"Shadowless" Hasan Ali Toptaş (translated by Maureen Freely and John Angliss) (Bloomsbury)

『影なし』 ハサン・アリ・トプタシュ
(訳モーリーン・フリーリーとジョン・アングリス)(ブルームズベリー社)

 1995年に出版され、このたび初めて英訳されたこのカルト的人気を誇る古典作品は、マジック・リアリズムの視点で、読者の目をトルコの政治的消失へと向けさせる。
 16歳離れた床屋と少女が不可思議な失踪を遂げ、アナトリア半島の小さな村は混乱に陥る。過去と現在、現実と夢、一人称と三人称のあいだを、場面が滑るように進んでいく。街路はもつれ、住宅は縮み、花はめそめそと泣き、共同体は失踪した二人の記憶をつなぎ合わせてまとめることがほとんどできない。
 ときにもどかしくなるほど曖昧ではあるが、方向感覚を失った政治と社会の混乱を変幻極まりないかたちで喚起する、印象的な結末となっている。

The NewYorker [December.18&25. 2017]

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