学生の時に、初めてしたアルバイトはアパレルだった。

それは、おしゃれが大好きとか、
そういう純粋な気持ちではなくて。

わがままを言い、父に反対されながらも
留学に行くんだと言い切って入った大学で、
味方になってくれた母が払ってくれていた学費の足しになるようにと
仕事を探していたことがきっかけ。

とんでもないど田舎で、
まさしく「山籠もり」と呼べるような環境の中、
働き口は唯一電車とバスを乗り継いで1時間のショッピングモールであり、
当時の最低賃金ぎりぎりの時給のアルバイトばかりの中、
850円という値段が光り輝いて見えたから。

せっかく働かせてもらうのだからと、
もともと田舎育ちだったわたしはそれまで縁のなかった
「おしゃれ」を勉強しようと思い立った。

化粧も覚えたて、ヒールも履いたことのなかったわたしは、
雑誌を読み漁っても雑誌代がバカにならない、と思って
インターネットでELLEやVOGUEのコレクションの画像を見ることにした。

世界中でセレブ達が最前列に並んでみるファッションショー。
昔夜中まで試験勉強をしたあとに、テレビでひっそりとやっていた
ファッション通信というテレビ番組を思い出した。
タウンユースには向かない、デザイナーたちの
「服」という名の芸術たち。

細かく見ていくと、そのタウンユース向きではない芸術から、
トレンドが生み出されていることに気づく。

全身を覆うラッフルレースのドレス。
顔も見えないメタリックな生地で覆われたモデル。
大きな花を全身にまとったモデル。

そんな画像を見た次のシーズンには、
ラッフルレースのボリュームのあるスカートが流行り、
メタリックな靴や、バッグがあふれ、
大きな花柄のワンピースがどのブランドからも価格帯は違えどでてくる。

次のトレンドを見るのが楽しくなり、
どうやって取り入れるか考えるのが楽しくなった。
ファッションに正解はないけれど、
それでもやっぱり「上手」や「あたり」はあるのだ。

前置きが長くなったけれど、
ハンドメイド奮闘記としてマガジンを始めてから、
これから何をどういった方向で作っていくのかということを
考えている。

作っているアクセサリーを販売するとき、
”au petit Bonheur la Chance"
という名前を使っている。
フランス語で「小さな幸せとチャンス」
という意味のこの名前。
中学生の時に雑誌で見かけて、
いつか何かのブランドやお店に名前を付けることになることがあれば、
絶対にこれにしようと決めていた。

その時の気持ちを体現できるようなものを作りたい。

学生の時、いじめにあって
なかなかハードな中学生時代を過ごした。
（暗黒時代、と呼んでいる笑）
普通に過ごしているだけなのに、いろいろな悪意のこもったお手紙を
机に入れられたり、靴に画びょうが入っていたり、
どんどん人の悪意ばかりが近寄ってくるなかで、
強がりばかりがうまくなり、一方で自信だけはどんどんなくなった。

小さな幸せとチャンス。

強がって擦り切れていく気持ちに、
その言葉がやさしく響いたのだ。

暗黒時代を支えてくれた言葉。
いつか絶対小さな幸せを集めていけば、
きっと今の状況を打破するだけのチャンスになる。

そう思って過ごした時期は、
今の私を作った大きな基盤になっていると思う。

私が作るアクセサリーで、
鏡の中の自分にいつもより少しだけ自信が持てたら。
見ているだけで、少しだけ幸せになれたら。
そんなものを作りたいと思っている。

そこに登場するのがトレンド。

Diorのファインジュエリーは確かに
一生もの。
ただ、使う人は選ぶだろう。
すくなくとも、あこがれはするけれど、
わたしは画面上で職人たちの作業をDior.TVで見るだけで十分幸せだ。

つけてもおそらくあの本物の輝きと、
出来上がるまでの職人たちの努力や技量が
重なって作り上げられた美しさにきっと負けてしまう。

気軽にトレンドを取り入れられて、
それでいて「いつもの服」ともケンカしないアクセサリー。
そんなものを、いろんな人が手の届く値段でつくりたい。

まだまだどんなものを作るか決め切れていないけれど、
ここまで書いてきたことをテーマに
ものづくりをしていきたいと思う。

春はブレスレットから作りたいな。

だって重いコートを脱いで、
軽やかに腕まくりをして歩ける季節だから！

カラフルな色遣いに、さらりとしたシンプルでナチュラルなヘア。
大ぶりなイヤーアクセサリーと
じゃらじゃら重ね付けしたくなるボリュームのあるブレスレット。
ふんわりと広がるスカートに冬の間我慢していたヒールを合わせて、
暖かくなった世界を存分に楽しみたい。

#コラム #ビジネス #トレンド
#ファッション #アクセサリー #その先へ
#ハンドメイドアクセサリー #ハンドメイド