the band apart 7th album『謎のオープンワールド』interview

来る1月21日、いよいよリリースされるthe band apartのニューアルバム『謎のオープンワールド』。タイトルからして、果たしてどんな内容なのか期待感を掻き立ててやみませんが、ひと足先に聴かせてもらった第一印象としては、とにかく“グッドソング”が目白押し! バンアパならではの躍動感とダイナミズム溢れるアンサンブルはもちろん、それが以前よりシンプルに組み上げられたことでキリリと引き立ったメロディラインにきっと心躍らずにはいられないことでしょう。全編日本語に挑んだ前作『街の14景』のアプローチを踏襲しつつ、また新たな世界を切り拓いてみせた本作について、頼れるモヒカンドラマー・栄一木暮氏に話しを聞いてきました。例によってインタビューの2/3ほどは無料公開とさせていただきましたので、来るべき音源を心待ちにしながらじっくりとご一読ください!

interview & photographs by 奥村明裕

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――まず『謎のオープンワールド』というタイトルなんですけど、これは、確実にふざけてますよね?


栄一木暮 ふざけてないよ(笑)。曲順を決める時に、いつも以上にいろんな曲調と歌詞があったから、どうしようかと思って。『グランド・セフト・オート』みたいなゲームを“オープンワールドゲーム”って言うらしいんだけど、そういう現実と写し鏡になってる仮想空間で、主人公が色々な場面を観察して感じたりしたことの記録、みたいなコンセプトを考えたんだよね。タイトル『オープンワールドの観測(仮)』みたいな。けどまーちゃんに「『〜の観測』って中ニ病っぽいね」って言われてやめた(笑)。それでみんなでどうしようかって話してる時に、いつの間にか俺ら世代のファミコンゲームの話になって。「『ミシシッピー連続殺人事件』とか、『アトランティスの謎』っていう激ムズのゲームがあったな」とか、笑いながら話してて。『アトランティスの謎』は川崎が言い出したんだけど、そこから謎を拝借して、『オープンワールドの謎』。さらに『謎の』がアタマに来た方がウケる、って理由で『謎のオープンワールド』っていう……。まぁ、ふざけてるよね。


――はははははっ。

木暮 今の時代にアルバムみたいな形式で出す必要って、もしかしたらあんまないのかなとも思うんだけど、俺自身はその形に愛着もあるし、出すからには通して聴いた時に、バラで聴くのとはまた違った印象になったらいいなと。

――たしかに要所で挿入されるスキットの効果もあって、“オープンワールドの謎を巡る冒険”みたいな視聴体験でした。今回は、またメンバー個々で曲を作っていって?

木暮 いや、今回は一応みんなで合わせてやろうってなってたから、半分以上はそうやって作って。


――へーぇ。『街の14景』からは制作プロセス自体が違ったと。

木暮 そう。前のアルバムが個別で作りすぎたから。『BONGO ep』から、ちょっと混じりはじめてたんだけどね。歌詞も、元ネタを持ってきたヤツが基本書くって感じでやりつつも、「ちょっと書いてよ」みたいなものもあって。

――曲としては10曲収められてますが、10曲は作ろうって決めてて?

木暮 うん。最低10曲くらい…逆に、それ以上は作らないようにしようと思って。自分的にだけど、曲数が多過ぎるよりは10曲くらいがちょうどいい感じかなと。

――バンドとして曲作りするっていうことは、みんなやりたかったことだった?

木暮 そういう意思確認はあまりしないからわからないけど、やってよかったんじゃないかな。

――ライさん(荒井)なんかはソロ活動も活発だから、バンアパにはよりバンドらしい何かを求めてるんじゃないかと思うんだけど。

木暮 それはあるかもね。でも、やっぱり全然時間が足りなくて。丸々一曲、誰かが作ったのはないんだけど、もうちょっと時間があったら全部みんなで作れたかなーって。

――じゃあ、今回のレコーディングをひと言で表すと?

