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1 はじめに

来週から介護休暇なるものをとることにしました。

たった2週間だが、まさかこの歳(私35歳です)で育児休暇ならぬ介護休暇を取るなんて想像だにしませんでした。

母は、2年半前に「前頭側頭変性症疑い」との診断を受けました。

「前頭側頭変性症」とは、厚労省指定の難病のひとつで、脳の前頭葉と側頭葉という部分が選択的に変性、萎縮していく病気だそうです。

症状として、社会性の欠如、抑制が効かなくなる、同じことを繰りかえす、感情が乏しくなる、言葉が出にくくなると、といったものが挙げられ、前頭側頭型認知症とよく似た症状を呈します。

発症年齢が50~60代と、比較的若いことも特徴だそうです。

治療法はありません。

私は10年ほど、介護老人保健施設で理学療法士として高齢者や認知症を有する方のリハビリに携わってきました。

認知症がどのような病気で、どんな経過を辿るのか。そして、認知症の方にはどのような対応をすることが好ましいのかということは理解しているつもりです。

仕事中での、認知症の方への対応には自信さえありました。

しかし、自分の母親が、しかも、こんなに若くして認知症の症状が出現してしまいました。

会うたびに化粧がおかしくなっていき、白髪が目立つようになり、私の子どもたちに関心を示さなくなり、笑顔もすくなくなり…頭では理解していても、そんな母を受け入れることができず、この2年間は母との接触を避けるように、自分のやりたいことばかり好き放題やっていたように思います。

ごはんの準備がままならなくなり、排泄での失敗も見られるようになり、日常生活がままならなくなってきており、施設や精神科への入院の話も現実味を帯びてきた今、「わたしにしかできないこと」「今しかできないこと」それが、この介護休暇という選択です。

母は私の父とは離婚して、今は再婚し義父と暮らしています。

私の家から、母の家までは、高速道路を使っても車で3時間近くかかり、通うことは難しいので、母たち夫婦としばらくは一緒に生活することになります。

私には4人の子どもと夫がいます。

まだ保育園に通う子もいて、母親が長期間家にいないことでどんな思いをするのだろう…

仕事をしながら4人の育児と家事をこなさねばならない主人の苦労。

いろんなことを天秤にかけても、母に残された人生を考えると、今のこの私の時間は、母のためにつかうべきだと思ったのです。

幸せなことに、夫はなんのためらいもなく「行っておいで」と言ってくれました。下の子たちはまだ理解していないようですが、小学6年の長男も、近くに住む、夫の母もは「早く行ってやって」と言ってくれました。職場の上司や同僚も、仕事は増えるであろうに嫌な顔一つせず、申し送りを受けてくれました。

周りの人たちに支えられている、そんな感覚を強く感じることができました。

きっとこれも母が仕組んだことなのでしょう。

これからしばらくの母との生活や、介護休暇が終わった後の母とのやりとり、これまでのことを振り返ったりする中で、いろんな感情が湧き出てくると予想できます。そんな感情のはけ口として、このノートを綴っていきたいと思います。

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