見出し画像

ミレニアムに起こった、デニムによるサイズ革命。/平成デニム回顧録【02】

前回触れた、90年代後半~2000年前後に女子の間で大流行した股上の浅いローライズデニムについて。このとき水面下で「サイズにまつわる大変化」が起こっていたことは、あまり知られていないかもしれない。

そもそも90年代半ばに、70年代ファッションがリバイバルしたことでベルボトムとかブーツカットが流行り、その影響もあって股上が徐々に短くなっていくんだけれど、その前は『アジアの純真』でおなじみPUFFYが穿いているような、ぶかぶかのメンズライクなデニムが人気。

引用元:ミスターバイク ヤマハスクーター全史 
http://www.mr-bike.jp/feature/y_sc/ysc12-3.html

さらにその前、バブル時代の名残りが残る90年代前半までは「女性の穿くデニムと言えば股上が深いもの」が当たり前。ブラウス(秋冬はニット)をインして、ベルトでウエストマークするようなスタイルが時代の主流。

引用元:ウェブ アクロス(定点観測 ストリートファッション
マーケティング調査)
http://www.web-across.com/observe/

前置きが長くなったけど、どのあたりがサイズ革命だったのか。その要素は2つある。

①「くびれ」が不要になり、デニムが穿きやすく!

メンズライクなゆるいジーンズはどんな体型でも穿けるが、それまでの股上が深いジーンズは、おへその部分でボタンを留める、言わばウエストのくびれが前提のシルエット。お尻まで入るのにウエストのボタンが閉まらない……と涙を呑んでいたずんどうさんはたくさんいた。同様にウエストサイズに合わせると、お尻がぶかぶか……という小尻さんも。つまり、股上の深いジーンズは、意外に人を選ぶシルエットだったのだ。

「いやいや、細身のローライズの方が人を選ぶでしょう」と感じるかもしれない。しかし実はお腹が出ていようとくびれがなかろうと「腰さえ留まればOK」なのがローライズの革命的なところ。前ボタンを留めてジッパーさえ上がれば、その上に肉がハミでようとトップスで隠してしまえばいい。これまで越えなければいけなかった「ウエスト&ヒップ」2箇所のハードルが「ヒップのみ」になったことで、想像以上に多くの人が穿くように。

②「S・M・L」のサイズ表示が事実上崩壊!

ローライズの爆発時は今ほど通販がポピュラーではなかったし、さらに「初めて穿く浅さ」であることから、まだまだお店で試着をして買うのが主流だった。しかしこのとき直面するのが自分が何サイズか、ということ。洋服の仕事をしている人間の多くは「太ってるか否か」ではなく「身長が高低」や「骨格」などでサイズが変わることや、似合うサイズを着たほうが痩せて見えることもよく分かっている。しかし一般の人はそうではない。どんなにカッコ良く穿きこなせていても「Lサイズですね」と言われればショックを受ける人が多いのだ。

私もアパレル時代に接客を手伝っていたとき、「ギリギリなんとかボタンは留まるけど、ピチピチでかえって太って見えるM」と「すっきり体型カバーしてくれて痩せて見えるL」を穿き比べて迷った挙げ句「Mにします」と買っていく女の子を何人も見た。

そういう現象があちこちで起こったのだろう。ついに女性のプライドに考慮したブランドが現れる。サイズをS・M・Lではなく「0・1・2」にしたのだ。L→2なら劇的に心理的ハードルが下がる。さらには、これまで通りのS・M・Lサイズを名前だけ「SS・S・M」にするところまで登場。それまでは既製服のサイズ規格がもうちょっと尊重されていたものだが、ここまで来るともう止まらない。

今では「うちのSはけっこう大きめなんで大丈夫ですよ!」みたいな接客がすっかり当たり前に聞かれるようになったが、あのときローライズが流行しなかったら、もっとサイズ規格はカチッとしていたのだろうか。今となってはもう分からないけれど。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

スキしてくださって嬉しいです。励みになります!
3

木内アキ(ライター)

フリーランスで執筆をしています。北海道出身。2018年秋、思い立って東京を離れて横須賀を拠点にしました。雑誌・書籍・ウェブ・広告分野のお仕事を中心に活動。家族は夫と雑種犬。https://www.take-root.jp/
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。