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ロズタリア大陸『聖魔戦争』その24

その23→https://note.com/akihi_gfl/n/n9c02abdab5da


『カネか?名誉か?それとも美貌か!?』

ひとまず客間に通して、アンジェリカをソファに座らせる。
自分はテーブルを挟んで反対側のソファに座って話そうとしたら、なぜか公女はそそくさと立ち上がって、わざわざ自分の隣に座り直して、ぴったりと身を寄せてきたのだった。
『はぁ~……、アンジェの奴、相変わらずだなぁ~』
普段からお気に入りの香水つけているせいか?
アンジェリカ自身は全く気がついてないが、自分にとってはこの匂いが強すぎて幼い頃から実は苦手だったりする。
『似合っているから注意しにくいんだよなぁ~……』
公女として、婚約者として品性や雰囲気から外れている香りならば、召し使い通して種類を変えたり、量を抑えるよう王太子として【指導】も可能だが……
女神アイラ様の生き写し!やら、大陸一の美姫!!は伊達ではナイ。
姿勢も話す身振りなど、徹底的に将来の王妃として教育されている。婚約者である自分以外の男性には絶対、こんな甘えた態度はしてこない!!だけに厄介でもあった。
だが、今回はもう事情が違う。
『それを公女自身に理解させる為にもガツン!と思ったことを伝えるべきか……』
ベリっと引き剥がし、アンジェリカの肩をがしっと強く掴む。
「良く聞け、アンジェリカ!
俺はお前と結婚する気は元からなかった!」
若干の痛みを感じ、公女は驚愕する。
「えっ……?」
「俺はどうしてもお前と夫婦になる未来が子供の頃から思い描けなかった。
何よりお前は大陸一の美貌!
それに比べて俺はなんだ?
父上を亡くして以来、放蕩三昧で金貨一千億枚の借金すらこさえた男だ」
「いっせ……えっ!?」
天文学的な金額に近い値段を聞き、一瞬アンジェリカの頭が真っ白になる。
構わず自身の行いや巷での評判などをつらつらと言ってきかせる。
「俺は博打でスッテンテンになり、カネの為に悪徳商人や家族、従業員達……結構な人数を殺戮しまくった。
仮にお前が望んだとしても、俺の手は血にまみれすぎている。周りが婚姻を許すはずがないんだ!!」
「殿……下?」
いつもと様子や口調が違う真剣な態度に公女は戸惑い始める。
「仮に全ての借金を払い終えて、父君の所に挨拶に行ったとする。
俺はどの面下げて頼むんだ?
母上筋の俺の叔父上は医療都市の大公、殺戮はご法度!もう二度と親戚として足を踏み入れるコトは許さない!!
結構、前に縁を切られているんだ」
芸術都市の大公国に婿養子にいったところで、かつて1度、既に賭博に溺れた男を誰が支援する?
カネなし!権力もなし!あるのは【死神殿下】の異名だけ!!
婚約者として振る舞う必要はもうない。
「アンジェリカ……お前ほどの美貌、そして見事な竪琴弾きの才能だ。
言い寄る権力者や才能ある若者は多い。
数日後に控えたパーティーで、お前のほうから一方的に俺に対して、婚約破棄を宣言しろ。
そして、芸術都市でいつまでも幸せに暮らせ」
ぽろぽろ……
ようやく相手の言わんとしている内容を理解した公女のサファイアのような美しい瞳から大粒の涙がいくつもあふれ流れ始める。
「とにかく!
俺以外に金持ってる若くて美形の権力者の息子と一緒になってくれ!!」
じゃあな!
そそくさと立ち上がって、部屋から逃げ出そう!とするも、公女のほうが反応が早かった。
シャールヴィ王子の腕をがしっと掴んでそのまま、胸元で大きく泣きじゃくりはじめたのだった。
「でんか……そ、ん……な……あんまり……で、す」
でぇんかぁ~!!
うわぁ~ん!!!!

数時間ほど、べったりくっついて泣きじゃくり、「お金じゃない!!
王妃目当てでもない!!
本当に心から好きだった
貴方だけのお嫁さんになるってずっと、ずっと決めてたのにぃ~ーー!!」
ヒドイ!裏切り者!!
やっぱひあの女!?ちんちくりんの薬剤師!?
なに、あんたもやっぱり幼女趣味だだたの!?
『なにいってんだ!?コイツは!』
シャールヴィ王子は自分の胸をぼこすか殴りつつ、器用に泣きじゃくる公女を『こればかりは自分が悪い』
全面的に非を認めて、彼女の気が済むまで泣き晴らさせ、殴られ続けたのだった。


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