にしないような珍しいものが題材とされることがあり、それと一緒に得意げなポーズを決めているものも多い。

そうした写真を頻繁に見ているうちに、私の目にはクジラの上でガッツポーズを決める写真も「同じようなもの」として映っていたのだった。


クジラ写真とSNSの共通点

クジラの上でガッツポーズする写真を選んだ道写真協会の女性会員は「選評」の中で次のように述べている。

「海岸に流れてきた?クジラに乗ってヤッタゼ!と言った得意のポーズの青年!滅多に見られない作品作りに成功されたと言ってよいでしょう」

ここでは、滅多に見られない「珍しさ」が評価基準の一つにになっている。そしてその評価の仕方は、「SNSで好評価を得る基準」と非常によく似ている。


SNSでは、誰もが知らない、見たことのない刺激的で珍しいものが重要視される。

そうした方がより多くの人たちの興味や関心をそそり、その結果、多くの好評価を得ることにつながるからだ。

そこでは、作品の内容よりも、より多くアクセスされ、いかにシェアされるかが重要になる。


SNSのプラス面について

SNSにプラスの面もあることはもちろん知っている。

さまざまな人と出会い、つながりを保つことで、新しい発見や自分の成長のきっかけを得ることもあるだろう。

あるいは、さまざまな人との「つながり」の中で、日常生活では解消しづらい孤独感を癒やすことにつながるかもしれない。

SNSにはそうしたプラスの面があり、それが多くの人たちにとって必要不可欠なものになりつつあることを私は否定しない。

SNSはアートじゃない

だが、「SNSで好評価を得る基準」がそのまま「芸術作品への評価」にすり替えられてしまうことについては、大きな疑問を感じる。

刺激的で珍しく多くの人たちに好感を与えるような作品であっても、時間が経てばいつの間にか消え去ってしまう。

本当に優れた作品というのは、たとえ同時代の人に理解が得られずとも、時代を超えて生き続けるものではないだろうか。

それらは、決して自分の名誉欲のために生み出されたのではなく、ただ自分にとって「よりよいもの」を生み出したいという純粋な情熱から作品を生み出されたものだ。


SNS全盛の時代でクリエイターが考えなければならないことは、自分がどこに向かっているのかということだろう。

SNSの評価基準が無意識のうちに入り込んでくる以上、今自分が行っていることがよりよいものを生み出すことにつながっているかどうかを常に意識する必要がある。


それがたんに多くの人たちの賛同を得るためのものであるとしたら、あのクジラの上でガッツポーズを決めた男のことを決して責めることはできないだろう。

それは「芸術への冒涜」であると同時に、自らの可能性を閉ざす「愚かな行為」にほかならない。




クジラ死骸上でガッツポーズ 写真コン最優秀作品に批判

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Burari

Note 時事コラム 2016

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