木暮 (即答で)カオス! いつもだけど(笑)。

――カオティックという意味では、いつもどおりのレコーディングだったと(笑)。とりわけ新しい試みとか、あった?

木暮 一般的には普通でウチらん中では新しいってことだけど、ベースとドラムはほとんど一緒に録って。

――ベーシックはまーちゃん(原)と一緒にレコーディングして。

木暮 半分以上は一緒にやったかな。前はドラムだけクリックと録って、荒井がギター録ってって感じだったから。ドラムとベースが最初に決まってると、ウワモノ重ねる時に音作りとかが激早で。

――じゃあ、レコーディングはいつもよりはスピーディに進んだ?

木暮 いや、録るのはみんな早いんだけど、録る前にフレーズ考えなきゃ録れないじゃん? だから、結局いつもと同じかな(笑)。期間としては20日間くらいで録ったんだけど。

――特にトラブルみたいなものもなく?

木暮 トラブルはなかったけど、録ってる時間より待ってる時間のほうが長いから、エンジニアの速水さんが太ったよね。

――はははは。間食しすぎて。

木暮 暇を持て余して(笑)。あと、スタジオの大家がレコーディング期間中にいよいよキレて。「出てってくれ!」って言い始めたっていう。

――あらま……。

木暮 なんか、俺らみたいなのがいることが自体が耐えられないみたいで。ははははは。表向きの理由は水漏れを直すには全部解体してやらないといけないってことなんだけど、気に食わないだけだと思う。

――スタジオ移設計画、実行しないと。

木暮 もうすぐ引っ越すよ。練馬の方に。

――マジ!? じゃあ、奇しくもこのアルバムが現VANQUISHでの最後の作品になると。

木暮 そう。『さよなら方南町』だよ。一瞬それがタイトルになりかけたんだけど(笑)。往復30kmくらいチャリコで通ってたから、それができなくなると太りそうだなー。

――新しいスタジオ、楽しみですね。じゃあ、メンバー全員で作ろうっていうこと以外に事前に決めてたことって?

木暮 作り込みすぎない、展開をつけ過ぎないってことかな。

――たしかに、緻密で、構築的だった前作に比べると、肩の力が抜けたというか、アレンジとかストレートな印象を受けます。

木暮 前のアルバムみたいに個別で作業すると、どうしても作りこんじゃうし、バンドであわせてないからガッとくる感じとかわかんないじゃん? どうしても理論的に作っちゃうんだけど、それは『14景』で結構やったから、もっと直感的にやってみようって感じになったんだけど。

――前作のほうが技術的には高度だったと。

木暮 技術的に高度って言うよりは、各々が音源通りにプレイしつつ、全員のリズム感があわないと良さが出ない曲が多くて。

――インストの「師走」とか?

木暮 「師走」はまだ勢いでいけるんだけど、「AKIRAM」とか、「ノード」とか、かなりシビアでさ。それはそれで楽しいけど、そういうのばっかりだと疲れるし、ダメな時はマジでグダグダになるし。

――もっと演奏自体というか、ライブを楽しめる曲を今回は作ろうと。

木暮 うん。作りこむと、ちゃんとライブでやらないといけないから。音源を完璧に再現する、とか楽しくなさそうでしょ? まぁできてないんだけど(笑)。今回は、ドラムで言ったら、そのときの気分でフィルを入れるとかさ、そういう余白がある曲がよかったから。

