「地球星人/村田沙耶香」
ポハピピンポボピア?
出張帰り空港からのバスで東京の街を眺めていると、ビルにぎっしり詰まった四角い箱が「蜂の巣」のようにみえたことか私にもあって、もし巨人だったらあの窓を一つ一つ丁寧に指で突いて割って遊ぶだろうなと何の気なしに思った夜があった。決して荒んだ心でもなく、落ち着いて、むしろ幸福な気持ちを持って私はその明るい窓を見つめていたわけだけれども。ふとそんなことを思い出した。
ポハピピンポボピア星人が地球星人の中で「なにがあってもいきのびる」様を幽体離脱しながら見つめているような感覚にもなるし、私の中のポハピピンポボピア星人が、どこか、共鳴するような気さえして、そんなことにぞくっとしたりもした。少し安心した後に、不安になる。
地球星人🌏という生き物の、奇妙なグロテスクな吐息がふりかかってくる。
「でも私は地球星人」と言い切れるだろうか、みんなどこかに宇宙人の目があるのだろうか。
このお話を読んだ人と意見交換をしてみたいような、そっとお腹の中でぐるぐる回しておきたいような、そうしているうちに芽が出てきそうなので外に出してしまいたいような、そんな、いろんなものがずるりずるりとかきまわされる本だった。
だから読んだことある人はこそっと教えて欲しいし、読みたくなった人はこそっと教えてほしいし、「人」はどちらを指すのか教えてほしい。
そもそも「星人」って「ヒト」っておこがましい?でもそう表現するより他ない。
洗脳されていたり、足りなかったり。
工場の一つの歯車となったり。
たいへんである。
いきのびるのはたいへん。
でも、どっちが、本当にグロテスクなのか。
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