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漫画の未来を守る:出版業界がAI翻訳に賭ける理由

日経の記事によると、小学館、JIC、みずほキャピタルなど10社は2024年5月6日、AI翻訳で漫画を海外展開する新興企業株式会社オレンジに総額29.2億円を出資しました。これは、日本の漫画を世界に広め、海賊版対策を強化する狙いがあります。

株式会社オレンジとは

株式会社オレンジは2018年に設立された、AIを使った漫画翻訳サービスを開発・提供する企業です。独自のAI翻訳技術により、従来の人工知能翻訳と比べて翻訳コストを最大10分の1に削減し、翻訳時間も大幅に短縮することができます。

出資の目的

今回の出資は、株式会社オレンジのAI翻訳技術を活用し、日本の漫画を5年間で5万作品、海外に翻訳・配信することを目標としています。特に、北米市場を皮切りに、世界各国への展開を加速させていく予定です。

海賊版対策への貢献

近年、海賊版サイトの横行により、漫画業界は深刻な被害を受けています。迅速かつ低コストで翻訳された公式の漫画を海外に配信することで、海賊版の利用を抑制し、日本のコンテンツ産業全体の成長を促進することが期待されています。

株式会社オレンジ今後の展望

株式会社オレンジは今回の出資を機に、AI翻訳技術のさらなる開発を進め、将来的にはアニメや小説など、漫画以外のコンテンツの翻訳にも事業を拡大していく予定です。

海賊版で深刻な被害を受けている日本のコンテンツ

海賊版サイトによる漫画業界への影響は深刻で、特に経済的な損失と若手クリエイターへの打撃が顕著です。日本漫画家協会は、こうした問題に対処するために著作権法の改正を求めており、ダウンロード違法化やリーチサイト規制の強化が提案されています。これにより、海賊版がクリエイターの収益や創作意欲を奪う問題を解決しようとしています。

漫画のタダ読み被害額2019年から3倍に

コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の調査によると、2022年の日本のコンテンツ海賊版被害額は、約1兆9500億円~2兆2020億円と推計されています。これは、2019年の調査結果と比べて約3倍の増加です。

被害額の内訳は、漫画が約3818億円と最も多く、映画やアニメ、音楽なども深刻な被害を受けています。

海賊版サイト「漫画村」の問題

海賊版サイトは、国内外に数多く存在しており、日本語だけでなく、外国語に翻訳された漫画も掲載されています。近年では、AI翻訳技術を用いた高品質な海賊版も登場しており、問題が深刻化しています。

漫画村は2016年1月に「登録不要で完全無料な」漫画ビューアサイトとして開設され、2018年4月に閉鎖されました。このサイトでは、違法にコピーされた漫画だけでなく、雑誌、小説、写真集なども、インターネットブラウザ上で無料で読むことができました。サイトの運営はスウェーデンのプロバイダが提供する「防弾ホスティング」サービスを通じて、ウクライナのサーバーから行われ、Cloudflareを経由して日本国内のユーザーにコンテンツが配信されていました。

主催者は賠償金17億円を支払わないと宣言しています。

海外の海賊版サイトからの被害

日本の漫画が世界中で人気を博している中、外国語に翻訳された作品を無断で掲載する海賊版サイトの問題が深刻化しています。一般社団法人「ABJ」の調査によると、2023年2月時点で漫画などの出版物を無断で掲載する海賊版サイトは1207サイト存在し、そのうち913サイトが外国語に翻訳された漫画を掲載していました。これらの外国語サイトの多くは、英語、ベトナム語などで、特に東南アジア向けのサイトが目立っています。

外国語版海賊版サイトのアクセス数は日本語版の5倍以上

日本語の海賊版サイトのアクセス数は過去の対策により減少していますが、外国語版のアクセス数は日本語版の5倍以上に上り、著作権侵害の被害額も大きくなっています。さらに、公式アプリストアでさえも外国語の違法なアプリが見つかり、これが海賊版に誘導するケースがあります。KADOKAWAなどの大手出版社は、これらのアプリを削除するための法的手続きを進めています。

海賊版に対する対策としては、アプリやサイトの閉鎖だけでなく、運営者の摘発や刑事罰の適用も必要だとされています。これにより、正規のビジネスを通じて権利者が得るべき利益を保護し、文化産業全体の健全な発展を促すことが期待されています。


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