――なるほど。シンプルな演奏だからこそ、より歌が引き立ったアルバムになったんだ。

木暮 かもしれない。

――アルバムの後半に向かうに従って、“いい歌度合い”がせり上がっていくし。

木暮 そうかな(笑)「深夜にエモくなっちゃう」みたいな? そういう感じの曲順だね。

――よくわかんないけど(笑)、とりわけ後半がすごくいいなあと思って。歌メロが立ってて、すごくエモーショナルで。

木暮 「(save point B)」から雰囲気がシリアスになってくようには考えてたけど。

――「月と暁」とか、「消える前に」とか、FNS歌謡祭で歌っても全然不思議じゃないくらい。

木暮 ホント?(笑) 「消える前に」の歌詞は荒井が書いたんだけど、言葉の選び方とか俺の中にないストレートな感じで……。メロディーも含めて単純にすごく良いなと思って、アルバムのクライマックスに置いたんだよね。曲自体は、川崎のリフと荒井のリフが合体してできてるんだけど、そこに俺とまーちゃんがリズムとベースを付けて。「月と暁」は最初「バッド・レリジョン」って呼ばれてたけど(笑)、アレンジしていくうちにだんだんエモーショナルな感じになってったかな。荒井が今回言ってたのが、「雰囲気だけの歌詞にしたくない」ってことだったんだけど、この2曲だけ取っても前とは違うよね。


――序盤の「笑うDJ」は、木暮ワールド全開ですよね。ハイな疾走感が「ノード」と同系譜にあるというか。

木暮 昔から追いかけてる感覚みたいなのが自分の中にあって……「狂った博士が作った超高速のジェットコースターで、七色の光の中をぶっ飛んでく」、みたいな(笑)。そういう曲だから、普段生活してる現実の風景と、博士の操る機械に脳をジャックされてる人の感覚映像がグチャグチャに通り過ぎてくみたいな歌詞にした。DJっていうのはJ博士のことだね。笑うドクターJ…まあいいや(笑)。これは、ベースは全部まーちゃんが考えて、リードギターもほとんど川崎が作ったね。

――<目の前の誰かより 指先の文字に夢中>っていうラインとか、えーちゃんならではの風刺的視線がいいなあって。

木暮 自分もそうだけど、そういうことが多くなったなと思って。夏目漱石の本とか読んでるとさ、うなぎ屋に行って、本題にたどり着く前に一時間くらいしゃべったりするわけ、面と向かって。そういう時代に比べると、コミュニケーションがすげぇ変わってんだろうなっていうくらいだけど。

――たしかに。

木暮 でも、それも景色を観察した記録ぐらいの感じで…これがもしあからさまにメッセージソング然としてたら……聴きたくないじゃん、そんなの。「コミュニケーションを取り戻す!」「うるせーくたばれ」とか思っちゃうから。何を言ってるのかはわかるけど、聴いた人によって受け取り方が違う、くらいの想像力の余白があった方がいい。

――シティソウル感溢れる「禁断の宮殿」は、ビル・ウィザーズ好きの原さん原案?

木暮 そうだね。ドラム以外はほとんどまーちゃんが考えたかな。

――周囲に惑わされないで、自分の信念を貫くような歌詞が原さんらしいなと。

木暮 まーちゃんの歌詞はいろんな意味で「vs社会」だよね。一般的に良いとされてる物事に対するフラストレーションと、そこに対する自分の立ち位置とか矜持……「全員くたばれ」っていう(笑)。それでシティ・ポップみたいな曲調なのもいいよね。この曲と、あと「裸足のラストデイ」。

――その「裸足のラストデイ」の、「♪きぃち●~い、きち●~い」のフレーズが頭から離れなくて非常に迷惑してますけど。

木暮 はっははははは。でも、すげーいい歌詞だなあと思う。「キチ●イ」の部分とか特に。「裸足のラストデイ」って、自分でタイトル決めて「ダセえ」って笑ってたけど(笑)。「遊覧船」って曲は川崎が元ネタ持ってきたんだけど、二転三転して。最初はアコースティックライブで演る用の曲を作るって言って、途中で素材を取って打ち込みにしたいって言い出して。まぁ良けりゃなんでもいいから、それで行こうってなったんだけど、俺に「じゃあ、打ち込みエディットお願いします」って投げっぱなされて。「えっ!」って(笑)。


――川様お得意の丸投げが(笑)。

木暮 だから、素材を取ってエディットして、メロディを半分くらい川崎が作って、半分は荒井が作って。歌詞は俺とまーちゃんが書いたっていう、この曲がいちばんゴチャ混ぜだね。まぁ多かれ少なかれ、そういう感じなんだけど。いちばん最後の「最終列車」って曲も、俺のと荒井のネタが混じってて。

――そういう、持ち寄ったネタを融合/発展させる作業っていうのは、スムーズにいくものなの?

木暮 今回は(曲作りを)パソコンでやってたわけじゃないから、スタジオでみんなにこういうのどうかな?って投げて、これつながるねってなったり、これがサビでこれが大サビだったら、Aメロはどんなのがいいかな?って話したり。最初は「ヴァン・ヘイレンみたいにしよう」とか、ふざけから始まって、そのうちになんかできる、みたいな。

――面白いなぁ。個人的にいちばん新鮮だったのは、トラッドなオープニングからはじまる「廃棄CITY」で。

木暮 あぁ。俺らの中では、「ツッパリハイスクールロックンロール」って言われてるけど(笑)。「ツッパリ感がすごい」っつって。オールドスクールなヤンキーが喫茶店から走り出していくみたいじゃん?

――どんなイメージなんすか?(笑)

木暮 みんなで笑いまくってたんだけど。「廃棄CITY」は川崎の元ネタがあって、それをまーちゃんがアレンジして、歌詞もまーちゃんと川崎で作ったんじゃないかな。スタジオの、まーちゃんが寝泊まりしてる地獄の小部屋みたいなとこで。

――劣悪な環境のなか(笑)。

木暮 死んだ目で作ってたよ。

――はっはははは。「殺し屋がいっぱい」は、まずタイトルのパンチが半端ないですけど(笑)。爽やかなトーンに相反する<君を殺さないとさ 眠れないとさ 殺さないとさ>ってフレーズにちょっと背筋が凍るようで。

木暮 マスメディア、SNSもそうだけど、出る杭を面白がって叩くじゃん? そういうのが以前にも増して多いなっていう違和感から始まった曲で。例えばネットでも、一般的正論とか正義を盾にしてる奴ほどヒステリックに異物を認めない感じが全体主義っぽくて気持ち悪いし、それこそちょっと間違った奴なんか全力で叩かれるよね。「魔女を発見しました」みたいな感じで。で、大半がそれを面白がってやってるだけで、そこに建設的な何かが生まれる議論なんてほとんどないし、瞬間的に好奇心を満足させて、次の日には忘れてるっていう……。そういうのを見てて、「いっぱいいるな、殺し屋が……」って。

――“一億総殺し屋”化してる自国を憂いた曲だと。

木暮 一億総殺し屋って(笑)。

――なにがしか攻撃対象みたいなものが必要なのかもね。防衛本能の裏返しとして。

木暮 うん。防衛本能の裏返しと言えば、集団的自衛権の時とか、石破の話とか聞いてると、はっきり言わないけど仮想敵が完全に北朝鮮なわけじゃん。TVなんかのそういう「身近な危険」みたいなイメージ付けって、防衛本能とか恐怖感を煽るものでしょ。「やられたらやりかえす」から「やられる前にやる」っていうすり替えもあっという間だなーとか思うし。「あの敵を殺さないと、怖くて安眠できません!」「じゃあ殺しちゃいましょう!」みたいな(笑)。けど、そういうことに直接言及した真面目な歌詞より、いま話したみたいな意味での「殺し屋」たちをデフォルメ化した方が面白いかなと。曲もシリアスで重い感じより、ポップな方が気持ち悪くていいと思って。

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コメント2件

楽しく読ませていただきました!奥村さんの切り出し方とか、本当好きです!
GBEV無くなっちゃってからお目にかかることが少なくなっちゃいましたけど、これからも追っていきますー!
コメント感謝感激です、ありがとうございます!
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